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12.思惑~侯爵視点~

アレクサンダーが政略結婚の妻を愛するなんて思ってもいなかった。あの子は膨大な魔力を持って魔術師となっていたが、人間としては大切な何かが欠落していた。


だから不気味で心から愛する事が出来なかったが、我が家に繁栄をもたらしてくれたので大切には扱っていた。親子関係はそれまで問題なかったのに、子供が出来ないエリザベスとの離縁だけは頑なに拒否した。


 大人しく従っていればいいものを。

 王家の機嫌を損ねるなどあってはならん!


だが魔術師の息子を本気で怒らせるのが怖かった私と妻はエリザベスを陰で責め立てた。泣いて引き下がるかと思っていたが、しぶとく居座り続ける。


 石女のくせに!さっさと離縁しろ!


いつ王家から責められるかとやきもきしていると、事態は思ってもいない方に好転していった。


「契約で俺の子を身籠っている女がいます。後一ヶ月で出産予定ですが、もしかしたらその子の養育をお願いするかもしれません。よろしいでしょうか?」


「あっ、ああ勿論だ!お前の子が生まれるのか、めでたい事じゃないか!ハッハッハ」


「リズと離縁しない為です」


それから女の名と素性を聞き、独自にその女について調べ上げた。

『悪くない』そう思った。身分は子爵家だから何かあっても黙らせることが出来る。それに金で簡単に動く女は扱い易くていい。

本当は金を渡して侯爵家とは関わらせない契約になっていたが、私と妻は新たな繁栄をもたらすかもしれない腹の子が気になり、女を本邸に連れて来させた。

おどおどしながらやって来たロザリンは見た目も良く、貴族らしい扱いやすそうな女だった。女の身体はどうなってもいいが、腹の子だけは心配なのでとりあえず目が届く本邸で置いておくことにした。


「お腹の子が心配だから、出産までここでゆっくりしなさい。孫を身籠ってくれているんだから義娘みたいなものだな」


「はい、有り難うございます。本当は心細かったので嬉しいです」



そして一ヶ月後、待望の魔力を持った子を産んでくれた。子供の魔力は高めだが、魔術師になれるほどではないのは不満だが、これで体面を保つことはできる。王家も納得するはずだ。


 まあこれぐらいで我慢しておこうか。


さっさと用済みになった女を追い出そうとまだ出産の疲れが残っている女の傍に行くと、


「‥‥魔力の高い子を産んで差し上げられるのに…」


と儚げな様子で言っていた。


そうだ、エリザベスと離縁しないならこの先新たな子供は望めない。だがこの女とならもっと魔力の高い子が望めるやもしれん…。


それに契約だと言っていたが息子はロザリンと関係を持ったのだから情は湧いているはずだ。それならまだ子供が出来る可能性はある。


 この女はまだ使えるな。


「ロザリン、まだ身体が癒えていないのだからゆっくりとここで休みなさい。契約は終了したが、孫を産んでくれた君を無下になど出来ないからな」


侯爵家の更なる繁栄を想像し、その晩は妻と二人で祝杯をあげた。



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