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ガラクタピエロと裸足の人魚姫  作者: 刺草イウ
第二章 『ガラクタピエロと猛毒赤ずきん』 
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第25話 一緒に帰ろ

「おつー」

「麻央?」


 放課後のクラス活動を終えて帰ろうとした矢先、学校の敷地のすぐ外で麻央が待ち伏せていた。


「一緒に帰ろ」

「はあ? なんで僕が麻央と帰らないといけないんだよ」

「昨日の続き。ハルもわたしと話したかったんじゃない?」

「いや全く」


 話すどころか顔も見たくなかったんだけど。


 『昨日の続き』というと、橋田と別れるための作戦会議みたいなものなんだろうけど、まず僕は麻央に協力すると言った覚えはない。あくまで僕は橋田の気持ちが冷めてくれればと思って行動したまで。

 昨日麻央に話を合わせたのだって、あの場を切り抜ける方法が他に見つからなかったからだ。目的は微妙に似ているかもしれないけど、過程やその目的に至るまでの理由がまるで違う。


 そもそもの話、麻央が自分から切り出せばよかっただけだし、更に元を言えば好きでもないのに押し切られた麻央にも責任はある。

 僕に協力を強制して、断れない状況を作って責任を擦りつけるのは絶対に間違っている。


「ねーえ。今日の晩御飯なんだと思う?」

「昨日の話の続きすんじゃなかったっけ?」


 それと顔には出てないけど、麻央がやたらと上機嫌なのが信じられない。

 気持ちがなかったとはいえ、半年近く付き合っていた彼氏と別れるのだがら、多少なりとも気まずさを感じたり、負い目みたいなのを感じたりしないのか? 

 僕は誰かと付き合ったことがないから分からないけど……。


「昨日の夕飯はロールキャベツだったよ」

「夕飯から離れようよ」

「なんで?」


 それが嬉々として夕飯の話をしているのだ。本当に信じられない。


「あのさ麻央、一体どんな感情なんだよ? 僕最近、麻央のことが全っ然分からない」

「感情? うーん……お腹空いたとか?」

「はあ〜……」


 頭が痛くなってきた……その場にしゃがみ込んでしまいそうだけど、一度座り込んだらしばらく立ち上がれる気がしないから持ち堪えた。


「ハルは今日なに食べたい?」

「言ってどうすんだよ」


 教えたところで僕達料理作れないだろ。そんな新婚夫婦がしそうなやり取りをこっちに振ってこないでほしい。


 橋田はこういうやり取りを望んでいたのかなあ……。


「帰ったら何する?」

「勉強。麻央どした? 熱でもあるんじゃないの?」


 小学生の『今日何して遊ぶ?』とイントネーションが全く同じだった。

 だから今の僕達にそういう明るい空気は相応しくないんだって。


「熱あるかな? どう?」

「なんだよ」


 顔を近づけてきたので手を前に出して距離をとる。


「熱」

「家に着いたら体温計出してもらったら?」

「職務放棄」

「だったら給料をよこせ」


 麻央の世話役なんて、低賃金休み無しのブラックまっしぐらだ。相当な物好きじゃないと務まらないだろう。


「ずっと気になってたんだけど、ハル勉強ばっかでしんどくない?」

「受験生なら仕方ないだろ。そっちこそ僕の部屋でゲームばかりしてていいのかよ」

「やりたくないのに勉強しても意味ないし」

「その理屈だとやりたい時が来なきゃ一生勉強しないね?」

「うん」


『うん』じゃないんだが。


「ハルは実力テストの五教科何点だった?」

「え、三百八十三」

「やっぱり勝った。わたし四百二」

「は……はああああ!?」

「うるさ」

「え!? なんで!? 十月頭の実力テストだろ!?」

「そうだけど?」


 僕は力無く膝から崩れ落ちた。

 真面目に必死こいて勉強していた僕が、人の部屋を占領してゲームばかりしてた奴に成績で負けていたとは……。


「麻央! 国語は!?」

「八十九」

「数学!」

「八十三」

「……英語」

「六十八」

「くそっ!! なんで全部微妙に僕より上なんだよ!


 まだ二教科残っているけど、これ以上は僕の心が保ちそうにない。


「得意教科も苦手教科も昔から同じだったじゃんか。やっぱ幼馴染だね」

「幼馴染を煽るために使うのは麻央くらいだよ」

「ハル、勉強頑張ったね」

「ぐぬぬぬ……!」

「たまには勉強サボってゲームでもしたら?」

「百歩譲ってゲームをするとしても、麻央とだけは絶対にやらない」

「えー。やろうよー」

「やらない。やらないったらやらない!」

「勉強してもバカなんだからいいじゃんか〜」

「うわっ! 今馬鹿って言った!」


 早くも本性を表したか。やはりどんな時でも毒舌は隠しきれないし、隠せるものではない。

 ていうか、さっきから服の裾を摘んでくるせいで歩きにくいからやめてほしい。


「はあ……僕の苦労って一体なんだったんだ」

「こっちのセリフだよ」

「僕のセリフのままでいいんだよ!」

「はあ……ハルの苦労って一体なんだったんだ」

「言ってる側から勝手に盗るなよ! 僕のセリフだぞ!」


 他人から浴びせられると、こんなムカつくセリフになるのかこれ。


「……あれ? そういえば何話してたんだっけ?」

「どうしたのバカ……間違えた。ハル、どうしたの?」

「もうツッコまないぞ」


 これ以上ペースを乱させないし、毒舌にも屈しない負けないへこたれない。



「夕飯の話じゃなかったっけ?」

「昨日の続き……別れる協力の話だろ」


 かなり大事な話なのに、僕も麻央もどうしてこんなに脱線したんだろう。いくらなんでも逸れすぎだろ。


「あーそれ? ま、いいや」

「は? いいやって。さっきは続きがどうとか言ってただろ?」


 そのために僕を待ち伏せしてたんじゃないのか?

 本当に何がしたいんだよ?


「あれ? なんだ楠君か」

「あ、野上君だ」


 麻央に詰め寄りかけたところで、ウェア姿の野上君とばったり。

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