うたはとの出会い
あの時から5年の月日が経ち、王都の貴族学園への入試に向かうクロエ。
俺はその道中一緒に馬車に揺られながら、グースカピーと寝息を掻いていた。
他にスミンと領主のランドルがいる。
ランドルは王城から呼び出されたらしい。
めっちゃくちゃ嫌な顔をしていたが・・・
「うん?」と何か遠くから剣戟の音がする。
どうやら一対他で敵を取り囲んでいる様子が見える。
どうするべきか。
「どうしたのーテトー?」
間延びした声でそう聞いてくるクロエ。
結局そう言う喋り方が治ることはなかった。
本人は気にしていないが、貴族としては減点だし、さらに悪化の一途を辿っているようだ。
学園で絡まれなければ良いがと心配している。
きょろきょろと辺りを伺う。
恐らく進んでいる方向だと思うが・・・
クロエもまた何かを感じたのか。
「一対数十人の野盗かなー?」
「どうされますか?」と向かいに座るスミンも気付いているのか聞いてくる。
「?」と未だ状況を把握していないランドルがいる。
「行ってくるー。」と馬車のドアを開けてばっと飛び出していった。
物凄いスピードで走り出し、馬車を置き去りにして行った。
「こらクロエ、はしたないぞ!」と叫んで注意するランドルだが、家の女性陣に聞く人間はいないとやれやれ顔だ。
「怪我をしないようにな。」
手を振って答える当たりクロエはましな方かもしれない。
スミンが俺を見てくる。
はい、はい行ってくるよ。
お願いしますと念話でやり取りする。
俺もまたパタパタとクロエを追いかけるのだった。
その少女は忍者刀を抜きながら敵に対して容赦なく切り伏せていた。
「そんな攻撃では、当たらないよ。」といなしながら盗賊にとどめを刺そうとするが・・・
「ちっ。」と舌打ちする。
「数だけは多いなぁー。」と面倒くさそうにする。
「助太刀する~。」と間延びした声が聞こえてくる。
「あ、ありがとうって何処から現れた?!」と驚く忍者娘。
しかし、昼間っから黒装束とか目立つなとファーイヤーボールで野盗の類に攻撃を加える。
「あちち。」とか言っている。野盗を沈めるようにクロエがトドメを刺した。
「髪燃えちゃったね。」と禿げた頭の気絶した男を見てそんなことを言う。
「可哀そうに。」と同情する忍者娘。
俺から距離を取って女の子の方に襲いに行ったがクロエの舞うような二振りの剣によって屠られて行く。
「私も負けてはいられない!」と忍者等で二人競うように敵を屠る。
俺は狩られる盗賊達が可哀そうになってきて、頭をファイヤーボールで男たちの髪を燃やし続けるだけだった。
無残な男たちの出来上がりだった。
処置はランドルに任せながら、連行されていく男達近くの街で犯罪奴隷として扱われるのだろう。
「もう嫌だぁー。」と奴隷生活の長かった男が逃げてきたのかもしれない。
「俺がこの国を襲ったのは謝るからよぉー。故郷の帝国に帰してくれぇー。」と泣き叫ぶ逃走を図ろうとしていた男を、スミンが昏睡させ馬に括りつけて運ぶようだ。
「あいつなんでいるんだ。まさかこいつらあの時の悪魔達!」と野盗たちが震え出す。
大人しくなったのはスミンが睨んだからだあろうか。
うん、今のスミンなら俺にも攻撃が入るからね。恐がっても仕方ない。
「まぁこのくらいは。」とパチパチと手を叩くスミンのその様子を見ていた。
「で、貴女誰?」と首を傾けて忍者娘が聞いている。
「クロエだよぉー。この子はテトぉー。可愛いでしょー。」
「フーンそうなんだ。」と言って頭の装飾を取って素顔を曝す。
「がお。」ほぉーとあどけない顔つきだが中々の美少女なのではないか?
凛々しい顔つきをしている。
「名前はうたは。忍者の家系に生まれたけど抜け忍して、あの伝説の侍になりたいのです。」
「へぇーそうなんだ。」
「がおお。」絶対わかってないなクロエ。
「えー、わかってる。わかってる。あれでしょ、語尾になんかござるとか、拙者とか付ける。チャンバラのやつ。」と考えながら目をキラキラさせていく。最近なんとなくだが、竜語の意志の疎通がフィーリング的にクロエがわかりだした。
「ガオー。」クロエが真似をして時々言うが全然恐くない。あれだ遺伝だ。
そしてただ遊んでいるだけで、深読みしないでいいのはどうなんだ?
まぁつぅーかぁーくらいな間柄かな?まぁ俺の方は隠し事が多いが・・・
まぁ竜でのコミュニケーションが多少なりともできることで、ダンジョンなどでは役に立ったかな。
スミンが対抗して竜語をマスターしようと頑張ったが・・・泣きべそを掻いていた。うん向き不向きがあるようだぞと慰めておいたら、さらに泣き出した。
「愛が足りないのですね。」となぜか闘志を燃やしていた。
まぁそんな話しはいい、今なんかラドルガ辺境の方では時代劇ブームが到来している。
「なぜだー。」と頭を抱えるほどだ。
それもこれもアイツのせいだ。
次から次に持ち主を替えて、侍やなんか時代劇風に替えていく不思議現象によって、城さえも和風の城に変わったほど、いやマジでダンジョンマスターのユカリの手にアイツが握られていた時は・・・設定がすべて時代劇和風になり、山々にはさくらが咲き誇っていた。砦も和風化され、見張り台がすべて五重の塔になっていたのは何と言えばいいのかわからない。まるでダンジョンがウイルスにでもかかったかのように・・・ダンジョンに妖怪がはびこっていたりした。いや、冒険者が妖怪になっている(仮装)のを笑った。
そしてアイツを取り上げようとしたらエスケープする。
何度アイツを見つける度にへし折ってやろうかと渡り歩いて行く度にいや、飛んだりもして、地面に溶ける時もあるから、一度見失うと持った男はちょんまげ、持った女はおかっぱ頭・・・なぜかその髪型が流行り出していると言うめっちゃカオスの状況。
あの駄天使、違った堕天使すらもござる言葉を使うほどだった。
「どうして天使の僕がこんなござる言葉を使っているでござるかー。」と怒り心頭だった。
「やーいやーい。」とつい言ってからかったなー。
「えっなにどこから声がしているでござるかぁ?」と妖刀ござるを持っているのはミコミは震えている。
「これかコイツのせいなのか。」と原因を突き止めて震えるミコミ。
ふさぁーとおかっぱになった二人。
「ふふふ。ガオガオー。」とそれを聞いて笑ったと思ったら消えているアイツ。
「くっそぉーへし折ってやるぅー。」と探しに行こうとミコミの身体に乗り移り、ミコミが知らない場所で目覚めてまた震えていた。
なんとか領の時代劇化を止めようとしたが・・・その原因のアイツが現在も行方不明。
今度は一体何をやらかすか心配なのだ。
「それなら、いいのあるよぉー。」とクロエが指輪の収納から取り出したのは・・・
「ぎゃおおおおお。」とクロエお前が持っとたんかい!
目が飛び出るくらいに驚いたそれは・・・
「これはまさか伝説の・・・刀、しかもこの気配なんらかの妖刀。まさかあの伝説の妖刀ござる?」と驚愕とともに目をキラキラさせている。
「たぶんそうでござるぅー!」とクロエが妖刀を持っていることでござる言葉になっているのは可愛いのだが・・・
「がおお。」やめろそれは危険だ!と例のアイツ(妖刀ござる)を持つな!と忠告したが今の俺は子竜。未だ都合がいい時は叫び声が届かないまま、うたはが妖刀に手を伸ばしたのだった。
「がおお。」と頭をを抱えたが、もうどうすることもできない。
よく周りを見るとランドルは馬車の中で若干うたはから距離を取ろうとする。
「おかっぱはいや、おかっぱはいや。」と前に刀を持った時におかっぱになってしまったスミンのトラウマ。
「ぶふ。」と思い出し笑いをしたら睨まれた。
「これで今日から私も侍でござる。」と目をキラキラしながら妖刀を握っているうたは。
忍者衣装から侍の衣装にジョブチェンジしている。まるで魔法のステッキのようだ。
「やったー。良かったね!」と一緒に喜ぶクロエ。
ござる付ければ侍なのか?それとも形から入るタイプの侍なのか?
うーんわからない。
うん?なんか妖刀が嫌そうな顔をしているような。
ブルブル震えながら、逃げようとしているらしい。
しかし逃げられない、これはもしかしてピッタリの相手見つけたんじゃないのか?
「がぉおおー。」ご愁傷様と言ってこれ以上被害が出ないことに安心と少しばかりの残念さをこめて俺は妖刀ござるに手を合わせるのだった。
いや、故意に見逃すはずないじゃん。
きっとたぶん、皆を笑って楽しんでなんかないよ。
「ぶっ。」とうたはとアイツの未来を思って今だけは少し笑っておこう。
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