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ガラクタピエロと裸足の人魚姫  作者: 刺草イウ
第二章 『ガラクタピエロと猛毒赤ずきん』 
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第36話 赤ずきんめ

 文化祭の前日、いつもより長めの放課後のホームルームを終えた後、僕と麻央は足並み揃えて隣のクラスに顔を出した。

 男子女子問わず全員が目を丸くして驚いていたのは正直傑作だった。来年の文化祭の一枚絵にも抜擢ばってきできそうだ。


「まさか二人揃って呼びに来るとは思わねえよ……」


 驚いていたのは橋田も一緒で、困り顔で首元に手を当てている。


「それで? 今更話って?」

「ごめんなさい! ハルと付き合ってた話、嘘なの!」

「は、はあ!?」

「僕からもごめん! というか僕の方が悪いんだ! 橋田の相談に乗っていながら、麻央の気持ちを隠し続けた僕が一番悪い! だから麻央のことは責めないでやってくれ!」


 はっきり言って体格で勝る橋田が本気で怒ったら普通に怖いだろうし、殴られでもしたら絶対に痛いし嫌だ。

 でも僕がしたのはそれぐらいされても当然のことなのだ。


「……なんだよ、それか。そのことはこの前の電話で済んだだろ」

「なに言ってんだよ。全部嘘だったんだぞ?」

「うん。わたしはハルと付き合ってない。こんな裏切り者」

「あのなあ! 今は余計な悪口挟まなくていいんだよ!」


 真剣に謝りに来てんだから、空気ぐらい読んでほしいマジで。


「うるさいバカザコクソハル。ハルにフォローされるとわたしがダメな奴みたいじゃん」

「はああああああ? 一緒に来てって頼んだのは麻央だろ!?」

「フォローしてとは頼んでない」

「じゃあもう僕は黙ってるよ! 絶っ対! 後で頼ってくんなよ!?」

「頼らんし。元カレにダメっ子って思われたくないし」

「「……」」


 もう元カレになってんのかよ……。


 サラッとエグいのこぼしたな麻央。

 数々の悪口が可愛く見えるレベルの殺傷能力だ。橋田が押し黙ったのは多分僕と同じ気持ちだからだろう。


「あ」


 橋田と目が合う。


「ぷっ……あはははは! マジで面白いな!」

「いやいや! 笑うとこじゃないって!」

「ハルうるさい。静かにして」

「もがもご……」


 口を手で押さえ込まれる。


「なーんか付き合ってるとか幼馴染ってより兄妹って感じだな」

「そ。ハルは手が焼ける弟みたいなものなの」

「んーっ!」


 納得いかない! 絶対に麻央が妹だ!


「でも、二人ともめちゃくちゃ楽しそうだ」

「そうかな……まあ、うん。つまらなくはない」

「小鳥遊本当はそんな奴だったんだな。超曲者だ」

「違う。ハルがバカだから仕方なく」

「……オレの方こそごめんな。色々無理させてしまったみたいで」

「橋田くん……」

「オレバカだからさ、小鳥遊と付き合えてスッゲー嬉しくて舞い上がってた。自分のことばっかで、小鳥遊のこと全然見ていなかった。そりゃ振られて当然だ」

「……違う。わたしがもっと自分の思ってること伝えればよかったんだよ」

「でもそれだとオレと付き合ってくれてないだろ?」

「うん」

「お……うぅ……っ」


 即答かよ……。

 橋田、相槌打ててすらいないぞ。ボディーブロー喰らったみたいになってる。


「……ノッキーも色々サンキューな。あの電話も中々名演技だったぞ」

「むもが(まあな)」


 麻央、いい加減に手を退けろ。両手で塞ぐ奴があるか。


「それと色々振り回しちまったな。これからは相談相手としてじゃなくて友達でいいか?」


 喋れないので代わりに大きくうなずく。


「悪いな」

「改めて言うけど……橋田くん、わたしはあなたのこと好きじゃない。別れて」

「……ははっ! 元カレって言ったのにまだ言うかよ。ああ……オレじゃ小鳥遊を持て余すだけだ。だからノッキーに返す」

「え?」


 返すって……元々僕のじゃないんだが……。

 つーか麻央はこんな時だけ手を退けるな。


「今は全然相応しくないけど、いつかオレがもっといい男になったら、そんときはもう一回小鳥遊に本気で告白する! 待ってもらえる資格はオレにはないけど、聞いてはくれるかな?」

「うん。聞くぐらいなら……」

「あーあ。こりゃよっぽど頑張んないとオレじゃ相手にしてもらえないな」


 正直すぎる麻央の返事に苦笑しながら橋田は場を離れた。

 明確な終わりや区切りはないけれど、これが麻央と橋田の彼氏彼女の関係、この会話の終わりだというのは三人とも感じていたと思う。


 橋田は麻央のことが好きだった。

 何度告白して何度も振られても、決して諦めないで気持ちを伝え続けた。

 麻央にとってはそれは迷惑だったのかもしれないけど、僕は正直橋田が羨ましい。

 真っ直ぐに気持ちを伝えることも諦めないことも、僕が持ってない強さだから。

 橋田は自分のことを卑下していたけど、僕には橋田がカッコ良く見えた。

 

 そういえば、真っ直ぐに気持ちを伝えたといえば、僕が好きなお話の人魚姫もそうだった。

 明日は文化祭だけど、終わった後には美咲との打ち上げが待っている。何か忘れている気がするけど、裸足の人魚姫と会うのは久しぶりだ。

 あまり乗り気じゃなかった文化祭もなんだか楽しみになってきた。


「ハル、何にやけてんの?」

「なんでも——むが」


 喋っている途中で口を覆われる。


「ふっ……無様だね。ハルにはお似合いだよ」


 絶対に面白くなってきてるだろ。この赤ずきんめ。


「ぶざまあ」


 やかましい。

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