23.絶望②
ボキッ…。
何かが折れる音と同時にロザリンの右足が有り得ない方向に曲がり、バランスを崩し勢いよく倒れる。
最初は何が起こったか分からないでいたロザリンだったが、自分の痛む足に目をやり叫び出す。
「ぎゃあああああ。あ、足が、なんでよーー。ヒッヒー、痛い!助けてーー!」
何もしてないのに突然足が折れるなど有り得ない。
俺の方に目を向け誰もが何が起こったか理解する。使用人達は魔術師の怒りに巻き込まれることを恐れ、一斉に温室から我先にと逃げ出す。
侯爵夫妻は腰が抜けたのか這いずりながら出口を目指そうとするが、走って逃げる使用人達に踏まれ前に進むことが出来ない。
すぐに温室の中には動けないロザリン、侯爵夫妻、俺の四人だけになった。
「お、落ち着け、アレクサンダー。魔術師はその魔力で人を傷つけるのは禁止されているはずだ。これが王家にばれたら処分されるぞ。だから私に魔力を向けてはならん!だ、だがこの女を殺したいのなら、す、好きにしていい!黙っていてやる、私は邪魔はせん!」
「侯爵様?!なにを言うんですかっ!さっきは不問にするって、罪人にはしないって言って下さいましたよね!助けてください!!私は跡継ぎの母ですよ、そ、それにまだ子を産めます!!」
「ロザリン、貴女が全部悪いのよ!可愛いエリザベスを害するからこんな事に…。大人しく罪を償いなさい!そうよね、アレクサンダー。憎いのはこの女だけでしょう?私だけはあなたの味方よ、だってあなたを産んであげた母親ですもの」
三人はギャーギャーと罵り合い自分だけは助かろうと足掻いている。
本当に醜いな……。
こんな醜悪なものはこの世にない方がいい。
俺は冷めた目で侯爵をみると両肩の骨を一瞬で粉砕し、次に夫人の両足を火で炙ったかのように爛れさせる。
「ギャー、フガッ…。か、肩………」
「ヒヒッヒッヒーーー、痛い止めてー!」
いきなり襲った痛みに二人は無様な様子で転がり回りながら『許して、助けて』とすすり泣いている。
その横ではロザリンが手だけで這いずりながら自分だけ逃げようとしている。
もうその姿に貴族の威厳などなく、醜く滑稽でしかない。
バカな奴らだ。
逃げられるはずがないだろう…。
目の前にいるのを誰だと思っている。
…お前達が恐れ嫌っている魔術師だぞ。
「クックック、俺は絶対にお前らを許さない。親だと…?血が繋がっているだけだ…愛情など貰ったことは一度だってない。俺自身を見て愛してくれたのはリズだけだった。そして俺が愛しているのもリズだけ、大切なのもリズだけだ…。だから……もう大切なものはなにもない。ふっ、俺はやりたいようにやる。それだけだ………」
最愛の人を失って壊れた俺を止めることが出来る者は誰もいない。




