クロエの実力
ランドルは思わず目をつぶってしまった。
娘がゴブリンの集団に殺される所なんて見たくなかったからである。
だがいつまでも目を開けないわけには行かない。
目を開いてみるとそこにはゴブリンの攻撃を躱して、母親の元に向かおうとするクロエがいた。
まるで軽業師のようにゴブリンのことをからかいながら攻撃を躱し続ける。
「何?遊んで欲しいの?今忙しいんだけど?」と余裕の返信をしている。
それにイラつくゴブリンをいなすように進んでいる。
前から短剣が5本飛んでくるそれを躱してその短剣は5体のゴブリンに当たる。
「ぎょあ。」と言ってそれぞれ絶命した。
その短剣はセバスが投げたものだった。
「ちょっと危なかったよ。」と抗議するクロエ。
そのことに驚くセバス。いや躱せると思って投げたのだが、本当に躱せるとは思わなかった。
「何やってるでござるか!」と走りクロエの側にいるゴブリンに切りかかる。
「お父様ご無事だったんですね?あれ?でもござるって?」と困惑した顔をする。
「そう言うものだって思っておけでござる。」
「はーい。」と返事をする。
そこに大振りの大剣が迫り攻撃してくる。
ゴブリンもまだわらわらいる。
「くっ!クロエセバスの元まで走れるでござるか?」
「はーい、余裕だよ。」
結構ピンチのはずなのにこの二人を見ていると気が抜けそうになるタルタロス。
「はっこっちだゴンブリンキング!」と槍を突くがまるで効いていない。
「年は取りたくないねぇ~。」と己の不甲斐なさを嘆く。
まるでハエ(タルタロス)がまとわりついているように対応しているようだ。
クロエがセバスの所まで来た。
セバスが傷の手当をしているが芳しくないようだ。
こうゴブリンに攻められている状況、満足に治療ができる物でもないだろう。
「お母様の容態はどう?」と真面目な顔で聞く。
さっきとは別人の表情。その姿にラミーナを重ねて見てしまうセバス。
クロエ様大きくなられましたなと心で思う。
その間も近づいてくるゴブリンに向け拾った瓦礫で投擲を実行する。
「予断を許さないかと。」
「どいて、私が代わりましょう。」
「しかし、クロエお嬢様になにが・・・」と疑ってかかる。
「お願いセバス。私はただお母様を助けたいだけなの。代わってくれる?」
少し目を閉じて、クロエお嬢様にラミーナ様を託す。
この傷は助からない。お別れの時間も必要かと思い代わることにした。
「それでは私はその間、お二方を守らせてもらいましょう。」と短剣を両方の手に持ち二刀流でゴブリンの相手をする。
「ここから先は地獄行きですよ!」近づいてくるゴブリンに片っ端から刃物を向ける。
一振り二振りするだけでゴブリンが倒れていく。
「まだまだ現役でもいけますかね?しかしあれの相手は出来そうもありませんが・・・。」
「むっ。」と弓を構えるゴブリンの姿が見える。
その向かう先は旦那様とタルタロス。
しかしその前に投擲によって沈む。
どこかの誰かがやったようだ。
「むっ、ポルルか相変わらずどこにいるかわからないですね。あとでお礼を言っておきましょう。」
「近くで近接戦闘なんて柄じゃないからな。」と言って少し大き目な石をポンポンとして投げた。見事命中してゴブリンを倒していた。
「ヒット!」と言ってふーと右手の人差し指に息を吹きかけていた。
ランドルとタルタロスは果敢にもゴブリンキングに挑むがまったく歯が立たない。
「くっそ!全然効いてないぞ!」
「どうすれば良いでござる!」と言って風切りを発動させるが、まるでそよ風のように受け止めている。
長期戦は不利だ。だが長期戦にならざるおえない。
二人とも肩で息をしている。
せめてここにノエノスか、ラミーナがいればなんとか戦えたかもしれない。
希望的観測かとランドルは首を振った。
一方クロエはラミーナお母様の治療にあたっている。
右手をラミーナの背中に当て、魔力を集めていく。
「大丈夫できる。私はやれる。」と言い聞かせる。
「傷を直すイメージ。傷を直すイメージ。」さらに集中する凄い汗を掻いているのがわかる。
それでもお母様を死なせるわけにはいかないと思う。
「ヒール。」と唱えた。少しずつ直していく。
いきなり全部は無理だ。
少しずつ少しずつでいい。
傷を少しずつ治すイメージ。
まだ慣れていないから・・・いやそんな時間はない。
お母様を死なせるわけにはいかない。
「ヒール、ヒール、ヒール。」と治癒魔法を連発して行く。
グッと疲れ、フラフラになる。
それでもまだもう少し、頑張れ私と鞭を打つようにヒールを唱え、傷が完全に塞がったことを確認して気絶した。
疲れるように眠るクロエを受け止めたのはポルルだった。
「・・・。信じられねぇーな。あそこまでの怪我を治せるなんてそんな奴がいるか?」
聖教国にいる僧侶とかそんなのが大ヒールなどが使えると言っていたが、こんな感じなのだろうかと思ってしまう。
ラミーナが息をしている。無事蘇生したみたいだ。
「ポルルしばらく二人を任せても良いですか?」と聞く。
「あまり働き過ぎるのは好きじゃないんだがな。」と応える。
「そう言ってもやってくれるのが貴女のいいところですよ。」
「ちっ、爺にそう言われてもうれしくねぇよ。ほらサッサッと行って来いよ!」と邪見に扱う。
「任せましたよ。」そう言って旦那様とタルタロスの元へと向かっていった。
「奥様は回復いたしました。」
「!!本当でござるか!」と疑ってかかるランドル。
「説明は後でします。」
「おう、そうしてくれ!」とタルタロスが応える。
「行くでござる!」
三体一でゴブリンキングと戦っている。
ランドルは心配事がなくなって切れが増している。
切れ味がいい刀で徐々にではあるが、ゴブリンキングを傷つけていた。
だがどうしても決定打に欠ける。
何か何か方法はないかとそれぞれが思っていた。
タルタロスが膝を付く。
長時間対峙したことにより疲労がピークに達したようだ。
「くっここまでか!」
「年でござるなタルタロス下がれ。」そう言うが流石に厳しいぞ。
セバスも短刀が折れ、瓦礫の投擲により気などをそらしていたが、ゴブリンキングの一撃をもらってダウンしている。それを庇う様にポルルが投擲しているがもう一度セバスに攻撃の目が向けばまずい。
ランドルは攻撃に次ぐ攻撃を行わないといけなかった。
「援軍は来ないのか?」と周りを見るが来る気配などない。
ここまでかと思ってしまう。
セバスに向けて行こうとするゴブリン達。
「くっそ多いな!まだ増えんのかよ。っち瓦礫がもうねぇ。爺さん。」
ゴブリンが短剣を瀬部素に向けて振り降ろす。
「セバス!」と思わず大きな声を出すランドル。
誰もがダメだと思ったが、そこに救世主は現れる。
がぶっとゴブリンの首に噛みつく子狼。
「ガガ。」と言ってゴブリンが倒れる。そこに剣を突き立てトドメを刺した。
「流石に4人は重くて動きずらいな。」
「お前は誰だ?」とポルルが聞いてくる。
「なに、冒険者の助っ人だ。」と応えておく無難だろう。
「それに一人知らない奴がいるぞ?」と背負っていた女達を見て言う。
「何を言っているんだ。」とよく見れば、確かに一人知らない奴がいる。
「?」と思って首を捻る。
ノエノスにスミンに、おまけにもう一人はフレイザ?
若返ってる!なぜ?俺のせいか?と戸惑うしかなかった。
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