逆転
「助かります」
「絵里子さん、皆さんが息子さんが
跡取りと言っていましたけど
今年ハーバード大学に入学したんですか?」
亮はそう言って指を折った。
「ええそうよ。祐希は私が20歳の時に産んだから
今17歳」
「じゃあ、絵里子さん・・・」
「だって、あなたのはたちの誕生日に、
30って言いたくなかったんだもの」
絵里子は下を向いた。
「ごめんなさい」
亮は額に汗をかいてテーブルに手を付いて謝った。
「良いけど、女性の年齢は実年齢じゃなくて
見た目できめるのよ、あなたの今日の奥様達
の行った事傷付くから気を付けてね」
「あっ、そうか・・・気を付けます。
体重も言いません」
「うふふ」
「ところで息子さんと会ってみたいですね」
「あの子亮の事、尊敬しているし会いたがって
いたわ、子分にして」
「本当ですか、会います、会います」
亮は自分の弟分が出来るのが楽しみだった。
「ねえ亮、天下を取るってどう言う意味だか分かる」
絵里子が急に真剣な顔をしていた。
「その意味が分かりません、みんなが仲良く話って
行けばいいじゃないですか」
「仲良くならばね。でも議論し合って
結論が出なかった時どうする?」
「多数決ですね」
「結局同じ事、誰かが誰かに従う事なの」
「そうですね」
「もし、すばらしいリーダーがいてみんなが従えば
物事は早く進むから効率がいい」
「はい」
「亮、天下を取ると言う事は
私利私欲に走らない優れたリーダーが
それを信じる人を導けばいいのよ」
「なるほど」
絵里子は亮をじっと見つめた
「僕はなれませんよ、やりたい事がたくさんあります」
「亮、今何人の女性と関係有る?」
「はいと……」
「彼女たち幸せにしたいでしょう。私と綾香も含めて」
「もちろんです、家族ですから」
「じゃあ、みんなが結婚したら家族じゃなくなる?」
「必要とされれば家族です」
「じゃあ、10人の女性が結婚して子供を
二人産んだら30人になるわよ
それとも旦那さんは無視?」
「いいえ、旦那さんも家族です」
「そうなったら合計40人の家族よ分かったでしょ、
あなたには大きな責任があるの、
私たちを惚れさせた責任
それとも、もてる男の遊び?カサノバやドンファンのような」
絵里子は涙を流しその責任と言う言葉は
亮の心にグサッと突き刺さった
「分かりました、絵里子さん」
「こんなに強く言いたくは無かったんだけど・・・」
「いいえ、初めて女性から強く言われました。
ありがとう」
亮はポケットからハンカチを取り出そうとしていると
絵里子はバックからハンカチを取り出して涙を拭いた
「あああ、私10年前にあなたと会って
あなたの子供を欲しいと
思ったの、それで3年前に絢香を産んだのよ」
ろうそくの揺れる明かりで照らされる
絵里子はとても美しく周りの客が二人の
カップルを見てうらやましく想っていた
「絵里子さん、今自分の何かが変わろうとしています。
この殻が破れたら
自信を持って方向を指差せると想います」
「それでいいの、
あなたが自覚を持ってくれさえすれば」
「はい、わかりました」
亮は絵里子の肩越し、男性と食事を
している女性が見えた。
それは10年前会った沙織に
似ていた、もう27歳になる
沙織に彼氏が居てもまして子供
がいても
もおかしく無い年齢だ。
懐かしく思ったが、声をかける
程でもなく、沙織の笑顔が見られて
亮は幸福だった。
食事が終わり絵里子と店を出ると
沙織に似た女性が
声を出した
あら?
朝6時に亮の元に森から電話がかかってきた。
「寝ていたのか?」
「いいえ今、新神戸の駅です」
「ずいぶん遠くにいるな、上原さんの奥さんと
7時10分の飛行機に乗るぞ」
「本当ですか?」
「ああ、早苗の説得が成功した」
「良かったですね、さすが女同士」
「9時半頃に汐留に着く」
「僕の方は9時20分に品川に着きます」
「あはは、じゃあ向こうで会おう」
「はい」
亮はすぐに美喜に電話をかけた
「美喜さん上原さんの奥さん、
森さんが連れてきます」
「亮、お願いしていた事が・・・。」
「はい、熊本の黒川温泉で仲居をしていたそうです」
「娘さんは?」
「はい、一緒に向かっています」
「そう、良かった」
亮は美喜の言葉にホッとした気持ちが感じ取れた
「よりが戻るといいですね」
「はい」
「今神戸から東京に向かっていますので
9時10分新橋駅で会いましょう」
「はい」
新幹線のグリーン車のシートに座ると
亮は笑顔で言った。
「絵里子さん、また動き出します」
「忙がしいわね亮、サラリーマンなのに
こんなに大きな事をしている」
「そうか、普通のサラリーマンは
こんな事をしていませんね」
「そうよ、みんな自分の事で精一杯よ。
あなたはやはり・・・
うふふ、愛しているわ亮」
絵里子は亮の手を優しく握った
~~~~~~
そこにヤマト美容専門学校の理事の品川から
電話がかかって来た。
「團さんですか?」
「はい」
「中国から連絡が有って團さんに
全面的に協力をするように
指示がありまして・・・」
「そうですか、では協力お願いがあります・・・」
「かしこまりました。劉翔記さんによろしく」
絵里子と東京駅で別れ9時20分に
ヤマトが入っている汐留のビルの入り口
近くのベーカリーのテーブル席に亮と美喜は
座って森たちを待っていた
そこへ、女の子を連れた母親が森と
早苗に手を引かれてやってきた
「お疲れ様です、松平です」
「美奈代です、この子が美香です」
美香は小さな体にリュックを背負って
眠たそうな顔をしていた
「美奈代さんは上原さんと話がしたかったそうだ」
「分かりました、美奈代さんご主人の電話番号は?」
「いいえ、知りません」
亮は美喜から聞いた上原のスマートフォン番号を教えた
「良いんでしょうか?」
「はい、美香ちゃんに電話を掛けさせてください」
「はい」
美奈代は上原に電話をすると
美香が電話を顔につけて必死で話をした。
「パパ」
と美香言うと上原声が震えていた。
「み、美香か?」
「うん」
「元気か?何処にいるんだ?」
「ええと」
美奈代は美香の言葉で察してスマフォを取った。
「あなた、美奈代です」
「何処にいるんだ?」
「品川にいます」
「ほ、本当か。俺も今そっちへ行くから、会おう」
「はい」
上原と美奈代が汐留に着いたのは10分後だった
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「あなた」
「元気だったか?」
「パパ」
「大きくなったな、美香」
美香は上原に飛びつき上原は抱き上げた。
美香の手を握ったまま美奈代が話した。
「美奈代、今までどうしていたんだ?」
「黒川温泉で仲居をしていました」
「探したぞ」
「ごめんなさい」
美奈代の目から大きな涙がこぼれだした
「いや、俺が悪かったんだ」
上原は美奈代の肩を抱くと
森に頭を下げた。
「興信所の森と申します」
「はい」
森は上原の耳元で囁いた。
「ある人のご依頼で奥さんとお嬢さんを探しました」
「それは、ありがとうございました。ある人とは?」
上原は深々と頭を下げて言った
「依頼人の名前は守秘義務でいえませんが、
今日上原さんがここ汐留にみえることを知っている方です」
「はい」
上原は美喜とジュディの二人の女性を思い浮かべた。
「でも、私が2年間探して見つからなかったのに
森さんは2日で見つけたんですか。凄いですね」
「あはは、そうでもありません」
「どうしましょう。今から会議があるのですが」
上原はまたいなくなってしまうような
気がして様子で森に言った。
「はい、二人とも徹夜の移動なので
ホテルで休んでもらいます」
「ありがとうございます、会議が終わったら
戻ってきますので、よろしくお願いします」
上原は何度も頭を下げて
汐留のジュディの事務所へ向かった
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「お疲れ様、美喜さん」
亮は様子を見て美喜に言った
「これで、上原さんはどうなるかしら?」
「彼の良心に期待しましょう、
きっとあなたの思いは通じます」
「そう願います」
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10時過ぎに会議室に
ヤマト美容専門学校の理事九人が集まり
別室に一文字が待機した
理事の太田は不動産売買の件で
検察の取り締まりを
受けた事に知っていた
会議が始まると議事進行役のジュディが宣言した。
「本日は大田理事が諸事情により理事を
退任して九人で理事会を行います。
今日は理事長の引継ぎの話と」
そこまで話すと上原が手を挙げた
「緊急動議を」
議長のジュディが上原を指した。
「私事でありますが、今回の理事長の仕事を
辞退させていただきたいと思います」
「えっ?」
理事の前田が驚きの声を上げ
ジュディは嬉しそうに笑った。
「では改めて理事長選挙ですね、
理事長に立候補なさる方はいらっしゃいますか?」
理事たちが周りを見渡すと
「では、私ジュディ山都が改めて
立候補させていただきますがよいでしょうか?」
「異議なし」
赤沢が答えた。
そして、一文字が別室から呼ばれる事は無かった
理事会が終わると上原達は別室に待つ一文字の
ところへ行って詳細を話した
「なんだと、上原」
一文字は大声で怒鳴った
「一文字さん、あんたには遊ばせてもらったが、
名前を呼びつけられる筋合いはない」
上原はドスの聞いた声で答えると
一文字は矛先を前田たちに向けた
「前田さん、堀江さん、品川さんあんた達
にはお金を渡してある」
「どうして、理事長に立候補しなかったんだ」
「一文字さん電気屋の私には理事長は出来ない」




