バレンタインの勝者は・・・
辺境伯家ラドルガでもバレンタインの戦争が始まろうとしていた。
チョコ料理は戦いとエプロンを巻くスミンとフルフ。
「ふっ今日こそは引導を渡してやる。」
「それはこちらのセリフです。」と互いに競い合いながらチョコを作り始める
「どちらがテト様に満足したチョコを出せるか勝負です。」
「望むところです。」
「何それー面白そーう。」とそれに混ざるように参戦してくるクロエ。
「クロエ様?流石にクロエ様はどうかと・・・。」
「そうですよ。ここはお姉さんに任せるのです。」
「でもーおもしろそうなのにー。」
「ならば見ている事です究極のチョコを見せてあげます。」
「おい、お前それは何を入れているんだ?」
「これ、これは唐辛子です。」
「はっ?どこの世界にチョコに唐辛子を入れる獣人がいるんですか?」
「ここにいるじゃないですか?」
「ねぇそれって何入れてるのー?」
「これは隠し味のワサビです。なんでも東方の珍味らしいですよ。」
「へぇー。」と舐めてみるクロエ。
段々と顔が青くなっていく。
「水ー水ー。」とこの部屋を天井からあちこち駆けずり回って、水を探し求める。
そこにスミンが水を差し入れ事なきを得た。
「そっ、それはーテトにはやばいかなー。」
「ちっちっち!甘いですね。これこそが辛さのハーモニーを奏でる醍醐味。」
「まだ何か加えるんですか?」
「じゃーん超絶辛口宇宙への旅スパイスを加えます。」
「おい、そんなものテト様に食べさせようとするなんて!」
「ふっふっふ。まだこんなもの私の味覚に言わせればまだまだです。」
「なんて恐ろしい奴なんだ。」
「すごーい、すごーい。」と褒めるのはクロエ。
「ふふん。」とドヤ顔をするフルフ。
「これで私の勝ちは確定です。」
「くっ私も負けるわけにはいかない。」
チョコに色々なものを足していく。
「一体何を入れてるのー?」
「これは美味しさを極限まで引き延ばす調味料。」
「へぇー。」と興味深そうにしてスプーンで食べてみる。
固まって倒れたクロエ。
「むっ。いや、これは本来食材と混ざることでうまみ成分がますと言われている。チョコに混ぜればそのチョコの甘味成分が活性化して蕩けるような甘味になるはず。それにこのスミン特性隠し味、悪戯の極致を入れて。」
「いやダメでしょう!そんな調味料聞いたことないです!」と抗議するフルフ。
「まさか、弟を亡き者にして死体を愛するタイプの愛ですか?やめてください!テトは生きてるから可愛いのです。」
「何を言っているのですか?私がそんなことするわけないではないですか?」
「じゃあ、それ食べてください!」
「バカ言わないでください、一番に愛する旦那様に食べていただくことこそメイドの喜びであるはずです。」
「勝手に弟を夫にしないでください。それにコイツヤバイ。」と引くレベル。
「貴女に言われたくないですね。」
「ぐぐぐ。」
「ぬぬぬ。」
この戦いはくそまずいチョコ対激辛チョコの戦い。
そんなやり取りを見て今日この日、己の命を守るためテトは逃げることを決めたのだった。
辺境伯領の男達はこの日殺気立っていた。
なんせチョコをもらえるかもらえないかで男の扱いは変わってくる。
いわゆる、己がモテるかモテないかのレッテルを張られる日なのだ。
モテない男たち特に冒険者の男どもにとっては死活問題だった。
「いいかミオンさんが作ったチョコには限りがある。俺達はそのチョコを手にするかが大事になってくるのだ。」
「ああ、もらえるかもらえないかで、冒険者としてミオンさんにどう評価されているかわかるだろう。」
「よし、俺が一番先に・・・」
「いいや俺だ。」と殴り合いの喧嘩になりそうな雰囲気。
俺ヘイロンはそいつらの横をすり抜けるように受付嬢ミオンの元へと向かう。
「また、見回りでいいか?」
「はい、大丈夫です。それからこれを・・・。」と恥ずかしそうにチョコを渡してくる。
「ああ、ありがとう。」どうせ義理だろうと思う俺。
「ゆるせねぇー!」
「例え呪いの鎧さんでもー!」と俺の後ろに並んでいる冒険者から殺気が感じられる。
「はいはい、、皆さんの分もありますから。」
「俺が先だー。」と争うように向かって行く。
それを捌くミオンは強くなっている。なんでもフルフと仲がよくなって・・・
「私の眷属にならないか?」とグラさんをずらしながらミオンを眷属にしたほどだった。
よほど気に入ったのだろうこれからも仲良くして欲しいものだった。
「さて、できましたか。」
「ふふふ、これでテトもお姉ちゃんの魅力にメロメロです。」
その横で二人のチョコをつまみ食いしたクロエが倒れて魂が抜けている。
二人の目線が火花を散らす。
「ここからは勝負です。」
「負ける気はありません。」と走り出す。
テトにとっては鬼が二人追いかけてくるような者だった。
ぞくっと悪寒を感じてここを早く離れなければと移動を開始する。
クロエはなんとか机に手を置き、起き上がる。
「天国のーお父さんお母さんが見えた気がするー。」注、二人とも健在です。
それからつまみ食いをしながらもチョコを作っていくクロエだった。
「はい、これ。」とラミーナがチョコを渡してくる。
「ああ、ありがとう。」と感謝を伝えるランドル。
「どうした?」
そこでいつまでも出て行かないラミーナを不審がる。
「なんでもない。」と言ってこの部屋を出て行く。
「?」と思ってチョコを開ける。
「これは・・・。」とハートマークのチョコに愛しているわ貴方♡と書かれている。
また義務的な書き方だ。
「本当に愛しているのか?」としょせん政略結婚、それに妻と私では寿命が違う。
もしかしたら一時的な気まぐれなのかもしれないと思ったことも数えるほどある。
私もそんな妻に愛想を尽かしていいはずなのに・・・なぜかそんな気が起きなかった。
そのチョコを味わって食べる。
「美味しい。」と思わず呟いてしまう。
そのドアの向こうに静かにガッツポーズをしているラミーナがいるとも知らずに・・・少し微笑んでスキップ気味に自分の執務室に向かう。
執務室に入る。
「よっしゃー!」と防音をして叫んでいる。
そんな姿、絶対に夫には見せないのだった。
狩猟の様に追ってくる足音がわかる。
俺は己の身の危険を察知して逃げる。
「ふふふ、お姉ちゃんは逃がさないですよ!」と目が光輝いている。
「げぇー見つかった!」
「ふふん、はーいあ~ん。」と赤黒く染まった燃え滾るチョコを見る。
「フルフさんや、それは一体?」
「これは激辛ブラコンチョコ!テトの事を思って必死に作った愛すべきチョコなのです。さぁさぁ、覚悟を決めてください。」
「絶対にやばいってわかってる奴じゃないか!」
「このくらいは食べてくれるよね。」とウソ泣きしながら言ってくる所が・・・フルフらしい。
「うっ。」と壁際に追い詰められる。
「そんなもの食べさせるんじゃない。」と近づいてくるスミン。
「はーいこちらのチョコの方が愛情たっぷりのスミンチョコですよー。」となんだか緑と青と紫と後なんか顔がぼこぼこ出ている。
これはあれだ死ぬ奴だ。
「さぁどっちを食べるんですか?」
「どっちを?」と迫りながらチョコを出してくる。
これはもう逃げれない奴だ。
俺は覚悟を決めて二つを一遍に食べた。
もぐもぐ。
「あれ、意外にいける?」二つのハーモニーが混ざり合って一つの完成された味に・・・
「生きててよかった。」と無事な事に涙を流す。
「むむ、これではどちらがよかったか。」
「わからないですね。」
「こうなったら・・・。」
「もう一度作るしかないですね。」と二人は猛スピードで駆けだして行った。
「皆ちゃんと食べてね。」
ノエノスは沢山のチョコをサンタクロースの袋みたいに背負って孤児院に来ていた。
それを少年たちに配っている。
「ふふふ。」と笑う。この世界で貴族に逆らうことは基本的にできない。
何人かの少年が震えている。
「はーい、あーん。」少年はその姿に恐怖を感じ取っているのか震えていた。
「ノエノス様、流石にそれはちょっと。」と苦言を呈するのは執事のセバスチャンだった。
「えーそんなことないよーでへへ。」とまたよからぬことを企てているに違いなかった。
「ノエノス様、流石においたが過ぎると教育いたしますよ?」と現れたのはフレイザだった。
「げっ、フレイザ。いつの間にこの時間はいないんじゃ・・・。」
「もしかして狙ってやってきたのですか?」
「そんなことないよ。」と首をふる。
「その性根叩きなおして上げます。」と久しぶりの師弟対決が実現した。
「いったいどこでこんなことを習ってきたのですか?」
「ごめんって。だって手に入れたいものがあるならどんな手を使ってでも手に入れる。それが私のモットーってショコラさんが教えてくれたんですよ?」
「あの人はまた。」と頭を抱える。
「身体に負担が掛からないようにちょっと汗をかきましょうね。」と外で二人の大剣がぶつかる。
その剣技に魅入られる者が何人かいたその一人が孤児のネオンだったりしていた。
その横ではチョコを食べたシオンがぐったりと寝ていたりしていた。
二人の戦いは続いたが、あまり続くのはよくないと止めに入ったセバスによってお開きになった。その時何人かの少年を連れ出そうとしたノエノスをなんとか止めるのに成功する。
「セバスとフレイザのケチ!」と言ってこの場を去って行くノエノスだった。
「流石に次は死ぬかもしれない。うっ。」とさっき食べたものがやはり身体が受け付けなかったか。テトの姿でバタンと倒れる。
「あーこんな所にいたー。大丈夫ー?」と木の枝でツンツンしてくる。クロエらしい。
伸びて動けない俺。
それに口を開けてぽいと小さいものを入れてくる。
「ちょこー、味見してたらドンドン小さくなってたーごめんねー。」となんだか普通のチョコに感動して泣けてくるテトだった。
「どうしたのー?」
「がおがお。」普通に美味しかった。
「そーお?ならよかったー。」と言ってにぱーとする。
俺を抱えて歩き出すのだった。
そしてこの日チョコをもらえなかったものは号泣して三日三晩泣き続けたという。
「せっかく私もチョコの準備をしてたのに来ないとかテトさんのいけずー。」と呟いているユカリがダンジョンの設定を元に戻そうとしていた。
「せっかく沢山用意してたのに誰に上げようかしら?」とテトの上に沢山のチョコが振ってきたのは後日の事だった。
「うぇーん、ミコミーミコミーのチョコはどこー。」と領内の遠い所で迷子になっていたりする。
そこに口を開けた大きな魔物がいる。
「ひぃぃぃぃ、ミコミはチョコじゃないよー。」と抗議するが聞くような魔物ではない。
そこに一発、身体を乗っ取って入れるゼアー。
「あーあ。助かっている。よかったー。ひぃーまたー。」と次々に現れる魔物から逃げ出すミコミ。
「やれやれ。」とそのうちの何体かを一瞬だけ身体を乗っ取って倒すのだった。
「バレンタインなんて、もういやーーー。」と泣きながら走り続けるミコミだった。
後日ちゃんと帰って来れた時にはボロボロだったという。
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