聖女だったご主人様
三人は正座をさせられている。
「三人とも、わかっているの。」
「はい。」
「・・・。」
「ミコミ悪くないよぉぉぉ。」震えながら懇願するミコミ。
それぞれが反応するが頭を抱えるラミーナ。
「はぁー。ノエノスは反省しているからいいけど、ライズはこの領地を継ぐんだからもっとしっかりしてよね。」と頭を抱える。
将来この子は大丈夫だろうか?
病弱ではあるがクロエは将来この領から他の領に嫁ぐことは決まっている。
もちろん完治しないと嫁ぐことは出来ないだろうが、恐らく第三王子に嫁ぐんじゃないかと言われている。そうなったら恐らく側室だろう。
そんなことになった時シスコンのライズは黙っていられるだろうか心配だ。
「努力はしている。」と答えるライズ。
「まぁ学園ではいい成績出しているから良いんだけど、妹の前でポンコツを披露するのはどうなの?」
「うっ!」と痛い所を突かれて、縮こまる。
「もう、しっかりしてよね!」
「はい。」と有無を言わさぬ声にそう答える。
「それからちゃんと結婚相手も見つけてきなさい。」
「なぜぇぇ!」と絶望した表情で聞いてくる。
「あのね妹が好きなのは良いけど結婚は出来ないわよ。」
そんなことを聞いて愕然としている。
トドメを刺してしまっただろうか。
まぁいい。
「それからミコミ。」
「はい。」ラミーナに睨まれて、身体が震えている。
まるで蛇に睨まれたカエルのようだ。
「私が悪かったです~。」と土下座する。
「あれなんでミコミここにいるの?」
なぜ正座してここにいるんだ?と考えるラミーナ。まぁいつものことかと思い。
「三人ともしっかり反省するように。」と命令した。
「ノエノスはまだ部屋で休んでいなさい。」
体調がまだ悪いと聞いている。
「はい、お母様。」と答え立ち上がった。
「えっえっ。」とミコミとライズはノエノスに付いて行こうとする。
「ライズとミコミはまだ反省していてね。」と恐い顔で言われ泣き出してしまうミコミ。
「えーん、ミコミ悪くないのにぃぃぃぃ。」そんな叫び声が館内に響き渡っている。
前夜に外出していたせいだろうか、ぐっすりと眠り起きた時には夕方だった。
お嬢様はゆっくり寝ている。穏やかなものだ。
俺はもしかしたら夜型なのかもしれないとか思いながら、ぐぅーとなっているお腹の音に逆らえずアイテムボックスから出したキラーモンキーの肉を食べ始める。
そして何処からその匂いを嗅ぎつけたのか、白い狼の子供が一緒に食べていたりする。
まぁいいかと思いながら、一緒に食べた。
「むしゃむしゃ。」
「もぐもぐ。」
あまり恐がっている気配はないが、こいつ俺にも懐いているのか?
「わん。」とか言っている。狼なのか犬なのかわからなくなってきているぞ?
まぁいいか。
食べ終わったかと思うとぐぅーと言う音が鳴る。
子狼はまだ食べたりないようで下を向いている。
仕方ない、とアイテムボックスからまだあったモンキーの肉を出して与えた。
「わん。」と感謝する声が聞こえる。
「ぎょお。」と答えておいた。
流石に館の中で喋りだすモンスターなんて恐がられるだろうか?
この館の面々を思い出して考え、意外に普通に受け入れられそうで恐いな。
食べ終わったのか出ていくフルフ・リザートと鑑定で見れば名付けされている。
フルフが名前か?下の苗字が付いているあたり、レアモンスターなのだろうか?と勘違いした。フルネームが羨ましいと思ってしまう。
「わん。」
最後にありがとうと言って出て行った。
まぁ舎弟が出来たとでも思っておこう。
もう辺りは真っ暗になっている。
「うっうっ。」とうめき声が聞こえる。
よく見れば主人のクロエの様子がおかしい。
身体を搔きむしるように何かに絡みつかれているように見える。
これは蛇か?まぁ呪いと言ったら蛇だけど。
まるで透明化している。幽霊の類だろうか。
「はぁはぁ。」と苦しそうな声をあげるクロエ。
これはどうしたらいいんだろうか?
クロエのレベルは20になっている。
これは悪くないと思う。
ステータスは軒並み朝よりも下がっている。
呪いの状態が(強)になっており、まるで今この瞬間殺してしまおうとする悪意に満ち溢れているのではないだろうかと思ってしまう。
〝一体誰がかけた呪いなのだろうか?〟許せるようなことではないな。
そして下まで行くと、職業に聖女と書いてあったりしている。
聖女、クロエが聖女?おいおい勇者とか出てくるパターンじゃないよね?
そんな面倒くさいことに巻き込まれるかもしれないと思うと頭を少し抱えた。
ほう、回復魔法のヒールや、エリアヒールなんかを修得しているようだ。
それに解呪の呪文もあったりするが、これ本当に呪文かと思ってしまう文言だったりする。
「まぁ俺が知ったことではないか。」独り言を思わずつぶやいてしまう。
日本の後ろ脚で立つ。
若干よろけるがバランスを取りながら、クロエのもとに向かっていく。
動き自体はしっかりしている。元の人間の感覚を取り戻してきているのかもしれない。
クロエの額に手を置く。
「おい、聞こえるか。」言葉に出しているが直接クロエの頭に囁きかける。
クロエに触った瞬間から呪いの蛇が近くにいる俺に噛みついてきたが、その歯はかけている実体がないはずなのに、影響が出るのか?よくわからないな。
「おい、聞こえているか聞いているんだ!」強い口調で言う。
本来優しく声をかけるべきなのだろうが・・・
「だっ、だれぇ。」と苦しいのにかすれ声を洩らす。
目を開けられると困るから近くにあったハンカチを目に被せる。
「助かりたいか?」
「はぁはぁ。」さっきよりも苦しそうだ。
「助かりたいか?」と聞いている。
「たっ助かりたい。」
「なぜだ?」思わず聞いてしまう。
「お母様やお姉様、お父様に屋敷の皆に、ありがとうって言いたいから。」
恐らくそれしか思い浮かばなかったのだろう。
兄の名前がないのが気になるが、まぁさっき嫌いって言っていたしなと納得する。
いい子だな。
「ならば呪文を唱えよ。」
「じゅ、呪文?」わかっていない顔をする。
「そうだ。まずは・・・。」恥ずかしい言葉のようにぼそぼそと発言する。
「きっ、聞こえない。」と答えてくる。
「だからぁぁごにょごにょ。」
「き、聞こえない。」苦しそうに言っている。
「ピュアだと言っている!」
この言葉を俺に言わすとは異世界許すまじと思ってしまう。
廊下に聞こえていたかもしれない。
頭を抱えた。
「それを唱えればいいんだ。」もう投げやり気味だ。
「えっと。はぁはぁ。」と戸惑う顔をする。
「ピュアだ。」と頭を抱えながら言った。
「ピュア。」と唱えるようにクロエが言うが何も起きない。
「魔法の発動するイメージが足りないのか?いや、魔力がめぐっていないのか?」
生まれた瞬間からある程度自分の中でめぐっている魔力。
その存在を目から感知することができる。
魔力をクロエの額からゆっくりと流していく、人とモンスターではもしかしたら回路の流れが違うのかもしれない。
「これはなに??」と戸惑う声をあげる。
恐らく魔力世界なるものを見ているのではないかと思う。
目を閉じているから身体への魔力の流れを見ることが出来ているのだろう。
若干見えている呪いの蛇が押されているのかもしれない。
「唱えろ、身体から悪い病魔を追い出すイメージでピュアと唱えるんだ!」
そう言って魔法の呪文を促した。
「ピュア。」クロエの口からその言葉が漏れると身体が光り輝く。
追い出されないようクロエにしがみつこうとする蛇。
「ギュェェェ。」と言う声と共に実体化した蛇がこの部屋の空間に現れた。
呪いの解呪の呪文ピュアにより大蛇の皮膚は大分焼きただれている。
俺は呪いの大蛇の頭を殴った。
「ぎゃああぁぁぁ。」と言う声をあげてぶっ倒れた。
「出たか、親玉。」と臨戦態勢で声をかけるが・・・
「あれ、よっわ。」と不完全燃焼の拳。
「まぁいい。」とこの蛇の死体をアイテムボックスに入れた。
周りの血だまりをどうしようかと思ったが、まぁ今はそれよりも。
鑑定を使えば呪いの状態は解呪されているが、クロエのHPは未だ戻っていない。
ゲームで言う赤ゲージだったりする。
誰かの攻撃を一撃もらえば死んでしまうだろう。
また再び額に手を当て、念じる。
「おい、聞こえるか。」
「はっ、はい。」と赤くなっている顔で答える。
「今度はヒールだ。自分の体力を戻すイメージだからな。」
「ヒ、ヒール。」と唱える。
また身体が光、体力が回復していく。
そして、穏やかな寝息が聞こえてくる。
一連の流れが成功したことによりホッとする。
「まったく世話が焼ける。」
手をグーパーして、なんだか暴れたりなさを感じる。
俺もモンスターになってきているのだろうか?
まぁいいかなと思って、そのまま窓から外へと飛び出した。
その様子をドアの向こうで見ている人物がいることに気付かずに・・・
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