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一品目

読んでいただけると嬉しいです!

もし来世があるなら。

もしくは人生をやり直せるなら。

私はきっと別の道を歩く。


走馬灯のように記憶が脳を駆け巡る。


こんな夢見ない。

こんな夢は追わない。


苦しまず、悲しまず、惨めにならず


自分に見合った道を歩むんだ____


「ーーーー!」


誰かが私を呼んでいる。


でも私はその心地良い浮遊感に身を任せ目を閉じた。



________________________________



(どこ、ここ…)


目を覚ましたらそこには古めかしい、知らない天井が見えた。


(…いや、ここは私の部屋)


「…ルーベル?」


呼ばれた方を見ると爽やか顔の青少年がいた。

彼の名前はティープ。私の幼馴染だ。


「良かった…!今おばさんとおじさんを呼んでくるから待ってて」


幼馴染が部屋を出ていく。

すると勢いよく扉は開かれ、そこから部屋に入って来た男女は泣きそうな顔をして私に詰め寄る。


「良かった!目を覚ましたのね!」

「良かった!良かった!」


この男女は私の両親。


知ってるけど、知らない記憶。

混乱する頭の中


少しずつ私と私が交わっていく。




____どうやら私は、頭を強く打った衝撃で前世の記憶を思い出してしまったようだった。




転生、憑依。どちらかはわからないが、どうやら私がいた世界とは違う世界にいるようだ。


コンクリートで作られた見慣れた建物はなく、その美しい風景は時代を感じた。


(ここだけ見ると、タイムスリップしたみたいだけど…)


ルーベルは野菜の皮を剥きながらお客さんに目を向ける。

両親が営む飲食店には、毎日たくさんのお客さんが来るが、その中には冒険者と呼ばれる者たちがいた。


(あの人は戦士ぽい。隣の人は魔法使いかな?)


そんな事を考えながら作業をしていると


「ルーベル!」


いきなり名前を呼ばれ、勢いよく顔を上げる。


「びっくりした…突然どうしたの?お母さん」

「どうしたのじゃないわ。いつの間に上手になったの!?あなた見て!ルーベルが上手に皮剥きできているわ!」

「何!?…こんなに綺麗に!頑張ったなぁ!ルーベル!」

「え?…あっ!」


まるで初めて我が子が立った時のように喜ぶ両親の姿に呆然としていると、記憶が蘇る。


(忘れてた!前の私めっちゃ不器用で料理も全然ダメだったんだっけ…)


今のルーベルからしたらなんて事ないが、両親達からすれば途轍もない進歩であり、喜ばしいことなのだ。


(何の因果か知らないけど、今世の両親も飲食店経営しているんだよね)


そんな両親を見てルーベルはある事を考える。


「…あのね。お母さん、お父さんお願いがあるの」


__________________________________



両親にお願いしてルーベルは今晩の夜ご飯を作らせてもらう事にした。


(お願いした時2人とも何とも言えない顔をしていたけど…。まぁ私の料理下手通り越してよく分からない物体になってたからね…)


ルーベルは思い出すあの物体に顔を歪める。


「さて、何を作ろう」


(今日も忙しかったから、疲れてお腹空いているよね。早く作っちゃおう。)


蓋がしてあった鍋を見ると今日のスープがまだ残っていた。


(3人で食べるには少ないかな?…よし!)



「今晩はホワイトシチューにしよう!」



(でも、シチューとパンだけは足りないかな?)


ジャガイモとタマネギの皮を剥き、切る。ジャガイモは火が通りやすいように薄めにカットしてを水に浸す。


(今回はベーコンじゃあなくてソーセージを使おう)


そして、ソーセージは斜めにカットして、ニンニクはみじん切りに。



ジャガイモを水に浸している間にシチュー作る。


フライパンを火にかけて弱火でバターをゆっくり溶かす。

バターが溶けきる前に小麦粉を入れてヘラで混ぜ返しながらゆっくり炒めていると、フツフツと気泡がわいてきて、全体が白っぽくなる。

ヘラですくい上げ、サラッとなめらかになったらミルクを加え、とろみが出るまで煮る。

ホワイトソースができたら、温めておいたきのこスープにソースを混ぜて、きのこのクリームシチューの完成。


次は水に浸しておいたジャガイモの水気を拭いて、フライパンにオリーブオイルを入れて温める。

温まったらソーセージを入れ、オリーブオイルにソーセージの旨みを溶かす。そこにみじん切りのニンニクを加え、香りが出たら、ジャガイモを入れる。


(ジャガイモは両面しっかり焼き目をつけて…うーん、香りでお腹空いてきたなー)


ジュウジュウと音を立てるソーセージとニンニクから香る匂いが食欲を促す。


ジャガイモに焼き目がついたら、タマネギ、バターを入れ、塩コショウ、ハーブで味を整えたら、ジャーマンポテトも完成。



「我ながら美味しそうにできた!お父さん、お母さんご飯できたよー」



___________________________________



盛り付けた料理をテーブルに並べ、両親を呼ぶと幼馴染もやって来た。


「ティープ!久しぶり!どうしたの?」

「照明の調子が悪いって相談を受けて、見に来たんだよ」

「えっ!それだけのためにわざわざ来てくれたの!?」

「もともとあの照明に使っている光源は僕が作った物だから、僕が見た方が早いと思って。それにルーベルの事も心配だったから…」

「私?」

「うん。この間の事もそうだし、あれからルーベル連絡来れなくなったからさ…」

「あー…なるほど」


ルーベルの幼馴染あるティープは、ルーベルに対して少し過保護だった。


(何で過保護なのか理由が分からないんだよね。昔の私はそれに甘えてたから何とも言えないけど)


改めて幼馴染を見る。


ここら辺では珍しい、黒髪黒目。私と同じ16歳なのに、頼りたくなってしまう親戚のお兄さん感。実際面倒見がよく、この爽やかフェイスで人気もある。

それに加えて頭もよく、平民でありながら王都の学園に通う優秀な錬金術師だ。


王都の学園には、基本的に貴族が通うが、優秀な者の訪れは誰であっても拒まずのスタンスであるため、平民でも通うことができる。

しかし、平民に貴族が払う学費を払えるわけがないので、特待生の制度を使うのだが、これがかなり厳しいのだ。


(なのに定期的に顔を出しに来るんだよね)


「どうかしたの?」

「忙しいだろうから、わざわざ来なくても大丈夫だよ」

「全然忙しくないよ」

「でも、今年卒業だよね?なら色々あるでしょ?」

「成績は全く問題ないし、卒業後の進路も決まってむしろ今は時間があるぐらいだよ。…もしかして迷惑だった?」

「全然!!私達は嬉しいけど、せっかく学園に通っているんだからさ…」

「そっか!なら良かったよ。ところでおばさん達が君がごはん作っているって聞いたんだけど…」


ティープは気まずそうにルーベルの後ろに視線を向ける。


(私生成したあの物体を食べてくれるのは、両親とティープは食べてくれてたんだよね。ごめんね…。今までのお礼も込めて今日は普通のごはんを食べてもらおう!)


「そうだよ!見てよこれ!!たくさん勉強して上達したんだよ!もし良かったら食べていってよ」

「えっ!これをルーベルが作ったの!?」

「そうだよ!」


(ティープのこんな驚いた顔初めて見た…)


「温かいうちに食べてみて!」


みんなが席に着き、神妙な面持ちでシチューを口にする。


(すごい…めちゃくちゃ緊張する)


「!!」

「うまい!」

「美味しいわ!」


(よっしゃ!!)

心の中でガッツポーズをする。

前世の記憶がある身からすると料理が壊滅は流石に思うところがあった。


3人が美味しそうに食べる姿に胸がいっぱいになる。


(…私やっぱりこの瞬間が好きだなぁ。でも…私には才能も何もない)


「きのこのスープをアレンジしたのね。バケットによく合うわ」

「このジャガイモの料理もソテーのようにみえるが、実際食べると付け合わせとわ思えないぐらいうまい!酒にも合いそうだ!」

「ルーベル!本当にすごく美味しいよ!」


(それでも、今この瞬間は喜んでもいいよね)


「ありがとう!!」


ありがとうございます!

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