歯ぁくしばれ、このクソヤロー!
ひとしきり泣き終わってクロエを待たせていることに気付いて外に出るルイネ。
「父上、父上、うぇぇぇん。」と泣き真似をしている。
「うーんちょっと違う?」と首を傾けるクロエ。
「確かルイネはこう、うぇぇぇぇーん。」とシクシク泣く真似をする。
「何しているの?」と冷めた声でルイネが聞く。
「うん?だって暇だったからルイネの泣き真似を・・・似てた?」
「似てないわぁー。」と大きな声を出してクロエの頭にチョップをしようとして、避けられる。
「うわぁールイネが怒った。父上うぇぇぇん。」
「逃げながら、私の泣き真似をするなぁー。」と恥ずかしがりながらクロエを追っていくのだった。
「ルイネはいい友達を持ったな。」とマリーナと会う準備をしながら友達同士の掛け声を聞いて、聞こえなくなったころここを出た。
宰相の部屋の前には知らないメイドがいる。
「私フレイザがご案内いたします。」と綺麗にお辞儀をする。
「フレイザ?あのフレイザか?」にしては若い。
「はい、こういう姿で驚かれているのも無理はないかもしれませんが、恐らく何らかの影響で若返ったとしか言えないので・・・。」
「そうかそう言う秘薬を手に入れたのか?」エルフなんかがそう言う秘薬を隠していると聞いたことがある。それを間違って飲んだとかか?
「今はそれよりもマリーナという者の所にお願いする。」とどうしてもフレイザ、かつて王国最強と言われた女。そして王国のスパイとして辺境に飛ばしたはずが、ここにいるとは・・・今の今まで忘れていた程だ。いや実際そこまで細かい報告は受けていないがな。
「ここの領に何があるんだ。」と思わず聞いてしまう。
「・・・私の勘がここだと言っていました。」武人としての野生の感か、それともスパイとしての鼻が利くと言う奴だろうか?
「嘘をつけ、ここにセバスがいるのだろう。てここまで追ってくるとは・・・ストーカーめ。」
「ふふ、否定はしません。」とポーカーフェイスを作っているが、少し動揺している目線が世話しなかった。
そうこの女、現役を引退した後王家の影に所属して情報を流したりしている。その実力、人脈もありながら情報面で助かっているが・・・
「ここです。」と言ってフレイザがコンコンとノックをする。
「マリーナ様、宰相閣下をお連れしました。」スミンが謹慎処分になって一時的に戻って来ていたらこう言うイベントに出くわすとは・・・ふふふと笑う。
できれば戻ってきたくなかった。セバス様ぁーと心の中で思っているのは内緒だ。
それに気になるイベントがあるから、その現場にいなければならない。
「入ってもらって。」と座りながら言う。
さて宰相ってこの国の偉い人間、かしずいてもいいが、それはなんか私じゃない気がすると言うかレディーの部屋にいきなり来るとか、この国は大丈夫なの?と思ってしまいたいくらいだ。まぁ犯罪者に人権はないのか?
「失礼いたします。」とガチャリとフレイザがドアを開ける。
クオンが中に入ると女がソファーに座っている。
宰相が中に入って来たのに、立って出迎えないとは無礼な女だとの印象だった。
昔にその手の女に会ったことがあるが、今は何処で何をしているのだろうかと頭を過った。
向かい合わせで、ソファーに座る。
その女は下を向いていたが・・・ゆっくりと顔をあげる。
かなりの美人だろう。私が言うんだから間違えはない。
色々な理由で会えなくなってしまった昔の女に似ているような?
マリーナは宰相の顔を堂々と見ようと顔をあげる。
多少年配ではあるが、ダンディーでいい男。
昔の男が頭を過って重なる。
「うん?」とマリーナは目を細めてよーくその男を見る。
しかも失礼なことにゼロ距離まで近づいてだ。
無礼なことに襟首を掴んで。
そして悟った。
「お前ぇぇぇぇ。」と身体が震えているマリーナ。
「?」と未だなぜ目の前の女が切れているか状況を理解できないクオン。
そんな無礼を許すものかと一人の影が宰相を救おうと動くが、腕を掴んでフレイザが止めた。
「フレイザ様なぜ?」
「この出会いは邪魔してはいけないものだから。」と何かを企みが成功した悪人顔をしている。
「それはどういうことです。」首だけで向こうを見ていろと促していた。
「お前、お前ぇぇぇ、私を捨てたクオンだなぁぁ!歯ぁくしばれ、このクソヤローぉぉぉ!」と渾身のストレートが宰相のクオンの顔を捉えた。
頭を抱えるフレイザ。
それを止めようする影の護衛を捕まえて抑えていた。
「これも私たちの任務だから。」
「任務って主が殴られるのを見てるのがか!」と怒鳴る。
「それはまぁ成り行きだから仕方ない。」とそっぽを向くようにするフレイザ。
「大体なんの任務ですか!」
「ほら一番重要な任務。確証が持てなかったけど、こういうのは会わせて確認した方がいいに決まっているじゃない。」
「だからなんの任務かって聞いているのです!」と怒ってくる。
「あれ聞いてない?昔付き合っていた女を探してくれって命令が会ったでしょう。」
「そんな任務聞いてない。」と困惑する。
「あれ?あっそうか、あれは十年前にもう見つからないと結論が出てんだ。でも痴話喧嘩に王国の影が出張るなんて野暮だからね。気絶してて。」
影の首に手刀を入れるフレイザ。まだ新人の隊長そうだから頑張れ。
私の身体が壁に当たって大きな亀裂が走る。この拳はマリーか、思い出した。
俺が浮気したと勘違いして殴られた時と同じだ。いやそれ以上になっている・・・20年分か?
王家の業務が忙しくなって会えなくなって、忘れてたわけじゃないわけじゃないが、父上が死んで監視が厳しくて王城を抜け出せなくなって、捨てた感じなったのは謝る。
私も兄上を助けるのに必死だったのだ。そのため政略結婚を受け入れた。
これが貴族、いや王族の務めだった。
結果、マリーを捨ててしまった。下手に誰かに手紙を持たせられなかった。
当時は兄と一触即発間近だったのだから。
「もう一発。」殴ると壁を壊して廊下の壁にぶつかる。
「ごはっ。」と吐血した。
「これでトドメ!」ドゥンと変な音がした。
「ぐふっ。」と外へと落とされた。
「ふん私だからこの程度で済んでるんだ。感謝しろ。ぺっ。」と唾を吐く、そんな偉ぶった女はやっぱりマリーだったなーと二階から落とされながら思い出していた。
空はそろそろ夕方になろうとしていた。
「と言うことはアリア様も王族になる。ふふふ、この事実は辺境伯にとっても宰相が味方になるのだからいいことね。」
遠くから誰かが歩いてくる。
「あれはセバス様。」と駆け寄る。
「どうしてここに?」
「色々ありまして人が足りないみたいなのです。私もしばらく戻ってくるようにラミーナ様から言われたのです。」
「そうだったのですね。」
「それにこの城を維持をするための人も足りてないですし。」
「人材不足は辺境なのでどうしようもないですよ。」
「それはそうですが・・・しっかり後見も育てないといけないですな。」
「はい、そうですね。」と二人で仲良く歩いてラミーナ様の所に行くのだった。
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