対 忍びのアヤノ
「どこどこどこー。」と探し回るうたは、見える範囲には見当たらない。
大きな建物の屋上から目の届く範囲をしっかり探している。
「見つからない。」と地団駄を踏む。
後ろに誰かの気配を感じる。
「お嬢様。」と声をかけられた。
振り返るとそこには・・・
「げっアヤノ。なんでここに。」とすかさず距離を取り、戦闘体勢に入る。
「棟梁に言われまして、連れ戻しに来ました。」と痺れ薬が塗ってあるクナイを取り出して投げてくる。
「ちょっと待って、今忙しい。」とそれらを難なく躱すが、糸で跳ね返って戻ってくる。
「くっそ。」とちょっと掠ってしまう。
「腕鈍ったんじゃない?」と聞いてくる。
それに応える事ができないうたははフラフラになり、屋根の上から落ちた。
それをキャッチする者がいる。
「どうしたのうたはー?」と口も震えて動かせないうたはに聞いている。
「敵ー?」と聞いてうたはは少し頷くのが精一杯だった。
「抱えたままだと戦えないなーここは逃げるかなーでも本物の忍者も見たいしなー
。」うーんと悩んでいるクロエ。
「そうだ!召喚!」とボーンと煙の中からテトが現れる。
いきなり召喚とか一体なんだ?と思いながらクロエの方を見ればうたはがぐったりしていた。
なるほど、ある程度の状況をなんとなく推測できた。
つまり俺が敵を倒せばいいと言うことだろう。
「任せた!」とどっさりと飛んでいる俺の上にうたはを乗せてくる。
重い。いや失礼かもしれないが、重力が一応発生しているからね。
なんとか風魔法を起こして飛ぶことに成功する。
「ぎゃお。」ってちょっと待てぇー。
「敵と戦って来るねー。」と一瞬にしてクロエは消えて行った。
「ぎゃおおお。」ああ、俺運び屋じゃないんだがなと叫んで抗議する。
それよりうたはがダウンする相手、クロエ大丈夫か?まぁなにかあっても逃げ切れるかとクロエの実力を認めている。
のろのろ飛行でうたはを屋敷まで運ぶのだった。
「がおーがおー。」と結構頑張った。風魔法も繊細な動きとか得意じゃないんだよな。
下の方が妙に騒がしいと思ったが、この時俺はその理由に気付いていなかった。
アヤノの前に次に来たのは屋敷でうたはと一緒にいた女の子だった。
「待ったー。」と言っている。
まるで久しい友人に言うように話しかけてくる。
こいつやる。うたはと同レベルの猛者かもしれない。
それに隙だらけに見えて誘っている?
アヤノは高度な読み合いをしていたつもりだったが、クロエはそんなつもりはなかった。
「じゃあ行くね。」といつの間にか両手に短剣を持って襲い掛かってくる。
速い、私でなければ殺されていたかもしれない。
なんとかクナイで受け止める。
「やるぅー。」と口笛を吹いているまだまだ余裕なのかもしれない。
「ちっ。」と舌打ちをうって、クナイを空に飛ばす。
「何処に投げているの?」とそちらを見れば上を向いている。
獲ったと横からも攻撃を加えようとして、弾ける彼女。
「えっ。」という顔をして後ろに猛烈な気配を感じる。
思わずクナイを振り抜くと口の歯で受け止められた。
「うんぎがああんぎ。」と何言っているかわからない。
だけどこれで相手は動けなくなるはず。
痺れ薬を塗っているクナイを口に含んだのだ、ただではすまない。
そう思って距離を取るが一向に痺れ薬が効いている兆候がない。
なぜ?と考えてうたはの近くにいたのなら対策ができるか?と思ったが彼女の薬学の才能はそこまでなかったはず。
相手の方が格上かもしれない。
忍びは危ないことはしない。ここは撤退させてもらおう。
煙玉を使ってこの場を後にした。
「次は追いかけっこー。」とか言う声が聞こえたが気のせいだろう。
裏路地の隠れられそうな場所まできて一息入れる。
「なんで、どうしてここは化け物ぞろいなのか?」とここに来て強者と出会いすぎている。
なんと恐い国だと武者震いするアヤノ。
「とにかく一旦撤退を・・・。」
「何処に行くのー。」
「宿に戻って・・・。」と応えようとして壁に垂直に立っている彼女。
私を下から見ていた。
思わず目が合って固まる。
距離を取ろうにも裏路地は狭くて、逃げ場はなかった。
逃げ切れなかったのか?忍びの国の実力者のこの私が・・・と愕然とする。
「鬼ごっこ終わり?」と聞いてくる。私の額から汗が流れる。
ヤバイ、コイツマジでヤバイ。
「じゃあ、また遊んでね。おねーえさん。」そう聞いた後に頭に衝撃を覚えて気絶するのだった。
「この人どうしよう。」と頭を悩ませる。ピコンと閃く。
「そうだ!召喚テト!」
ボーンと煙の中から再び俺が現れる。
流石に呼びすぎじゃないか?
断ってもいいよな?とか思っているが緊急かもしれなかったからうたはを屋敷の庭に置いて召喚に応じた。
〝スミン、庭にいるうたはを頼んだ!〟と念話を送って召喚に応じる。
「これも頼んだー!じゃあー。」と言って瞬く間に消えていくクロエ。
「ぎゃおおお。」いや、俺は運び屋の子竜じゃないんだが?と言ったがもうここにいないクロエには届かなかったようだ。
仕方なくご主人様の命令通りに彼女を屋敷まで運ぼうとしてかなり重い。おかしい、うたはよりもさらに重い。うたはが沢山食っていて重いのはわかるんだが、この娘は・・・とよく見れば隠し暗器などがあるではないか、すべて没収しておこう。ある程度わかる範囲で没収して軽くなった彼女。
「よいしょ。」と言いながらパタパタ飛び始める。いやこれは風魔法だな。
重量オーバーかもしれない。
そんな空を飛ぶサンタコスにおぶられた彼女を彼氏の元に運ぶのか?とかそんな噂があったとかなかったとか。
俺は帰ってからスミンに浮気だとか女を連れ込んでいるとか説教をされる羽目になる。段々ラミーナに似てきてないか?
「それより付き合ってないだろう。」と言ってしまった。まずいと口を覆う。
そうなのだそんなことを行った日には面倒くさいスミンの出来上がりだったりする。
「どうせ私は、テト様のなんでもない女ですよね。」と隅の方でいじける。
「いらない子ですよね。」わざわざ聞こえるように言ってくる。
俺が外に出たら近くの隅にいてまた同じことをしてくる面倒くさいのだ。
「ああ、わかったわかったからな。ほら、今からなら時間あるだろうデートに行こう。」と誘うしか道はないのだった。
一方クロエもまた妖刀ござるを一応探していたはずだった。
「あれ何しにここに来たんだっけ?」と彼女は首を傾けて考えている。
何かこう大事なものを探してたような?
「まぁいっか。」と言って王城に忍び込んでいる。
まるで散歩感覚で王城に忍び込むクロエにどうかとは思うが誰も気付いていないからいいのだろう。
物語の分岐の出会いをクロエはここではたすことになる。
本人はまだ気づいていない。
そこに秘密を抱えたものがいるということに・・・
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