ノエノスの子狼
「あれ?ここって?」と寝ぼけ目で起き上がる。
どうやらいつの間にか自分のベットにいるようだ。
衣服も着替えてラフなものになっている。
「くぅーん。」という声が聞こえる。
なぜかベットの上には子狼の存在がいた。
思わずその子を撫でてしまう。
私は何をしていたんだろう?と頭を捻る。
コンコンという音がする。
「失礼します。」
「どうぞ。」と返事をする。
入ってきたのは、フレイザだった。
「ノエノスお嬢様、体調は大丈夫ですか?」
私の顔を覗き込み、額に手をやって熱がまだありそうなことを確認する。
「まだ安静にしていないとダメですね。」
ニコッと笑ってフレイザが語りかけてくる。
「わ、私なら大丈夫です。」と答えるが・・・
「最近出かけておられて、戻って来られておられませんでしたね。」
ギロッと睨まれる。
背中がぞくっとしたような感じだ。
なんでもフレイザは若いころは、王国の剣と言われていたほどで私の剣技は彼女に師事して得たものだったりする。今はこの領でメイドをしているが、なんでここにいるかわからない。
その修業は過酷を極めたが、なんとか乗り切り王国では彼女の後継者と言う位置づけを得ている。だけどこの領地の開発と家族への思いからここに残ると決めている。
「・・・妹の病を直すための薬草を探していただけです。」と睨みつける。
その眼光は鋭く喧嘩を売っているようなものだった。
「そうですか。クロエお嬢様の件でしたら、今は何ともと言ったところでしょうね。」
淡々と答えるフレイザに唇を噛むような泣きそうな顔をする。
「はぁー、貴女は私の娘のような、それでいて弟子のような不思議な関係ですが、こちらも何もしてないわけではないのです。お母様は方々に妹様の病状を解決しようと手を尽くしておられる。私も旧友に聞いています。」
「・・・。」
「一人で病と戦うのは大変な事です。貴女はクロエお嬢様の元気を取り戻す手伝いをして欲しいと、私もラミーナ様も常々思っていたのです。これからも妹様の話し相手として、元気になる手伝いをして欲しいのです。」
その真剣な表情にノエノスは頷いて答えるしかなかった。
「でもぉぉ、悔しいよぉぉ。」と泣き崩れるようにベットに背中を預けながら腕で目を隠すように答えた。
「くぅーん。」と鳴く子狼が元気を出せと言っているように見える。
そんな時、ドボン!なんだか大きな音がした。
きっと弟が何かまたバカをやらかしたのかもしれない。
やれやれだ。
「今まで聞かなかったけどなんでこの子ここにいるの?」
「・・・その狼はお嬢様をここに連れてきてくれましたよ。身体が小さいのに、貴女を守ろうと私達を威嚇するほど、懐いておられるようですけど。」
「そうなんですね。ありがとう。」と優しく狼を撫でた。
撫でられるのが気持ちよさそうにしている。
それを優しそうな顔で眺めるフレイザ。
一通りその癒される光景を眺めて一言。
「後でラミーナ様が話があるそうなので言い訳、頑張ってくださいね。」
その言葉に絶望的な表情をしてフレイザを見る。
「えっなんで?何か悪いことした?」と思わず聞いてしまう。
「私はワイルドなのは嫌いではないけど、貴女の服についていた血について話がしたいそうなのでよろしく!」最後に師匠ぽく言ってこの部屋を出て行った。
出て行ったドアを見ながら、現実逃避気味に子狼を撫でる。
「一緒に怒られてくれる?」と子狼に恐い顔で聞いてしまい引かれてしまう。
「この子の名前を考えないとな。」
そんな風に思いながら、自分の身体の違和感に気付いた。
身体に空いていた穴が塞がっている。
あの熊と戦ったのは夢だったのかと思ってしまいそうになる。
「それになんだか少し強くなったような?」
力がなんだかいつもの倍になっているような気がする。
気のせいだろうか?身体の様子を調べると右の掌になんか竜のような紋章が出来ていたりする。
「?」と言う顔をする。
「まぁいいか。」とそれを隠すように手袋をすることに決めた。
コンコンと叩く音がする。
「はいどうぞ。」と寝ながら答える。
「ご飯をお持ちしました。」
そんなことを言ってミコミが恐る恐る入ってくる。狼をこわがっているのかな?
震えながら、ベットの前に置かれた机に食事が乗っているおぼんを置く。
それをゆっくりと食べ始める。
パンとスープでそこまで良い食事ではないが、この領の状況なら仕方ない。
中々肉も手に入らなかったりするから・・・この子狼の食事どうしようか?
バクバク食べる。
名前どうしようか?
「オオカミドンとかなんか食べ物の名前っぽいし。うーん。」と考える。
「あの、あのぉ。」と必死に何かをアピールするように声をかけてくるミコミ。
「どうしたの?」笑顔で聞く。
「ひぃぃぃぃぃ。」と思わず悲鳴をあげてしまうミコミ。
彼女にはその笑顔が般若のように見えていたのかもしれない。
なぜなら、迷いの森でモンスターに殺させようと企んだ張本人だからだ。顔から手から全身からの汗が尋常ではなかったりする。
当の本人は実はあまり気にしていなかったりする。
むしろ教えてくれて感謝している。
そんな状況なのだ。
この気まずい空間。
「ミコミも子狼の名前を考えて!」となんだか明るい声で聞いて来る。
そんなノエノスの様子を見てミコミは・・・
「お前、この子供の狼の名前、良い名前考えられなかったらわかっているだろうな?」ゴキゴキと手を鳴らしているように深読みしてしまって縮こまる。
そんな風に聞こえてきて震えあがる。
「どうしよう、どうしよう。」と考える。
慌てふためくさまも。
今日も小動物のように可愛いねと思いながらミコミを見るノエノス。
ハッと何かを閃くように言葉を発する。
「リ、リザートなんてどうですかぁ?デザート見たいで良いかなぁ~?と思うんですけどぉ。」
遠慮がちに聞いてくる。ノエノスお嬢様はきっとこの狼を太らせて大人になったら美味しく食べるに違いない。そこから考えてデザートみたいな味がするはず。
我ながら完璧な名付け。うんうんと思うこれでこの間お嬢様を罠にかけてしまったことはチャラになるはず。
子狼はそんな呆れたことを考えているミコミを睨んでいる。
「そうね。リザート、この子、結構白いし雪みたいだから、魔法のブリザードから取ったのね。」
「えっええっ?」とノエノスの反応に固まる。
違うけど今はこの波に乗らざるおえない。
「そう、そうなんです。ミコミもそう思っていたんですよ。」
よし結果オーライ。ミコミの取り入り完璧な作戦。
これぞスパイが成すスパイらしいこと。目が一瞬光った。
「うん良い名前。気に入ったよ。この子はリザード。フルフ・リザートにしよう。」
「えっ!苗字付けちゃうんですか?ミコミも持ってないのに!!ガルル!」
なんだかミコミが怪獣のポーズでリザートを睨みつけていた。
フンとミコミの睨みを知らんぷりしている。
「私が先輩なんだからな!」と捨て台詞を吐くミコミ。
貴族には恩義を受けた人や、動物などに苗字を付けて報いる風習がある。
「フルフ・リザートよろしくね!」
「くぅーん。」と答えた。
ノエノスが食べ終わり食器を下げようと持って行こうとしたミコミ。
「あっミコミ。お願いがあるの。」
「なんですか?」そう言って聞く。罠にかけたことなど忘れているように。
「一緒にお母さんに怒られようね?」
「えっ?」
「怒られようね?」
思い出した多少の罪悪感を持っていたミコミは受け入れるしかなく。
ノエノスの(道連れを増やして怒り分散策)迫力に膝から崩れ落ち、天を仰いだ。
「ミコミの伝説は終わった。」
そんなわけのわからないことを聞いて、ノエノスは一緒に怒られる道連れを得て笑顔になった。
「オン。」ちょっとミコミに同情したリザートだった。
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