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プロローグ

 目を開く瞬間どんな気持ちになるだろうか。希望や期待に胸が高鳴るのか。もしくは先が見えない不安や絶望に息がつまりそうになるか。

 実際は、何も思ってないかもしれない。だって自分はここにいる。



「はっ?ここどこだ」


 神秘的な青く光る天井と、白い壁と床の部屋だった。そして同じように困惑している人と、眉間にシワを寄せた見知った魔王。赤い髪に火が着いていて、冒険に不釣り合いな白い服は炎の魔王しかいない。そして視線に気がついたのか炎の魔王が、こちらをみて大きな溜息を吐いた。


「エーなんでいる」

「お前こそ出不精なのになんで」

「ゲーム達成感で目を閉じたらここにいた」


 炎の魔王がお前も話せと目で訴えかけた。特別な理由は何もない。


「討伐依頼で負けて気がついたらココだった」

「いつも通りだな」


 確かに炎の魔王の言う通りなのだが、やはり腹が立つ。


「まぁ、些細なことだな。協力者がいるな。他の連中で知っているのはいるか」


 炎の魔王に言われて見渡せば知り合いや、噂でしか聞いたことのない連中がいる。


「やたらと勇者と魔王がいるような」

「おそらく全員勇者もしくは魔王だろうな。一部どちらかわからないのもいるようだ」

「どちらかわからないってどういう意味だよ。痛っ」


 金色の勇者が足に痛みを覚えて下を見れば小さいもふもふな生き物が明日に噛み付いている。足を振り払えばいいのか、もしくは説得できるのか頭が混乱する。


「蛮の魔王、そいつはよく死ぬ馬鹿者だからその程度では反省せぬよ」


 蛮の魔王は、炎の魔王に視線を向けた後に噛みつくのをやめた。足に血は出てないようだが痛かった。


「このでくのぼうは、おれが声をかけているのに知らんぷりした!」

「前しか見えないからな。あと10年すれば多少ましになるだろう」

「10年経って多少まし扱いなのかオレ」

「あくまでよく見積もって10年だろうな。最悪一生治らんだろう」


 なぜかいつも以上に炎の魔王の言葉が辛辣だった。優しい言葉をかけて欲しいとは思わないが、このよくわからない状況で協力する姿勢くらい見せて欲しかった。


「あのー、すみません。金の勇者さんですか」


 声をかけてきたのは、紫色の勇者の証がついたチョーカーをした男だった。自分を知っているようだが知り合いにこんな男はいなかった。 


「そうですけど、俺とどこかで会いましたか?」

「俺は、集厄の勇者っていうんです。その……俺もよく死んでてこんなに女神の間に来る勇者なんて自分だけだろうと思ってたんですけど。俺以上に金色の勇者さんが来てると聞いて」


 女神の間の常連だと話したのは誰だろうと考えれば天使が怪しい。金色の勇者として問い詰めたい所だが何よりも脱出が先だろう。


「俺うっかりで死んでて、金色の勇者さんが勇者らしく戦ってまた頑張れるのがすごいって思うんです」

「そうかな」


 褒めているのだと思うのだが気持ち的には複雑だった。


「今回も宿で泊まっている時に金縛りにあって気がついたらここにいて」


性格は、悪くなさそうなのだが直感的に知り合いになるのは遠慮したい気がする。


「金縛りにあってって簡単に言うが普通ないぞ」

「なんか厄介ごとが集まることが多くて……」


 金色の勇者は、集厄の勇者に妙な親近感を覚えた。


「厄介な者がいるな」


 炎の魔王が苦々しげ呟くが聞こえて視線を上げれば柔和な笑みを浮かべる男性がいた。魔法使いが好むローブを着ているため魔法使いだろうかと推測する。だが炎の魔王が厄介だと呟くような人物には、全く見えない。


「私の顔に何かついてたかな。金色の鎧の勇者君」

「金色の勇者です」

「覚えやすくていいね。私は透輝の勇者。おにーさんでもいいよ。よろしく」

「よろしくお願いします」


 他の人物は、どんな人なのかと注意を向けた時にクラッカーでも鳴らしたかのような破裂音が部屋に響いた。それぞれが己の武器に手をかける。一触触発の空気なのだが舌っ足らずな声が天井から聞こえた。


「ぴゃあ、待ってくだしゃーい。イクシュは、この脱出ゲームのゲームサポートでしゅ。倒さないで欲しいでしゅよ」


 小さな黒羽と鹿の角が生えている赤ん坊だった。おむつに蝶ネクタイは、誰の趣味なのだろうか。


「ゲームサポートなら早く説明をしろ。帰ってやることがある」


 炎の魔王は、真面目な顔で聞いているがたぶんやることというのは新作のゲームだ。


「あい! これかりゃ皆しゃんには、各部屋でお題にチャレンジしてもらいましゅ。お部屋は、全部で十部屋で、入った部屋のお題をクリアしゅると次の部屋に行けましゅ」


 ダンジョンでよくある構造でありお題がクリア出来なければ永遠に閉じ込められると思われる。


「一ついいかな」

「あい、透輝の勇者しゃま」

「勇者は、死亡した場合女神の間にいくことになるのだがこの場所でもそれは適応されるのかな」


 確かに勇者だけ脱出するならば使える手だった。最悪女神の間で他の勇者に助けを求めることも出来るだろう。


「答えは、いいえ。死亡した場合、今いるこの部屋に戻されましゅ。魔王も同じでしゅね」

「へぇ、それは面白いですね。どんな理を適応すればそのようになるのか。教えてもらえたりするのかな」


 狐に似た耳と尻尾のある人物が興味深いと呟きながら問いかける。この人物は、先程誰とも話さず観察していた。

 

「百の魔王しゃま、それは答えられましぇん」

「そうですか」


 百の魔王は、特に残念そうな様子も見せず手元の本へ視線を移した。


「それから皆しゃんには、なんと!それぞれ助っ人の勇者もしくは魔王を二回喚べましゅ。でも同じ部屋で二回喚べましぇん」

「では同じ人物を異なる部屋で二回喚べますか?」


 目元を黒い布で隠した品の良い少女がおっとりと聞いた。金の勇者には、彼女が勇者か魔王か見分けられなかった。


「読心の勇者しゃま、それも出来ましぇん」

「私、勇者や魔王のお知り合いが少ないのですがどうしましょう」

「ねぇ、これ面倒だから帰りたいんだけど」


 さっきから寝ていた少女?が不機嫌そうにイクシュに尋ねる。少女の機嫌に呼応するように水が激しく振動する。


「蒼の魔王しゃまのおっ、脅しにはくっしましぇん! 皆しゃん協力して脱出してくだしゃい。最初の部屋はこちらでしゅ」


 いつの間にか両開きで開く木製の扉が現れた。普通の扉にしか見えないが逆に胡散臭く見える。それにまだどんな人物なのかわからない人達もいるため、金色の勇者は率先して動くことに躊躇した。


「モタモタするな。早く行け」


 さっきまで黙っていた炎の魔王の蹴りは、金色の勇者の背中に当たり盛大に転ぶ。慌てて掴んだのはドアノブと助けようとした集厄の勇者の手で二人して扉の向こう側に落下したのだった。



【プロローグ 完】

登場人物

金色の勇者:金色の鎧を着た勇者だよ。常識人枠

炎の魔王:火が得意な魔王だぞ

集厄の勇者:なんか不運な勇者らしい。不憫

透輝の勇者:なんかすごい魔法を使う勇者。おにーさんって呼んで

百の魔王:いろんな魔獣になれるらしい楽しみ。モフモフ

蒼の魔王:水が得意な無口な魔王。可愛い


イクシュ:ゲームサポートの赤ん坊。舌っ足らず

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