人質の行方
ノエノスはダンジョンの出入り口に倒れている兵士達がいるのを発見した。
状態を確認するようにしゃがむ。
まだ辛うじて息はしていた。
「誰かぁー来てぇー。」と大きな声を出して呼び出すとタルタロスが執事姿で駆けつけてくる。
「これは一体?」と戸惑う声を出すタルタロス。
「まだ息がある。手当をお願いしていい?」
「はい、ノエノスお嬢様はどうされますか?」少し考えるそぶりをする。
「そうだね。私はダンジョンで人を探します。」
「わかりました。こちらはお任せください。」
ノエノスはダンジョンの中に足を踏み入った。
無暗に動くわけには行かない、だけど遠くで十人ほどの足音が近づいてくる。
あの迷いの森で死にかけた一件以来、たまに人が動く遠くの音が聞こえたり、目がすっごく良くなって遠くの物が見えたりすることがある。
そんな自分の身体の変化をどうコントロールするか、それを馴染ませる訓練を積んでまた一段と強くなった気がした。
「これが魔力?」と感じることが出来たのも収穫だった。
魔力を感知したおかげでたまに食器をつぶしていたが、それがなくなった。
身体強化の精度が上がったのだ。
それにクロエとの模擬戦で今まで大雑把だった攻撃が、ちゃんと技を磨いて動く方向に変わってきている。力のごり押しではなくそれにもう一段、速さの技を加えて隙のない動きが出来ていた。
それにしてもクロエは本当に強くなっていると思う。
異常なくらいに速いスピードで・・・たまに全力を出したくなる時がある。
いずれ高みに上ってくるかもしれないその素質を感じた。
その時はやり合いたいなと段々バトルマニアなような発想になってきている自分の首を振った。
「来るか。」と視線を洞窟の奥に向けた。
「なんだ?」と始めに気付いたのは襲撃者のリーダーだった。
そこから先を超えることができない。
いや、超えてはいけないと肌で感じるほどの殺気。
それを感じることのできるのは自分だけらしい、知らずに先に進もうとした男たちは次の瞬間倒れている。
私以外、立っていなかった。
「ひぃぃぃ、なんでこんな。」とゴミ屑を見るような目をしている女。
「まさかお前は鮮血鬼。何でここに?」
「知る必要あるの?」
「・・・。」剣の切っ先を向けられ後ずさるリーダーの男。
その男の近くにずた袋が置いてある。
「へへ、どうやツキは俺にあるようだぞ。」
「?」と首を傾ける。
男はずた袋を開けてルイネの顔を出し剣を突き付ける。
「ムッ。」流石にそれはまずいと思ったノエノス。
速さで切ってしまうか?
しかし宰相の娘を傷つけるわけにはいかない。
大剣を肩に担ぐ。
「逃げるなら逃げればいい、でもいつまでも逃げれないよ?」とにっこり顔だ。
正直この女の圧は怖すぎる。本気で睨まれて身体が震えるほどだ。
連合が合戦で負けるわけがわかる。この化け物は一騎当千、無双の強者だ。
まるで蛇に睨まれたカエルのようだった。
その時が一瞬と感じれない。まるで数時間睨まれた感覚を味わう。
死を覚悟させられる。
「近づくな、近づいたらコイツを殺すからな。」
だがノエノスの威圧は男を恐怖に貶めるに十分だった。
冷静な判断能力が辛うじて残っていたのが良かったかもしれない。
「俺はここから出る。お前は絶対追ってくるんじゃねぇー絶対だからな。」と念を押す程だった。
そう言ってノエノスを置いてダンジョンを後にした。
男がダンジョンを出た瞬間兵士に取り囲まれる。
「お前たちコイツが見えないのか?」と言ってルイネを人質にしている。
「ふむ、ここは行かせるしかないでしょう。」とタルタロスは判断する。
流石に宰相の娘を傷つけたと知ったら我が家は御取り潰しになる。
この状態もその要因なのだが・・・正直どう対処したものだろうと考えていた。
「お前等ぁどけー。」と剣を振り回しながら外へと向かおうとする。
「付いてくるんじゃねぇー。」
執事のタルタロスが兵士に合図をして止める。
「宰相様の判断を仰ごう。」と一人の兵士を走らせた。
「このまま逃げれると思っているのか?」と逃げていく男の背中に声を掛けた。
男は当初の逃走ルートの通り、港に停泊してある船で逃げる予定だった。
用意してあった馬に乗り無理に西門を突破する。
ここまで来れば逃げ切ったと男は思った。
しかしそこに変な歌を歌いながら大勢の男たちが前方からやってくるのだ。
神輿に女が乗って担がれていた。なぜか祭りの法被を着ている。
「ついにミコミの時代が来た。皆を助けるんだぁー。」との号令。
「うぉぉぉぉぉ。」と男たちの怒号が響き渡る。
正面から逃げようとしている私にとっては邪魔だ。
押し通ろうとして、馬を飛ばす。
しかし、そいつ等は屈強な海の戦士達だった。
襲撃者のリーダーは馬ごとこけさせられ、男達に踏みつぶされて気を失うことになった。
「あいつは何をやってるんだ?」と男たちに担がれているミコミのことを見る。
男達が通り過ぎた跡にパタパタと竜の姿で飛んで来れば伸びている主犯がいる。
冒険者モードになって着地する。
「あれ?事件解決か?」と主犯の男の首根っこを掴んで帰ろうとする。
そう思っていたが、ルイネの姿が見えないことに慌てるのだった。
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