1.三冊のファイル
頭から血をかぶる。って目に入ってるよ。
「動物由来の血液シャワー。くぅ~、べたべたしてて気持ち悪っ。」
頭を勢いよく振ってから目を開く。
そこには…首の切断面から芋虫みたいなものを生やした化け物が腕を上にあげていた。
え…
「ちょぉ~い。この野郎、とんでもない奴を引き付けてきやがったなぁ」
って、危なっ。胡坐かいての回避は無理だって。
ブギャッ
「セェーイフ!流石、僕」
床に腕をたたきつけた化け物を尻目に僕は両腕で思い切り体を後ろへ押し出す。
え?
「床抉れてるぅぅぅ」
化け物には驚いてる僕に気を掛ける様子はない。悲しいなぁ。
「話し合いは…無理かぁ。」
少年はブツブツ文句を言いながら立ち上がる。
タツノオトシゴのような動きをする虫のような生物と、それを首に生やした元人間であろう化け物を見て男は呟く。
「1679人目、か」少年の体が僅かに膨らんだ。
そして…姿を消した。
バギャリという音が個室に響いた。
水色のパジャマ…いや、今は赤黒くなってるけどね。
まぁ、パジャマを脱いで紫の甚平を羽織ってるわけですよ。
着替え次第、縦向きに裂けた化け物の死骸を踏んでから退室。
こんなとこ、好きでも何でもないんだからねっ。
いやこれホントなんだよ。2年間ここにいたみたいだけど楽しかったことなんてなかったからなぁ。何せやることがほとんどないんだから。
暇すぎたが故に一発芸のレパートリーが増えちゃったよ。
おっと、そんなこと言ってる場合じゃないな。
リクトさん…だったっけ?
この逆だるま落とし(?)された人のポッケに入ってたメモ帳にかいてあったんだよ。
この研究施設の設計図が!
あ、この人の名前リクヒトっていうんだ。…紛らわしっ。
この人の部屋のパスワードとかこの施設、会社のこと。いろいろなことが書いてあったよ。
このメモ帳を読んで、だ。
まず…
「ズボン替えたい…」
うん…今はいてるズボン血まみれなんだよね。特に右足。
化け物の背中から蹴り裂いた(?)時に血がすっごいついてさぁ。
それにしてもこの化け物、背中の傷を恥と思わいのかねぇ。
僕は思わないよ。だって今時、武士なんてほとんどいないしょ。
テクテク歩きながらメモ帳に視線を落とす。
そして、メモ帳のC-089(僕)について書かれているページの一文を読んでおもんわず笑みをこぼす。
10歳のころから気分屋だった男は研究者の部屋につき次第、扉の横にある装置に手を伸ばす。
「いや、待てよ。」
男は考える。これ、素手で破壊できないかな。と
バギャン
やはりというべきか、
男の手刀が容易くドアを引き裂いた。
右手をヒラヒラと振りながら左手でドアを引きちぎる。
部屋の中はかなり整理整頓されていた。
パソコンなどのコンピュータに関しては2年間の空白期があるだけに、ほとんど理解できないだろうなぁ。
ま、元からできなかったから同じか。
チラリと本まみれの棚を見ると手書きのファイルが目に入った。
なんとなくファイルを引き抜いてみた男は目を大きく見開いた。
音を立てながらファイルを全て引き出すと棚の奥に三冊のファイルの表紙が現れた。
『この研究施設について』
『C-089とは』
『C-090とは』