プロローグ
初投稿…
処女作です。
至らない点は星の数ほどあるとは思いますが、私なりにやってみます。
「君の娘は人間の、いや違う。生物になったの。君の妻もその糧となれたのだから喜んでいるだろう。」
目の前のデブが言う。
私はそのことが理解できなかった。いや、正確には『理解したくなかった』だ。
しかし…
「グゥガァァ」
涎が口から垂れるほどに裂けている化け物を見ていると心が少しずつ冷えていった。
目の前にいる化け物は口が縦に裂けていた。全長2メートルはあるだろう、顔が私の頭の位置にある。額の位置にはうねっている突起があった。おそらく脳に『被支配種』が寄生しているのだろう。
「美里…」
笑顔の美里が脳裏に浮か…ばないな。
目の前で耳に触る笑い声をあげる豚と、涎を垂らしながら唸っている変わり果てた娘の姿を見ていると少しずつ心が冷えていった。
優しかった妻、二か月ほど前に高校生になった自慢の娘。
私は何一つ守れやしなかった。
私の友人で行方不明になった奴らも化け物にされてしまったのだろう。
これでは、この会社と同じようなものじゃないか。
上層部が全員、破滅主義者。まともな方々は消されてしまった。
例のワクチンもつくれなかった。我ながら情けない。
「だが…死ぬ前にやっておきたいことがあるんでね…」
パン、という音とほぼ同時に『娘だった者』の頭がはじける。白衣が赤く染まるが知ったことではない。呆けた顔をしている豚の頭も間髪入れず吹き飛ばす。
バリィーン
周辺視野で何かが動いたのを見た。だから、急いで破壊した。
弾丸は『B棟』と書かれた場端を破壊していた。
それを見た赤い白衣を着た男はニヤリと口をゆがめる。
男は走りながら笑う。
我ながら大した腕前だ。あたりを引いた。
この研究施設には隣接した建物が3つある。
それぞれA,B,C棟がある。簡単に説明とこうなる。
・A棟…比較的安全
・B棟…なかなかの化け物ぞろい。
・C棟…兵器でも使わない限り殺すのは困難。
さっき、動いていた『元私の娘』はおそらく、C棟入りするレベルだろう。
何せ、頭がないにもかかわらず、私を追ってきているのだから。
私が強化人間でなければ今頃、死んでいただろう。
だが、あいつがこれから戦うのは私ではない。
最狂の殺人鬼だ。
この研究施設を破壊するのはB棟の連中だ。さっき、破壊したボタンは強い衝撃を感じると作動する。作動するとB棟の牢がすべて開く。
え、C棟?C棟の奴らが全員脱走すると北海道、いや日本が終わるよ。
これから私が解放しようとしているのはC-089…元死刑囚の殺人鬼だ。
こいつ一人でB棟の奴らくらいなら皆殺しにできるだろう。
そんなことを考えている間に『ニアハンドレット』に来ていた。
因みに、『Cシリーズ』の一部の奴らは変わった呼び方をされる。
100に近い奴らは『ニアハンドレット』、一桁の奴らが『ダブルゼロ』、と呼ばれている。
前者は主に新型を指していると思ってもらっていい。後者は初期型だが弱いというわけではない。あと、エリアの通称にも使われるかな。
あ、ここだ。
素早く5桁の暗証番号を打ち込み、重たいレバーを引く。
地を響かせるような音とともに鋼鉄製の隔離壁が開いていく。
4重になっている隔離壁が開き次第、重量を感じるドアを引く。
目の前には胡坐をかいた少年が座っていた。
うっすらと開かれた右目は赤く染まっていた。
ギョロンと開かれた左目には真っ黒な瞳が二つあった。
相変わらずの平凡な顔立ちと不気味な瞳を見て、笑みがこぼれた。
直後、男の頭が割れた。
血と脳漿が飛び散り、胡坐をかいた少年の体に降り注いだ。
次回主人公視点