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17.予知夢~エリザベス視点~

お腹の子が見る予知夢はやはり断片的のままではっきりとはわからないままだ。でも伝えたいことがあるのではないかと思うようになってきた。


夢で見る映像はアレクに繋がる事ばかりで、何かが起こって彼が命の危機に晒されるようだ。


 いったい何が起こるというのか?

 それさえ分かれば手が打てるのに。


肝心な部分が分からないもどかしさに、どうしてもイラついてしまう。


映像の断片では何が引き金になって、アレクがそんな状態になってしまうのかがいまいちはっきりしない。

分かっているのは、彼が何かの魔術を使って血塗れになって花びらの中で倒れているということだけ。


優秀な魔術師であるアレクは王家から禁術の解析を頼まれることもあるようだ。仕事の詳細は話してくれないが、きっと危険な仕事もあるに違いない。

では仕事絡みで起きるのだろうか…。彼ほどの魔術師ならば襲われてというより、仕事関係の事故の可能性のほうが高いだろう。



 もっと詳しく分かればいいのだけど、そんな都合よくはいかないみたいね。


少し膨らみ始めたお腹を優しく撫でながら、赤ちゃんに話しかけてみる。


「ねえ、あなたのお父様はとっても素敵な人なのよ。自分の不幸に負けずに真っ直ぐに頑張ってきた強い人。そんな彼を大好きになってね、振り向いてもらう為に毎日頑張ったわ。


そしてね、お父様を幸せにすることでお母様も救われたの。


愛する人が幸せになるって本当に嬉しいものなのよ。自分が幸せになるより数倍も嬉しく感じてしまうの、不思議よね。


だからなんとしてもお父様があんなことにならないようにしたいの。

もう少しだけ力を貸してちょうだいね。

でも出来る範囲でいいから、無理はしないでね。

あなたは大切な私達の宝物なのだから。

お父様に悪いことが起きないように一緒に頑張りましょうね」


暫く待ったがお腹の赤ちゃんからの返事はない。


 馬鹿ね、私ったら…。まだお腹にいる子の答えを待つなんて。

 ふふふ、いくらお利口さんといってもお喋りはまだ早いわよね。

 あなたのお母様はあわてんぼうですね~。



アレクと同じくらい大切な我が子。まだ少しの膨らみでしかないけれども愛おしくて堪らない。

絶対にアレクは守って見せる。この子から父親を奪ったりはしない。きっとその為にこの子は私に知らせてくれているのだから。


私はまだ不確かな情報で彼を不安にさせ苦しめたくなかった。もう少しはっきりして話せる状況になってから話すつもりだった。


まだ時間があるのだけは、はっきりしている。

アレクが倒れている周りに落ちていた花びらは夏にしか咲かない薔薇。今は初冬だから早くても次の夏までは猶予があるはず、それまでには原因を排除してみせる。



 

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