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ガラクタピエロと裸足の人魚姫  作者: 刺草イウ
第二章 『ガラクタピエロと猛毒赤ずきん』 
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第9話 サブ垢

 週末の昼下がりのショッピングモールは、予想するまでもなく人で溢れていた。

 一目見るだけで幸せそうだと思える家族やカップル、スーツ姿で慌ただしく足早に歩いていく大人。僕達と同じくらいの年齢の子供もちらほら見かけるが、誰もが知らない顔ばかりだ。

 そんな中、僕と麻央は他の人からはどう見られているのだろう。

 パッと見て幼馴染と判断する人はいないだろうから、もっと大きな括りに当て嵌められると思うんだけど。


「は、ハル……待って……はっやい」

「うっそだろ……!?」


 悪態が耳に入らないと思っていたら、麻央は息を切らしながらヨタヨタと後ろから追いついてきた。


「な、なんでそんなに急ぐの……?」

「え……全然急いでないんだけど」


 色々見回しながら歩いていたから寧ろいつもよりゆっくりめだ。


 驚くことに、麻央は両膝に手を当てて肩で息をしていた。


「ちょ……ちょっと休憩」

「マジかよ……まだ来たばっかりだぞ?」

「もう無理歩けない」

「信じられない……」


 駅から十分ほど歩いて建物に入り、エスカレーターで二階に上がっただけだ。大袈裟でもなんでもなく、本当に来たばっかりだ。

 学校の行き帰りや、体育の授業はどうしてんだってレベルの体力の無さだ。

 昔からゲームばかりで外に出ないのは知っていたけど、いくらなんでも運動不足が過ぎる。これだと学校の移動教室も命懸けなんじゃないか?


「ぐ……ぐりばのチョコドリンクが飲みたい。飲まないと動けない……」

「そういえば一階にあったな。ゲーム買う前に行くか?」

「ハル……わたしに構わず先に行って」

「ゲーム?」

「チョコドリンク」

「あのな、そのセリフはもっと感動する場面で出てくるんだぞ?」


 強大な敵を目の前にして、仲間の為に決死の覚悟を見せる時に出てくるものだ。少なくともパシリにする時ではない

「ここはわたしに任せて」

「もういいって……」

 そんなヘロヘロな奴に何を任せられるというのだろうか。

 

 ぐりばのお店は若い女性を中心にそれなりに賑わっていた。

 プレゼント用のお洒落なチョコレートギフト、新発売のチョコスイーツなど、見ているだけで口の中が甘くなってきそうだった。

 一人で店に入ることに若干の恥ずかしさを感じながらも、どうにかお目当てのチョコドリンクを二つ購入。メニューボード通りのシックなデザインの容器を渡される。

 足早に戻ると、麻央はソファーに腰を下ろしてぐったりとしていた。


「はい。お待たせ」

「ん」


 麻央が受け取るのを見計らって、僕も容器の飲み口を開ける。

 ここのお店のチョコレートは一回だけ食べたことがあるけど、専門店なだけあって美味しかったのを覚えている。しかし部活を引退した今、僕の舌にこの甘そうなドリンクは甘味が過剰ではと不安になるが……。


「「うまっ!」」


 僕と麻央の反応が重なる。


「運動したから沁みる〜」


 麻央がツッコミ待ちと言わんばかりのことを抜かしているが、無視してチョコドリンクを堪能する。

 どこに運動要素があったのか……、学校の体育を受けているのか本気で心配になる。


「これはやっばいな」

「やっばい」


 流石はチョコレート専門店なだけあって、ただ甘いのではなくてカカオの風味がしっかりと感じられる上品な甘さだ。全然くどくなくていくらでも飲めそうだ。


「今日はゲームの他に何か買うものあるのか?」

「うーんわかんない……予約してるからゲームは問題なく買えるけど、混んでると思うから終わるまでわかんない」

「混んでるってそんなに人気のゲームなのか?」

「うん。特典も豪華だし」

「例のお一人様一つまでってやつ? あれ? でも二つ予約したって言ってたよな?」

「うん。ハルのスマホ借りて予約した」

「へー……え!?」


 なんか今サラッととんでもないこと言わなかったか? 

 確かに何回かスマホ貸してって頼まれたけど、まさかそんなことに使われていようとは……。

 二つ返事で貸していたけど、スマホって人に貸すものじゃないな。今のうちに知れてよかった。麻央だからよかったものの、悪知恵の働く奴だったら完全にアウトだ。


「お金はお店で払うことになってるから大丈夫」

「次からは一回断ってからにしてくれ」

「りょ」

「まったく……油断も隙も——」

 と僕がため息をついたのと同時に、スマホから聞き慣れない通知音が鳴る。

 なぜか麻央のスマホからも同じタイミングで同じ通知が鳴る。


「あ……やば」

「おい」


 バツの悪そうな麻央を尻目に通知の内容を確認する。入れた覚えのないゲームのアップデート予告だ。


「は、ハルはすごいよね」

「褒め方が雑過ぎるだろ!」


 今時そんな持ち上げ方じゃ小学生も乗せられないだろう。


「さて麻央、説明してもらおうか」

「……ハルのスマホにわたしのゲームのサブ垢を作ってました」


 言ってる合間もピコピコと様々な通知音が鳴り続ける。

 え? これ一体幾つ入れられてんの? これ本当に大丈夫なの? 僕のスマホにウイルスとか入れてないよね?


「なぜ?」

「コスパがいいから」

「コスパがよけりゃやっていいのか?」

「いいんです。ハルのスマホで課金してるわけでもないので」


 また随分と堂々と開き直ったな。


「でも僕の許可なくやったのは悪いことだろ」

「ひどい……わたしはハルと一緒にゲームしたかっただけなのに……」

「え……? そ、そうなの?」

「なんでわかんないの? わたしの気持ち……」

「ご、ごめん……じゃあ時間ある時にやってみようかな」


 あれ? なんか流れおかしくない?

「ざっこ。くそチョロい」

「え? なんだって?」


 麻央がなんて言ったのか分からないまま、僕達はゲーム専門店に足を運んだ。

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