くまちゃんのおにぎりタロット 第一話:初めての占い
こんにちは、くまちゃんの物語へようこそ!
おにぎり印のタロットと、くまちゃんのふわふわした笑顔が、誰かの心を温かくできたらいいなって思って書きました。
さあ、ささやきの森へ一緒にでかけましょう。おにぎりを持ってね!
深い緑に包まれた「ささやきの森」。
木々の葉が風に揺れるたび、まるで秘密の言葉を交わしているような、不思議でやさしい場所。
その森の奥深く、小川のせせらぎが子守唄のように響く場所に、小さな家がありました。
そこに住むのは、ふわふわの毛並みに、まるで星を閉じ込めたような瞳を持つ、やさしい占い師のくまちゃん。
大好きなおばあちゃんから受け継いだ「おにぎり印」が刻まれたタロットカードと、それとお揃いの可愛い巾着袋を大切にしています。
巾着袋には「おにぎり印」のチャームが揺れ、袋におにぎりの刺繍が輝いて、占い師くまちゃんの優しさと魔法をそっと包んでいます。
朝の始まり
ある朝。
「ふわぁ〜……」と大きなあくびをしながら目を覚ましたくまちゃんは、窓をパタンと開けました。
ひんやりとした森の空気が部屋に流れ込み、カーテンがふわっと揺れます。
「ん〜〜っ、今日もいい朝だね」と深呼吸をして、にっこり笑うくまちゃん。
小さな台所では、鉄のフライパンが「ジュウジュウ」と音を立て、黄色い目玉焼きがぷるんと焼き上がります。
そして、お弁当用に握るのは今日も「梅干し入りおにぎり」。
くまちゃんは一つかじって、「すっぱ〜いっ!」と顔をくしゃっとさせながら、残りは可愛いおにぎり印の巾着袋にそっと詰めました。
紐に刺繍された小さな星が朝陽にキラリと光り、「今日も誰かと分けっこできるかな?」と目を細めました。
朝食を終え、木の机に座ると、大切なタロットカードを手に取ります。
おばあちゃんから受け継いだ「おにぎり印」が表に刻まれたカードは、そっと握ると温かくなる宝物。
シャッシャッと混ぜ、そっと一枚引くと――「杯のエース(Ace of Cups)」の正位置が現れました。
「おにぎり印」がふわっと光って、新しい出会いを教えてくれる。
裏を返すと、隅っこに小さなおにぎり模様――今日は梅干しの形だ。
「ん〜、すっぱい一日になりそうだね!」と、くまちゃんはにっこり笑いました。
窓の外を吹く風が、まるで「いってらっしゃい」と背中を押してくれるように、優しく木々を揺らしました。
森の小道へ
おにぎり印の巾着袋を肩に掛けて、くまちゃんは森の小道へ出かけました。
川のせせらぎ、葉っぱのざわめき、鳥の歌声。それはすべて、森の優しいメロディ。
苔むした大きな石のそばに、灰色のネコ・リンがうずくまっていました。
いつも凛としているリンの瞳が、今日は少し曇っています。
「くまちゃん……助けて」とリンが小さな声で呟きました。
「えっ?どうしたの、リン!?」くまちゃんは驚いて、リンのそばにしゃがみこみました。
「昨日、ソラが森の奥に行っちゃって……まだ帰ってこないの。どこ探しても見つからなくて……」
リンは眉をひそめ、心配そうな表情を浮かべました。
「それは大変!でも大丈夫、くまちゃんに任せて!」
くまちゃんはリンを安心させるように、いつもの笑顔を見せました。
肩からおにぎり印の巾着袋を下ろし、タロットカードを取り出して、三枚をそっと並べました。
カードの「おにぎり印」が静かに輝き、過去・現在・未来を映し出します。
過去:金貨の5(逆位置)
「リン、寂しい時もあったけど、ソラがいつもそばにいてくれたね」とくまちゃんが優しく言いました。
現在:星(正位置)
「今、希望の光がちゃんと見えてるよ。ソラは、きっと遠くにいない」と呟くと、「おにぎり印」がキラリと光りました。
未来:棒の3(正位置)
「一緒に探せば、きっと見つかる。小さな冒険のはじまりだね!」
「おにぎり印」が川の上の丘を指すように光ると、リンが「本当?」と目を輝かせました。
くまちゃんはカードを裏返し、「ほら、この海苔おにぎり模様、ソラの元気な羽みたいだね!」と笑いました。
「待って、すぐ準備するよ!」と、くまちゃんはおにぎり印の巾着袋を手に取った。
おにぎりとタロットをそっと詰め、紐に刺繍された星が揺れるのを眺めて、きゅっと絞ると、「よし、行こう!」とリンににっこり。
丘の上の再会
風に吹かれながら、緑の丘を登るふたり。
木々の間を抜けると――高い木の枝に、小さな赤い鳥・ソラがいました。
「リン姉ちゃーん!」とソラが元気よく叫びました。
「ソラ!」リンは思わず走り出し、ソラが枝から飛び降りてくると、ぎゅっと抱きしめました。
「もう、心配したんだから……」
「ごめんね、リン姉ちゃん。珍しい赤い花を見つけて、つい遠くまで飛んじゃった。でも、ちゃんと帰ってきたよ!」
ソラは赤い羽根をぴょこぴょこさせ、リンは「もう、絶対離れちゃダメよ」とそっとささやきました。
ソラが「お腹すいた〜!」と羽をばたばたさせ、リンも笑って「私も」と言います。
「おにぎり、分けっこしよう♪」
くまちゃんは肩からおにぎり印の巾着袋を下ろし、中からおにぎりを取り出しました。
「おにぎり印が光ったから、きっと美味しいよ♪」と渡すと、ソラが「ねえ、このカードの裏、赤い花の模様だ!」と指さしました。
「ソラが見つけた花に似てるね。今日は特別なおにぎりだよ」とくまちゃんはにっこり。
「ありがとう、くまちゃん!」とふたりは声をそろえて笑顔を見せ、すっぱい梅干し入りのおにぎりを美味しそうに頬張ります。
その味は、森のどこよりもやさしくて、あたたかくて――三人の心を温かく繋ぎました。
夕暮れの終わり
夕暮れ時。
くまちゃんは家に戻り、窓辺の椅子に腰を下ろしました。
おにぎり印の巾着袋を机にそっと置き、今日引いた「杯のエース」を見つめました。
「おにぎり印」が今日の出会いを優しく照らしてる。
裏返すと、小さな星のおにぎり模様がチラリ。
巾着袋の星の刺繍とそっくりで、くまちゃんは「リンとソラを笑顔にできたね。明日はどんな模様かな?」と呟いて、にっこりと目を細めました。
森の木々がざわざわと優しく揺れながら、今日という一日を包みこむように、静かな夜が始まろうとしていました。
明日もまた、誰かの心に星を灯すために。
くまちゃんはそっと目を閉じました。
次回予告
次回:「くまちゃんと月夜のメッセージ」
満月の夜、くまちゃんは窓辺でタロットを手に持った。
突然、「おにぎり印」が月光に反応してキラリと光り、巾着袋の星の刺繍がふわっと輝きだす。
机に置かれた手紙を照らす光に、「誰かからのメッセージだ……!」と目を丸くするくまちゃん。
カードを裏返すと、月見団子のおにぎり模様が。
「ふふ、甘い夜になりそうだね」と呟いて、くまちゃんは手紙を開いた。
それは、誰かの想いが届く魔法のはじまり――。
読んでいただきありがとうございます。
くまちゃんの物語でまた会いましょう。
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