呪いから帰ってきた少女
時刻は早朝と言っていいくらいだろうか。
パタパタと飛んで、ゆっくりと窓を開けて不法侵入。
まるで不審者のようだ。
いや、不審な竜と言ったところかな?
戻って見ればぐっすりと気持ちよさそうに眠る少女を窓際で見る。
後は何食わぬ顔で少女の横で眠りこければ今日のミッションはコンプリート。
そう思って、パタパタと眠い目を擦りながら目的地に向かって飛ぶ。
パタパタ。あれ?なんだか目的地に向かってないぞ?パタパタ。
首を傾ける。
よく見ると何かに掴まれている。
抱き上げられていると言っても過言ではない?
「捕まえたぁぁ。」そう可愛いイントネーションで言ってくる。
よく見るとメイドのスミンだった。
「ぎゃお。」眠たいんだが・・・と目を擦る。
「さっき喋ってなかった?」と笑顔で聞いてくる。
「ぎゃおお。」えっ、いや知らない。首を振りまくる。
内心汗だくになりながら、知らんぷりをする。
「ふーん、そうなんだ。あくまでそう言う態度取るんだ。」
恐い、恐いよスミン。
「ガオー!」助けてお嬢様貴女のペットがピンチですよ。
「もう食べられないよぉぉ。」とか言っている。
なにそれ病弱キャラじゃなかったの?
ダメだ思わず声に出してツッコミそうになる。
「ね、どういうことかな?」近い近い、まるで人を殺している目だ。
ああ、こいつスパイだったな。そう思うと笑顔が恐く見えてくるから不思議だ。
俺は観念した。
「ふー。」と息をする。
「?」と困惑した顔をする。
「・・・スパイのお前がそれを言うのか?」低い声で言う。
俺とスミンとの睨み合いが始まる。
「えっ竜が喋った。」その言葉を聞いて固まっている。そして驚いた顔をする。
なんだかこのメイドも面白いな。
キャラが濃いメイドばかりだなと思った。
「話しはまた今度にしてもらえるか?眠たいんだ。」驚いたまま固まっているスミンに語りかける。パンパンと腕の部分を手で叩いて起こそうとする。
ブーンとお嬢様が蹴りだした布団が被さる。
「えーっと今何があったんだっけ?」被さって暗くなっている布団から抜け出す。
「ぎゃお。」と一応そう答えておいた。
「そう、そうだよね喋るわけないよね。私疲れているのかな?」と頭を抱えて見せる。
俺をお嬢様の横に置いて、布団を掛け直してこの部屋を後にして行った。
大丈夫だろうか?ちょっと心配だが・・・眠気には勝てなかった。
「もぐもぐ。」とパンを食べている。
その姿に唖然としているフレイザ。
「おかわりー。」そう言うけど、フレイザが反応しない。
「フレイザ?どうしたの?」と聞くクロエ。
「はっ。えっ?クロエお嬢様体調は全然問題ないのですか?」そう思わず聞いてきた。
「あっ、うーん?元気かな?」と答える。腕もブンブン振ってみた。
「まぁ元気かな。」と身体を左右に動かしてみる。
その姿を見てわざわざ一回部屋を出て、ミコミを連れてくる。
「ちょっと、ちょっとミコミ何も、何も悪いことしてないのになにぃー?」と抗議の声を上げる。
そしてミコミの後ろから両方のほっぺたを抓る。
「いはい、いはい、メイド長ぉぉ、超痛いよぉぉ、痛いからやめてぇーやめてぇー。」とかほっぺを晴らしている。
「どうやら現実のようだ。」
「ひどーい、ミコミのほっぺがぁー、落ちたらどうするんだぁー。」とか腫れたほっぺを見てクロエが笑っている。
「なんだか食べ物みたい。」
「酷い、クロエお嬢様酷いぃぃ!ミコミのほっぺには可愛さが詰まってるのにぃぃ!」と抗議の声をあげる。
「ハハハ、ごめんねぇぇ。」と中々笑いが止まらない。
こんなに笑ったクロエをメイド長は一年間見ていなかった。
「本当に元気になられたんですね。」と涙を拭っていたりする。
「ミコミはどうしてここに?」とミコミが聞いてくる。
「フレイザ心配かけたね。」と笑って答えた。
「ミコミは?ミコミは?」ミコミはいつも通りだ。
こいつはクロエお嬢様を心配していたのだろうか?と疑問に思ってしまう程だった。
「はいはい、ミコミもね。」
「えーミコミはおまけじゃないよ!」と抗議する。
そんな姿もこの館のマスコットとして可愛いのだが・・・
「ほら仕事に戻りますよ。」とミコミの首根っこを掴まれズルズルと連れていかれた。
「ミコミはおまけじゃなーーーーーい。」と遠くから声が響いてきた。
まるでドナドナされていくように・・・
「ミコミはBBAなんかに屈しない!」抗議する大きな声がここまで聞こえてくる。
「あっミコミ死んだ。」クロエは呟く。
ドキバコドカ。
「誰がBBAやぁ、しばくぞ!」
「うわぁぁぁぁぁ、ごめんんなさぁぁぁい。もうしばいてるぅぅぅぅ!もうしばいてるからぁぁぁBBAやめてぇぇぇぇ。」
ドキバコドコ。チーン。
火に油を注ぐのが得意なミコミだった。
静かに冥福を祈った。
ああ世界が明るく見える。あの暗い苦しい世界から抜け出した。
「私は帰ってきたんだ。」と呟いていた。
その隣ではぐっすりと竜のテトが寝ていた。
グーっとなるお腹の音。
「おかわり持ってこなかった。」としょぼんとする。
「よっと。」竜を持ち上げながら、頑張ってベットから立とうとしてよろける。
久しぶりに立ち上がったせいだろうか、足の筋肉がまだ立つことになれていない。
少しずつ壁を支えになんとかドアを開けた。
本来専属執事のセバスチャンが起こすべきなのだ。
「妙齢の女性の部屋に入って起こすなど、紳士のするべきことではない。」と業務を押し付けられた。
「奥様失礼いたします。」
「あーーなにぃぃぃ。」と眠たい目を擦りながら、ベットから抜け出そうとする。
身体を前に傾けながら情けない姿を見せている。
完璧に見えるようにしているが朝に弱いし、色々それっぽく見えるように頑張っている姿だったり、3児の母親としては頑張っているんじゃないかと思う。
多少情けない姿を見せても許すべきなのかもしれない。
プラプラ揺れながら踊りだしながら、変な起き方をする。
酷い時など魔法をぶっぱなしそうになる時もある。
まったく世話が焼ける。
セバスチャンの野郎、絶対この魔法の攻撃受けたくないから断ったに違いない。
相手は王国でも屈指の魔法使い。
それを思うと私にしか対応が出来ないのだろう。
一度、寝ぼけて旦那様に攻撃していた時など笑いそうになった。
「笑ってないで助けろ!!」かなり必死な顔の旦那様。
それを時々思い出し笑いするほどツボに嵌ってしまっている。
「ぷっ。」とまた笑いそうになる私を許して欲しい。
今度クロエお嬢様にも話しておこう。と心に決めた。
寝ぼけ眼のラミーナ様を着替えさせていく。
着替え終わったらドアの前まで連れて行く。
「はい、気合を入れてください。」その言葉に反応するようにほっぺを両手で叩く。
「よっし!」と気合が入ったのだろう。
ドアを開けて外に出た。
「今日の用事は?」
「朝は家族の皆様で食事です。旦那様、クロエお嬢様、ライズ様は食事中でしょう。」
「そう。」と少し早足になっているのだろう。
「それと。」とクロエのことを報告するか悩む。
「どうしたの?」と聞いてくる。
「いえ、なんでもありません。」もしかしたらクロエの体調がよくなったのは一過性のことかもしれない、ぬか喜びさせてしまうと思ったら報告できなかった。
「おはよう。」と言って、テーブルに付く。
「お母様、おはよう~。」元気な声でノエノスが挨拶する。
朝から肉を取っている。なんでも領内でキラーモンキーの肉を持ってきた猛者がいるらしい。しかも冒険者ランクFだったときた。もうEに上がっているか、本来Aランクが倒すモンスターなのにである。
「早いとこもっとランク上げないとね。」と考える。
ギルド長がいなくなってどうなるかと思ったが、期待の新人が来て首の皮一枚で繋がったか?
よく見れば子狼にも肉を与えている。
「よしよし、フルフはいい子だね。」と言っている。
「わん。」犬のように鳴いている。狼じゃないの?
「まだその子飼っていいとは言ってないんだけど。」と反対をする。
ちょっと愕然とノエノスだが切り替えるように言う。
「いい子だよぉぉ、お母さんもモフモフするぅ?モフモフするぅ?」と持ち上げた子供の狼がの瞳が可愛く見えてくるから不思議だ。
「くぅーん。」その一言が決め手になる。
「ちゃんとエサは用意しなさいね。」と答えるしかなった。
「はーい。」と明るい声で答えてきた。
「・・・おはようございます。」
現在反抗期中の長男のライズ。
まぁ男の子にはそんな時もあるだろうと母親として優しい目で見ている。
だが本人はいつも以上に恐がっていたりしている。
「ヒィィィィ。」とか言っている。まるで般若でも見ているのか?
「おう、おはよう。今朝は早いんじゃないか?」と家の旦那のランドル・フォン・ラドルガが声をかけてくる。
「そうかな?いつも通りだと思うけど。」
「そうかぁ。」とちょっと恐がっている。そんなに怯えなくていいのにと小突いてやる。
「ぐふっ。」と腹を抑えるオーバーな反応を返すが大袈裟なのだ。
「死、死ぬー。」とか言っているが、演技、演技。
「おはよぉー!」
そんな家族の団欒にゆっくり歩きながら元気な声をかけてくる次女のクロエ。
病弱で可哀そうで、ベットから抜け出す事ができない。
思い出しただけで涙が溢れてくる。
思い出さないようにしていたのに・・・幻が見える。
「えーん、クロエぇぇぇクロぇぇぇ。」とテーブルの上で泣き出し始める。
「クロエ。」と目を閉じて妹のことを思うノエノス。
ライズは天を仰いでいた。
ランドルは考えないように朝ご飯を食べ続ける。
「お腹減ったぁー。パンちょうだぁーい。」と明るい声が響き渡る。
「?」とばっと顔を上げるラミーナ。
「?」とノエノスも目を開け、なんでここにいるのと戸惑う。
「?」驚いて固まるライズ。
「ああ、おはようクロエ。」と普通に答え飲み物に口を付ける旦那。
4人が状況を把握する。
「ぶっ。」とまず旦那が飲んでいた物をライズに吹きかけてしまう。
一瞬遅れて、驚いた顔をする。
「お父様、汚なぁー。あはは。」と言ってくるクロエ。
「「「「はっ、はぁぁぁぁぁぁー。」」」」4人の声が屋敷中に響き渡る。
ノエノスが走って駆け寄り、先に駆け寄ろうとした兄をぶっ飛ばす。「グフっ。」と言って壁に埋まっていた。大丈夫だろうか?一応兄なので心配する。
「あんたぁぁ病気わぁー。」とノエノスが問い詰める。
「クロエちゃん身体は大丈夫なの?大丈夫なの?」ラミーナにも詰め寄られる。
「治ったぁ!」とあまりにもあっけない明るい顔で答える。
それを立ったまま驚いた顔をするランドル。
「奇跡が起きたのか。」と泣き出し神に感謝していた。
クロエに抱かれている俺は未だ泡沫の中だった。
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