切ない恋の始まり
席につき、順番待ちの菜津実に話しかけてみた、
「初めまして。今日から入った海斗と申します。これから仲良くして頂けたら嬉しいです♪
何とお呼びしたら良いでしょうか?」
と言ったら、
「初めまして。私は安西と申します。今日からなんですね。凄いですね。私が男性だったら絶対ホストになろうとは思わないから尊敬します。どうしてホストになろうと思ったんですか?」
と質問されて、これは先輩に言った事をそのまま言うべきか悩んだが何故か正直に
「モテる男性に憧れて」
とポツリとこぼしてしまった。
自分で言っておいて、すごく恥ずかしくなり、
「今の答え、忘れて下さい(・_・;」
と言ったら、菜津実は大きな瞳を横長にして笑い出した。
海斗はより恥ずかしくなり、赤面した。
菜津実の笑い顔が本当に可愛くて、一瞬見惚れていたら、
「あっ、失礼しました。思いもよらぬ答えでつい笑ってしまいました。ごめんなさい。何かするにもいろいろな事情がありますもんね。」
そう言ってもらえて良かったのかどうかは別にして、海斗の中ではなぜ他の男性にも言い寄られそうな菜津実がなぜホストに通うのか、どうして手が届きにくい蓮と話したがるのか気になってしまった。
海斗がその質問をどう切り出そうか迷っていた時に、菜津実が蓮と話せる時間になってしまった。
「次のお嬢様、どうぞこちらへ」
その瞬間、菜津実の顔がより女性っぽく、目がキラキラと輝いた気がした。
なぜか分からないが、海斗の中で男としての敗北感と今まで自分のして来た事(過去に振ってきた女の子達)への懺悔の気持ちが湧いた。