大坂の後ろ盾
「はい、美味しいもの食べてきます」
亮は森に電話をした。
「森さん、どうですか?
上原建設の社長の奥さんの行き先」
「詳しい資料があったから大体めどが付いたよ」
「ほとんど美咲さんに調べてもらいましたから」
「すぐに見つかるだろう」
「そうですか、よろしくお願いします」
「ところで、上原建設ってジュディを
裏切ったやつだよな。
何か作戦でもあるのか?」
「はい、ちょっと」
「わかった、明日の午前中までに絶対見つけてやる」
森はそう言って電話を切った
亮はジュディと別れるとマテリアのそばの
喫茶店で裕子を待った
「亮色々とお疲れ様でした。体大丈夫」
裕子は亮の顔の傷を見て心配性な顔をした
「大丈夫です。僕こそ助けてもらいました、
信州レディース極楽蝶の総長に」
「あはは」
裕子は大きな口を開いて笑った
「今、城田春子さんの死体遺棄で山口の
子分たちを取調べしています」
「そう、良かった」
「ただ、首謀者の山口は中国人に拉致されています」
「拉致?」
「はい、でも日本の警察より厳しいところかも知れません」
「ありがとう、これで春子もうかばれるわ」
「いいえ、中途半端に終わって申し訳ないです」
「いよいよ明日ね」
「はい」
「がんばって、亮」
「今度春子さんのお墓参り一緒に行きましょう」
「はい、ありがとう亮」
亮は新橋から東京駅に行って絵里子と会った
「亮ごめんね、急に」
「いいえ、絢香の方は」
「大丈夫、預けてある。あなたにはこれから
どうしても必要な人脈だと思って」
「ありがとうございます、これからどこへ?」
「大阪で会ってもらって、今夜は神戸泊まりよ」
「どんな方ですか?」
「黒崎の後を継いでいる人たちよ」
「えっ?」
亮は絵里子に突然そう言われて心臓がドキドキとした
「大丈夫よ、それと大阪マテリアの
宣伝もしなきゃいけないでしょ」
「は、はい」
亮と絵里子が新大阪からタクシーでウエスティンホテルに
着いたのは6時過ぎだった
「みんな待っているはずよ、今日はここでパーティなので
1時間だけ取って貰ったの」
「みみんな?」
絵里子と亮が案内されたのは
二階のレストランの奥の個室だった
「お待たせしました」
絵里子がドアを開けると
五人の中年男性が立っていた
亮と絵里子は一番奥の席に行くと
まるで面接のように五人が亮たちに向かい合って座った
「ご無沙汰しております絵里子さん」
その真ん中の男が絵里子に握手を求めて来て
亮の顔を見た
「ああ、徳田さんお久しぶりです」
徳田と握手をすると絵里子は亮の肩を叩いた
「皆さん、紹介します。團亮さんです」
「團亮です」
亮は何のことか分からずに、ただ名前を言って頭を下げた
「右から細川さん、伊達さん、徳田さん、加藤さん、毛利さん
皆さんには色々お世話になっているんです」
「と、とんでもない絵里子さん」
加藤が絵里子に言うと亮を前に出した。
「私はこの男性が気に入りました。
皆さんの目にかなえば彼に力を貸してください」
五人は真剣なまなざしで亮を見つめた
「團さん歳は幾つだね?」
60歳過ぎの白髪の細川が微笑みながら聞いた
「27歳です」
細川は黙ってうなずいた。
「絵里子さん、息子さんじゃなくていいのかい」
徳田が真剣な顔をして聞くと絵里子は躊躇なく答えた。
「はい、結構です」
「絵里子さん。じゃあ、息子さんは?」
「團さんの下に付かせます」
「そりゃ、亡くなった黒崎さんが許さないだろう」
「いいえ、息子の性格も能力も知った上
で言わせていただきます。
團さんの方が息子より遥か上です」
亮は絵里子の強い言い方で絵里子を見つめた
徳田も驚いて絵里子を見つめた
「息子さんは今年からハーバード大学
に行っていらっしゃる秀才だ」
加藤が亮の顔を見ると絵里子は答えた。
「團さんも行っていらっしゃいました。
ハーバード大学に」
「おお」
何人かが声を出すと絵里子は改めて言った。
「彼こそがハーバード大学を救った男です」
4年前の7月の暑い日、亮は入学の手続きにボストンにある
ハーバード大学に来ていた
ある男が図書館にトラップ爆弾を取り付け
四人学生を人質に立てこもり
警察は図書館に突入する事ができず手をこまねいていると
1時間後亮はバルコニーに立ち人質を無事解放した
詳細は『グッド・ジョブエピソード0』
「ん?その話新聞で読んだぞ!ハーバード大学を救った男、
日本人だったのか?」
細川は大きな声を上げた
「はい、まあ」
「息子が言っていました、日本人と言うだけで
学生は優しくするそうです。
それはすべてアキラ・ダンのおかげだと」
「それだけで、我々の力を貸せと言うんですか絵里子さん」
徳田はまだまだ亮に対して厳しかった
「絵里子さん、僕は無理やりお願いしているわけでは」
亮はこれ以上の言い合いが無いように絵里子を諌めた。
「いいのよ、これはあなたに対する試験なの得意でしょ試験」
「はあ、まあ」
そこへ五人の女性が入ってきた
「お待たせしました皆さん、あら、早かったかしら?」
「いいえ」
絵里子の声にその女は絵里子の顔を見て
黒髪の背の高い女性が絵里子に挨拶をした
「絵里子さんお久しぶり」
そして五人の女性は息を吸うと亮の方を一斉に見つめた
「亮、こちらの男性方とだれが奥さんが分かるかしら?」
「おい、絵里子さんそれが何の関係が有る?」
毛利が馬鹿にしたように言った
「はい、まず徳田康夫新大阪不動産社長の奥様は晶子さん
先ほど絵里子さんと握手をしたかたです、
年齢55歳、身長165cm体重58kg趣味は乗馬と風水」
「えっ?」
晶子は驚いて立ち上がった
「絵里子さんどこまで言えばいいですか」
「体重はいいわよ」
「次は毛利基樹神戸製鉄社長の奥さん美智子さん」
亮は徳田晶子の右隣の女性を指さした
「年齢56歳、身長157cm、フランスが好きで
年に4回ほど行っています、先月もフランスに行かれましたね」
「ちょ、ちょっと待って、どうして分かるんですか?」
晶子が我慢できずに亮に聞いた。
「しかも我々のフルネームと妻の名前も、
絵里子さんが教えていたのか?」
毛利は驚いて聞いた
「いいえ、私は何の情報も言っていません」
「簡単です、五人の社長のお顔は雑誌、
インターネットで知っています
奥様のお顔もそれで覚えています。
ついでに各会社の今期決算の状況も」
亮が言うと五人の男が驚いて口を開けていた
「どうして私がフランスに言った事が
あるって知っているんですか?」
毛利美智子が信じられない様子で聞くと
「そのルイヴィトンのバックですが、
フランスで先行販売でまだ他の国では
買えません、それにそのサンローランの
口紅の色も新色で日本ではまだ」
「凄い・・・」
美智子がつぶやいた
「わかった、もうわかった、ただこれのどこが凄いんだ」
細川が絵里子に聞いた
「團さんの頭の中に企業情報がすべて入っているんです。
奥様の情報までも、もし彼が本気で日本の企業を
掌握しようと思えば簡単な事です。
たとえばM&Aをやろうと思えば何処と何処を
くっつければ良い、ライバル会社は何処だとか
簡単に判断ができるのです」
「なるほど、凄い能力だ」
「それより凄いのは奥様に聞けば良いと思います」
五人の男が妻たちの顔を見ると
全員が亮をうっとりと見ていた
「團さんには女性を引き付ける魅力があります。
この力は誰も持つ事ができないんです」
「本当かお前たち」
細川が妻たちに聞いた。
「はい、かっこいいじゃない」
妻たちがうなずいた。
「そして彼は團拓馬の孫で香港の
ユニオンチャイナグループの
劉文明と義兄弟です」
「はいっ!團拓馬の孫!」
「ユニオンチャイナグループ!」
みんなが一斉に亮に名刺を差し出した
「徳田さんこれで分かりました?」
「参ったな、なぜ最初から言ってくれなかった、絵里子さん」
「徳田さん、人間は経歴より中身でしょう」
「でも、彼はぜんぜん威張ったところがない」
「それがいいのよ、もし普通の人間があれだけの環境にいたら
おかしくなっていたわ。権力で人を踏みつけるような
独裁者になってしまうわ」
「そうかもしらんな、彼は欲がない」
「はい」
「色々嫌味を言って申し訳なかった」
「いいえ、分かってくれれば」
「彼の凄さは最初から分かっていたよ。
でもあんなにいい男を見ると
どうも嫉妬してしまってね」
それを聞いた絵里子の目が潤んでいた
「絵里子さん彼に惚れたね」
「はい、惚れました」
絵里子が涙を拭くと徳田が優しく言った。
「黒崎さんが亡くなってずいぶん経つ、
一緒になってはどうかね彼と」
「徳田さん、私は彼の女です。でも彼は私の男じゃない
あれだけの男、私だけの物にするのはもったいないですよ
それに私は彼に大切なものを貰っているから」
「あはは、良い言葉聞かせてもらった、
我々は全力で彼らに力を貸す
命を懸けてな」
「ありがとうございます」
絵里子は徳田に頭を深々と下げた
亮は五人の奥さんたちにマテリアの説明をして
自分が作った香水を渡していた
「團さん、美宝堂の息子さんだった
なんて早く行ってくれなきゃ」




