お前たちを試しに来た!
屋敷の皆は寝るものは寝て、作業するものは作業をしている。
夜の月明かりのもと屋敷の瓦礫をなんとかしようと、クロエの兄のライズが頑張っていたりする。
いや、これは大事な時に寝ていた罰なのだろう。
「ライズ様、流石にそろそろ寝られてはどうですか?」と声をかけてているのはセバスチャンだった。
「いや、流石に自分が情けなくて申し訳ない。クロエがピンチな時に駆けつけることが出来ずに・・・。」と悔しがっている。
なるほどクロエお嬢様を守れなかった件で大人しく反省していたのか。
いつにもましてラミーナの説教を粛々と受け入れていたのはそう言うことだった。
「だから俺は妹のために、しっかりした部屋を作らないとと思っているぞ。うぉぉぉぉ。」そう思うだけで身体に力が入っているようで作業効率が上がっている。
今は放って置いて良さそうだとセバスは思った。
その他に起きているのは、ノエノス様にフレイザ、スミンも起きているな。
ノエノス様は大きな瓦礫をポンと遠くに投げている。
大きな石を持ち上げるフレイザ。
「大丈夫ですか?」とフレイザに聞いた。
「大丈夫!大丈夫!」と顔を真っ赤にしながら持っていた大きな石を振り回していた。
「ならいいのですが・・・。」と若干引きながら答えた。
「ノエノス様もお休みになられた方がよろしいのではないですか?」
「私はなんかこう力が有りあまっているから!大丈夫!」と掛け声と共に瓦礫を遠くに投げていた。
「スミンは寝ないのですか?」
「私も色々考えることがあって・・・。」近くにある瓦礫をぽいぽいと投げて片付けている。
この屋敷のたくましい女性たちだった。
「お母さんはもう寝てるの?」
「はい、ちょっと魔力酔いが酷いみたいで、苦しんでおられます。」
「あーもうだめぇー。ぎ持ち悪いぃー。」お母様がそんなことを言っているのが頭に浮かぶ。
「魔法使いは大変だね。」とノエノスは言った。
「鍛錬が足りないだけでしょう。」と向こうからタルタロスが歩いてきて声をかけてくる。
「いえいえ、あれだけの大魔法を使われたのです。後遺症が残ってもおかしくないでしょう。」
「だけどよぉ、寝ぼけていて背中から切られたって言われた時、なんて言えばいいかわからなかったぞ。」やれやれ顔をする。
「えーと。」と答えようとするフレイザ。
そうなのだ。そう言う油断があったのも事実なのだ。
「まさか屋敷に襲撃があるなんて思わないでしょう。それにラミーナ様が寝起きが辛いのがわかっていたことです。それならば私の責任でしょう。」
「なるほど。まぁお前の顔を立ててやる。何等かの罰は受けろよ。」
そう言ってここを後にするタルタロス。
「ありがとうございます。」と言って頭を下げて。
「むっ。」とハブてているフレイザ。
「どうしたのですか。」と聞く。
「だってぇー言い方があると思うんですよ。もうちょっとオブラートに言うとか。」
どうやら私の事で怒っているようだ。
「タルタロスとは腐れ縁みたいなものです。彼が言う事は刺がある時がありますが、ちゃんと筋を通しますよ。」と彼を褒めるが、そのことにさらにハブてているフレイザ。
若返って精神も引きずられているのかもしれない。
気付いたら頭を撫でている。そのことに顔を真っ赤にしているフレイザ。
「ああ、すみません。なんか撫でたくなってしまって・・・」
「あっありがとうございましゅ。」噛んだ。
「噛んだ。」
「噛みましたね。」
「嚙んじゃった。」とノエノス、ポルル、スミンが陰でこっそり見ながらそんなことを言っていた。
「「「可愛い。」」」と三人の声がそろう。
真っ赤が頂点に達したフレイザ。茹でだこになっている。
「もう。」と言って三人を追いかけまわした。
まだまだ元気なようだ。
「ポルルなぜここに?」とセバスチャンが聞く。
「何か面白い匂いがした!」と答える。
「面白くない。」
洒落にならない瓦礫が飛んできて死の危険を感じるポルル。
「逃げないと殺されますよ。」そんなことを言うセバスチャン。
「セバス様助けてぇぇ。」とポルルはセバスを盾にする。
「むっ。」と言う声を出す。
流石にセバスに攻撃できないとポルルに瓦礫を投げることは出来なくなる。
「はっ!ラッキー。」と思っていたらいつの間にか後ろに気配を感じる。
首を締められた。
「それは冗談じゃないから・・・カク。」と言って落ちた。
その状況にスミンとノエノスは恐怖する。
いつの間にか後ろに現れ首根っこを持たれていた。
「皆、元気なようだな。」と言葉を発する。
「これは旦那様。」
「いや自然にしてくれ。」と頭を下げようとした皆を止めた。
朝日が出てきてまぶしい、周りを見れば瓦礫の山だ。
これからどうしようと悩む。
正直この領をもらった時は喜んだが、こんなに大変な領だとは思わなかった。
今では後悔している。
それでも私たちはやっていくしかない。
この領を嫌がらせのように渡して来た奴等を見返すために足掻くしかない。
朝日が来て涙が止まらない。
昨日は色々ありすぎた。もう休んでもいいよね、と思うほどだ。
目を開け次に開くと?何かおかしい宙に浮いている。
よく見れば他のノエノス、セバス、フレイザ、スミン屋敷の皆が浮き上がっている。
「なんだ?何が起こっている?」
近くではフルフを枕にクロエとミコミが寝ている。
「もうお腹いっぱい。食べれない。」とか寝言を言って涎を垂らしている。
「ミコミの肉はどこぉー。」と宙に浮かびながら、よく寝れるなと思う。
そしてラミーナが魔力症で苦しんでいる。
「大丈夫か、ラミーナ。」
「貴方、どうしてここに?何が起こっているの?」と周りの状況を把握しようとする。
よく見れば近くにいる兵達もここに引き寄せられるように宙に浮かびながらやってくる。
「本当に何が起きているんだ?」ラミーナを強く抱き締めながら言う。
そして次の瞬間、床面に着地させられた。
周りを見ればガラス張りの窓から領の様子がうかがえる。
いやガラス張りそんなものが一体なぜ?
「貴方見て!」とラミーナが見ている方向を見ると玉座に座る黒い鎧の男、いや少年と言った方がいいのかもしれない。
「辺境伯ラドルガよ。挨拶は初めましてだったかな。私がダンジョンを攻略した冒険者ヘイロン。」
皆がその少年の威圧に息を飲んでいる。
「お前たちを試しに来た!」
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