母と姉と妹
「それで、魔物の卵と言うことだけど?」
女の威圧を受けて一瞬下りそうになるが・・・なんとか堪える。
「失礼します。」と言って背負っていた卵を下ろす。
布に包んでいたそれを机の上に置く。
「ふむ?」と思って観察している。
「・・・。」
「大儀、後で少ないながら報酬を払おう。セバスチャンお願い。」
そう言って指示を出す。
隣にいた老執事が頭を下げた。
「ありがたき幸せ。」
そう言って頭を下げる。
これが貴族との最低限のやり取り。
カルマと老執事は部屋から出ていく。
「さて、この卵どうしようかー。」と投げ出し気味に椅子を倒しながらノエノスとフレイザに聞く。
「お母様流石に行儀が悪いですよ。」と注意するノエノス。
「そうです。いつまでも子供では困ります。」抗議するフレイザ。
「だってぇぇ。」と抗議の声をあげてムスッとする。
「この領地最悪ぅぅぅぅなんでこんなところにきちゃったのぉぉぉ。」
頭を抱え左右に振るラミーナ、しまいには机を叩きまくる。
「王都が良かったぁぁ。王都がよかったよぉぉぉ。」泣きじゃくる。
「お母様キャラが・・・。」
「お嬢様・・・。」と頭を抱える両者。
「仕方ないでしょう。夫の昇爵一年目でこんなに治安が悪くなるなんておもわないんだからぁぁぁぁー。」と投げ出す。
「それで、この卵どうするんですか?」
「そうなのよね。どうしようかねぇぇ。」と頭を抱える。
「変に孵化させて制御できないとかなったら・・・被害が出るし、テイムとしたとしても食費がかかりそうなんだよね。」指を顔に当てながら悩んでいる。
少し考えながらノエノスが何か考えがあるみたいで・・・
「お母様。その卵をクロエに見せてあげたいのですが・・・。」
驚いた顔をする。
「うーん。それもありかもしれないけど、クロエの病状が悪化することだけはしないようにね。」
「はい、お母様。」そう言って卵を受け取り、この部屋から出ていく。
「・・・クロエの様子はどうなの?」真剣な顔でラミーナに聞く。
「それは・・・時々良くなっては起き上がることはあっても立つことは出来ないまま、ただこのまま行くと長くは生きられないと・・・言うのが医者の見立てです。」
「そう、クロエに好きにさせておいて・・・忙しくて中々行けれないから、スミンによろしくって言っておいて・・・。」
「はい、わかりました。それでは私も失礼いたします。」
そう言ってお辞儀をして出ていく。
それを見送り。
「・・・本当に病なのか?」
怪しそうにしながら、目の前にある書類を片付け出す。
「やっぱり王都に居たかったぁぁぁ。」と嘆きながら作業をする姿がしばらく確認された。
「はぁぁ、いつまでもお嬢様気分でいてもらっては困るのですがね。」
そこから誰かが立ち去る影を見る。
それを見ないようにしながら、ここを立ち去ったフレイザ。
ノエノスはちょっと大きな卵をゆっくりと大好きな妹、クロエの部屋に向かっていた。
「あらノエノス様どうされました?」
そう聞く、廊下を歩いている妹の専属メイドスミン。
「この卵をクロエに見せようと思って!」そう言って掲げて見せる。
「流石ノエノス様、こんな重そうな卵も軽々持ち上げるんですね。」とちょっと引いていたりする。
意外にメイドなのに砕けた話し方をする。
そんなことを許す優しさがノエノスにはあった。
「ははは、意外に軽いよぉぉ、持ってみる。」
「いやぁぁ流石に無理そうですぅ。」と焦りながら断る。
「ふふふふふ。なさけない。そんな卵も持てないなんてメイド失格に違いない。ミコミはもてる。」人差し指を振り、キラーンと目が光る。
「まさかやる気か!」とスミンが驚く。
「じゃあ、ミコミ渡すね。」そう言って、卵を持ってミコミの前に持って行く。
「ふん、こんなもの楽勝ですよ。ふーんんんん。」と持ち始めると顔が赤くなり始める。
バランスが崩れそうになりながらおっとっと成ったりしている。
「この私がぁぁ卵ごときにぃぃぃぃ。」とか言っている。
「そうなるよね。」とスミンが煽ったりしている。
「あらら大変。」とかおっとりしながら声を漏らす。
「ミコミの実力をぉぉぉぉ。」と後ろで火が燃えているイメージ。
ぐてと倒れてそのまま卵に乗せられる。
はたから見ていると卵に負けている女に見える。
「ぷっー。」と思わず噴き出すスミン。
「笑わないで助けろぉぉぉ。」そんなこと言ってジタバタしていた。
大丈夫と近づいていくノエノス。
「よいしょ。」と言って大きな卵を持ち上げる。
「あははははっ。卵に負けるとか・・・。腹痛い。」と未だ笑っているスミン。
「別に負けてないもん。」と抗議する。
「二人とも喧嘩はやめて、仲良くしようね。」
「いやでも。」
「ぷぷぷ。」なんとか笑いを我慢しようとして無理そうだった。
「もう。」とぷんぷん顔が可愛かったりする。
「やめようね二人とも。」
この領の騎士団をまとめる団長は迫力がある。
その名は他国にも響き渡っているとか・・・
「「はい。」」
流石に恐いノエノスに睨まれて、二人とも仕事モードに入った。
ノエノスの後ろについて歩く二人のメイド。
その二人の目がビリビリと睨み合い、火花を散らしているとは知らずにノエノスは呑気に少し下手くそな歌を口ずさみながら歩く。
到着したドアをスミンがノックして。
「クロエ様、ノエノス様がお越しにになりました。」
「はいどうぞ。」と弱々しい声が聞こえる。
その言葉を待ってドアを開ける。
身体を起こそうとするクロエ。
「クロエそのままでいいよ。」と言うけど。
「だけど姉さま、ごほごほ。」と起き上がりながら咳き込む。
それを支えようとするスミン。
顔が青白くなっている。
今日は体調が悪い日だったのかもしれない。
「今日はやめとこうか?」そう聞く。
「いえ、大丈夫です。それより・・・。」と顔が卵に向く。
「それはなんですか?」
体調が悪い中、卵が気になって仕方ないと言う顔をしている。
こう見ると年相応な少女のように見える。
「これは魔物の卵なんだよ~。」と言った。
「そうなんですか?」
首を傾けながら聞いてくる。
「そうだよ。でも中から何が生まれてくるかわからないから・・・どうしよっかて皆と話しているんだよ。」
「孵すんじゃないの?」疑問に思って聞いてくる。
この疑問顔が可愛く見えてくるから不思議だ。
「うん、でも卵から危険な魔物が孵ってくるかもしれないからなぁー。料理して食べたりしないとね。」
「うーん。そうなんだ。」
何かを考えるそぶりをするクロエ。
「もし良かったら。私に育てさせてくれないかな?」
そんなことを言い出すクロエ。
「えっ、でもダメだよ。身体もあまり良くないし。負担になっちゃうよ!」
真剣な顔で止めてくる。
「クロエ様私も反対です。もしクロエ様の体調が悪くなったらと思うと・・・。」
スミンが暗い顔をする。
「ごめんなさい。でもお願い、育ててみたいの。」
「でもぉぉぉ。」と葛藤するノエノス。
「お願い、お姉さま。」
段々と身体の調子が良くなってきたのか顔が赤くなっていく。
「お願い。」
手を組んでお願いのポーズをされて断れるほど・・・妹好きの姉は断る言葉を見つけられずに・・・許可するのだった。
「わかったから、絶対に無理しちゃダメだからね。」と手を握って言う。
涙が出そうになっていたりする。
「うん、わかった。」そう答える。
「どんな名前にしようかな?」とそんなことを考える妹を見ながら幸せな顔をする姉。
姉妹の会話を楽しみながら、時間が来たので部屋を退出して行くノエノス。
それに付いて行くミコミ。
「ノエノス様。」
廊下でミコミが話しかける。
「何?ミコミ。」
「クロエ様の容態なのですが・・・あまり長くないと奥様とメイド長の会話を聞いてしまって・・・。」
それを聞いて、ミコミの首を思わず締める。
「なに、どういうこと?」
締めながら問いただす。
もがきながら、手を話してもらおうと抗う。
「はっ、ごめんごめん。」といきなり手を放した。
「いや、大丈夫です。さっき言ったのは本当の事なんです。でもたぶん二人に聞いてもはぐらかされるからぁ・・・」
「くっそー。」
ドンとう言う音がして壁にひびが入る。
「ひぃぃぃぃぃ。」と声をあげるミコミ。
たまにこう言うことをする未だになれない。
いきなり大股で歩き出す。
「ど、何処に行かれるんですかぁ?」
「迷いの森に行く。幻の秘薬の材料を取ってくるんだ!」
そんなことを言ってミコミを置いて行ってしまった。
そこにはほくそ笑むミコミがいたと言う。
恐らく迷いの森に向かってそこで・・・
「ふっ計算通り、ウルトラエージェントスパイのミコミにかかればこのくらい造作もない。」
そんなことを言って・・・目をキランと光らせていたりする。
「ふはははは。」と高笑い。
「時代はこのわたしぃの時代!」なんか勝利のポーズをしている。
「はぁー。」
そんな様子を影で見ながらどうしたものかとスミンが思っていたりしていた。
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