2品目①
今回もよろしくお願いします!
前までは店の掃除が主な仕事だったが、料理ができるようになったルーベルは、今は食材の下拵えが中心になっていた。
両親のお店は街の人だけではなく、冒険者にも人気でお昼時はいつも満席。
そのため、食材の下拵えだけでもかなり大変だ。
(まぁ、前世でもよくやってたから特に何も思わないけど、この体でも腱鞘炎になりそう…)
そんな事を思いつつ、作業しているとティープがやってきた。
「ルーベルおはよう」
「おはよう、ティープ。はい、これね」
あの日ルーベルが作った料理をティープはとても褒めた。
あまりに褒めるものだからルーベルは冗談として「そんなに美味しかったなら、ティープのお昼ごはん作ってあげよっか?」と言った。
するとティープはとても喜び、毎朝来るようになったのだ。
(いや、だって本当にお願いされるとは思わないじゃん!貴族が食べる学食を食べれるんだから絶対そっち選ぶと思うじゃん!!というか毎日学生寮からお店に寄って登校って、どうゆうこと!?)
ルーベルはティープのことがますます分からなくなった…
「いってらっしゃい」
「行ってきます」
朝の大量の仕込みとこの爽やかで眩しい笑顔を見送るのがルーベルの日課となったのであった。
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「ルーベル、本当に一緒に出かけないの?」
今日は休業日。両親は出かけるらしい。
「うん。2人で楽しんできて」
両親を見送り、ルーベルは部屋に戻ると、1冊のノートを取り出し、いつも読むページを開く。
それは、記憶を戻す前のルーベルが書いていた日記だった。
(“世界を旅して、色んな料理を学んで、お父さんみたいな誰かを幸せにする料理人になりたい“か…)
ルーベルはあの日前世を思い出した。
そして、この日記を読んでからずっと思い詰めていた。
ルーベルは本当に“私“なのか。
もし仮にこれが転生ではなく、憑依だったら、私はルーベルの人生を奪ったことになる。
でも、それを確認する方法も、解決する手立てもない。
(もう一度頭を打てばもしかしたら?…いや、それでこの体が死んでしまったら元も子もないよね)
また日記に目を向ける。
(今の私にできることは、ルーベルの夢を叶えてあげることなのかな。旅はどうにかなる?…でもよりによって何で料理人なんだ…)
机に突っ伏すと視界は暗闇に包まれる。
それは私が目指した夢であり、私が叶えた夢
そして絶望した夢だった
(いや…絶望したのは私自身にか)
グゥーー
ルーベルのお腹がなる。
(お腹すいた…)
体を起こすと窓の外から溢れる光に目を細める。
雲ひとつない青空はどこまでも澄んだいた。
(今料理したくないな。お昼は何か買って食べよう…)
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外に出て、屋台で買ったものを片手に歩いているとエマリス教が街頭演説をやっていた。
エマリス教
原初の神の右目から流した一粒の涙から生まれた神。世界に光を与え、生命を育む。
光と生命の女神ということもあって、子どもが生まれたら皆祝福を受けに行く。
とても身近な女神様
「我らが神、エマリス様は我々人間のために聖女を使わせました。これかから先、聖女はその右目で真実を見極め、世界をより良い方向に導いて行くでしょう」
(そういえば、お母さん達も言ってたっけ。何年も不在だった聖女がやっと現れたって。…前世の記憶があると、どうしても胡散臭く感じてしまうけど、この世界なら何だってありえるよね)
実際、神官と呼ばれるもの達は神の奇跡を扱い、傷を癒したりできるのだ。
(それにしても真実の右目か…。その目なら本当の私が分かるのかな?)
「お姉ちゃんもどうぞ」
声をかけられてそちらを見ると子供が花を渡してきた。
演説はいつの間にか終わり、子供達が女神の花である“マリー“を配っていたようだ。
「お姉ちゃんのかみ、女神様のお花みたいできれいだね」
「そうかな?ありがとうね」
渡された花を見る。
鮮やかなオレンジにパニエをひっくり返したような可愛らしい花からは、独特な匂いがする。
(これ多分マリーゴールドだよね。名前もマリーだし。世界観は剣と魔法なのに前世と同じものが結構多いんだよね。名前はちょっと違うけど…)
ルーベルは家へ向かって歩き出す。
ここはグアラディオス帝国、王都オーリス。
かつて魔物の軍勢から世界を救ったとされる剣士と魔術師が建国したこの国は、剣士は王となり国を統治し、魔術師に安定した環境を与える代わりに魔術師はこの帝国に力を貸している。
まさに剣と魔法の国なのだ。
「うわぁ!」
いきなり腕を引っ張られ、路地に連れ込まれると地面に叩きつけられた。
自身を襲った痛みと突然の出来事にルーベルは何が起こったか分からなかった。
「ほぉ、これは中々だな」
「言っただろ?コイツは高く売れるぜ」
髪を引っ張られ顔を上げるとそこには憲兵と男がいた。
私に近寄った男は花を踏み潰す。
(えっ!?この人達今売るって言った!?最近人攫いが起きているから気を付けろってよくお店に来る憲兵のおじさんが言ってたけどこのこと!?)
「たすけ…あぐっぅ!」
助けを呼ぼうと声を出した瞬間ルーベルの頭を地面に押し付けられた。
「おい、痛い目に遭いたくないなら抵抗するなよ」
拘束する男の力が強くなり、痛みに涙が滲む。
(やばい、やばい、やばい。どうしよう!!このままだと本当に攫われる!!お父さん、お母さんっ!!)
「邪魔」
「あ?ッグァ!!」
「てめぇ!」
仲間が攻撃されたのを見て、ルーベルを拘束していた男は、声の主に襲いかかる。
するとその人は攻撃を軽くかわすと、攻撃を仕掛けた男野方が何故か苦しそうに倒れた。
それを見た憲兵は、剣を向けるがその体はガタガタと震えている。
「貴様!魔術師か!?王都内での攻撃魔法の使用は許可がなければ…グッ!!」
憲兵は何かに引っ張られるように地面に叩きつけられると動かなくなった。
「…死んだ?」
隣を通り過ぎようとしたその人の服をルーベルは無意識に掴んだ
「あ?」
赤黒い、まるで乾いた血のようなローブを着たその人はルーベルを睨む。
正確にはフードを深く被っているため睨んでいるかは分からなかったが、威圧されているのは確かだ。
けれどルーベルにとっては、先ほど襲ってきたあの男達の方がずっと怖かった。
「あの…ありがとうございました」
「…」
「その…何がお礼を…」
「必要ない」
「…」
「…おい、離せ」
黙るルーベルに対して威圧が増す。
(いやいや無理だって。だってついさっき人攫いに遭って攫われかけたんだよ!?この人も一般人では無さそうだけど、助けてくれたからあの人たちよりはいい人だよね?たぶん!!そもそもこんな事があって一人で帰れないって!!何とかして一緒に来てくれないかな!?)
ルーベルは片手で掴んでいた服を両手で力一杯掴む。
「おい、いいかげ「そんなこと言わずに!!」
「!?」
「私はお礼をしたいです!貴方がいなければ攫われていました!だからお礼をしたいです!!」
「必要ないって…」
クゥー
その人のお腹が小さくなる
「「…」」
ルーベルはここだと決めるとその人に縋りつき、捲し立てる。
「お腹空いているんですね!!」
「空いてねぇ!!」
「ちょっど良かった!!私の家飲食店なんです!!結構…いや、かなり人気なんですよ!!だからお礼としてご馳走します!!」
「必要な「是非!」
「いや、だ「是非!!」
「…」
「是非!!!」
そしてルーベルはお礼として料理を振る舞うことになった。
捲し立てるその姿は恩人に向かってするものとは思えなかったが…
「んで、その店ってどこ」
「2区のギルドの近くです」
「…オマエいつまで座ってんだよ。礼する気ある?」
「あの…大変申し上げにくいのですが…」
「?」
「こ、腰が抜けて動けません!!」
「は?」
「すみませんっっ!!」
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なんだかんだであって無事帰宅したルーベルは
恩人…アルフにお茶とクッキーを出し、キッチンに立つ。
(アルフさんは何でも良いって言ってたけど、それが一番難しいんだよねぇ)
タマネギが目に入る。
(タマネギといえば、あのお店のズッパ美味しいよね。あの値段で何食べても美味しいから学生の頃からお世話になってた…久しぶり食べたいなぁ)
「よし!ズッパにしよう!」
まずはタマネギを繊維にそって薄めにスライス。
鍋にオリーブオイル、タマネギを入れる。ここでタマネギの水分を出すために塩を加え、飴色になるまで焦げないように水を少し入れながら炒め、ニンジン、セロリ、ベーコンを賽の目状に小さく切って鍋に入れる。
タマネギが飴色になったら水とブイヨンを加え、煮込む。
煮込み終わったら、チーズを少し入れて全体に馴染ませ、器にスープとバケットを入れて、バケットの上にチーズを乗せたら、オーブンでチーズに焼き目が付くまで焼けば完成。
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ルーベルは料理をアルフの目の前に置くと向かい側に自分の分を置いた。
「…一緒に食うの?」
「え?はい。私も人攫いに襲われてお昼食べられなかったので…ダメでした?」
「別に…」
「それなら一緒に食べましょう!いただきます」
(ひたひたのバケットとチーズが最高!今回はバケットを最初から浸して焼いたけど、アルフさん的にはどうなんだろう?)
アルフを見ると小さく「うまっ」と呟いた。
ルーベルその言葉に嬉しくなり見ているとアルフは顔を伏せた。
「何だよ」
「今回はバケットを浸して焼いたんですけど、どうですか?バケットはカリカリの方が好きですか?」
「わかんねぇ」
「そうなんですか?じゃあ今度は別で焼いてカリカリで作りますね」
「…」
「というか是非父の料理も食べに来てください。とっても美味しいので!」
アルフはルーベルを見てため息を吐く。
「?」
「…考えとく」
「はい!」
最後まで読んでくださりありがとうございます!




