上原の篭絡
「えっ、も、もちろんです」
上原はうれしそうに笑った
「じゃあ、この後お時間ありますか?
それともどなたか待っているかしら?」
「いやいや、家に帰っても一人ですから」
「あら、ご家族は?」
「逃げられました」
「どうして?素敵な男性なのに」
「あはは、仕事ばかりしていたら
いつの間にかいなくなっていました、
離婚届けと置手紙で」
「寂しいですね」
「慣れましたよ、それに最近一文字さんが
こうやって遊びに連れて来てくれるし」
「じゃあ美喜さんに会わせて上げる、友達なの」
直子は上原の耳元で囁いた
「本当ですか?」
「はい、もちろん」
「お願いします」
上原は頭を下げた
「ちょっと失礼」
直子は立ち上がって更衣室で電話をかけた
「美喜ちゃん私」
「あっ、直子さん」
「こっちに上原さんが来て話しをしたら
幸田美喜に会いたいんだって」
「分かりました」
「だから後で、三人で会いましょう」
「はい、ありがとうございます。今度は必ず」
「美喜ちゃん、そんなに力を入れないで」
「はい、でも・・・・」
「大丈夫よ、私たちは家族なんだから」
「はい」
若い時に両親と別れた美喜にとって
直子の家族と言う言葉に目が潤んだ。
そして、亮は次の動きを読んでいた事に
驚いた
直子は絵里子に状況を話しして
席に戻ると上原の耳元で囁いた。
「大丈夫です。美喜ちゃんを
呼びましたから仕事が終わったら
三人で」
「はい、食事をしましょう」
一文字に聞こえないように上原は答えた
「はい」
直子は上原の膝に手を置き美也子に
目で合図を送った
「一文字さん私はそろそろ」
「えっ、まだいいじゃないですか」
一文字はさっきと違って上機嫌でいた
「明日の仕事がありますので」
「じゃあ、僕も」
「はい。理事長帰るんですか?」
美也子は甘えるように一文字の手を引いた
「一文字さん気になさらないでください
今日は十分楽しませていただきましたから」
上原が言うと一文字はうなずいた。
「では、明後日に」
「はい」
直子と上原は席を立った。
「では、着替えてきますから待っていてください」
「はい」
上原は弾むような足取りで
直子に言われた喫茶店で入っていった
そこには、タイトのラメ入りの
ミニスカートをはいた
美喜が椅子に座っていて周りの
男たちの目を引いていた
上原は、後ろを振り返って
直子が来るのを確認していると
美喜が上原に気がつき手を振った。
上原は自分を指差し確認をすると
美喜のところに近づいた
「上原さん」
美喜はうれしそうに名を呼んだ
「じゃあ、さっきの美喜さんは
本物の幸田美喜・・・さん?」
「はい、本物よ。座ってください」
上原は唖然として、美喜の向かい側の
椅子に座ると
改めて美喜に礼を言った。
「はい、さっきは竹内先生を
紹介していただいて
ありがとうございます」
美喜はモデル時代のプライベート写真を見せた
「ほ、本当だ、じゃあ直子さんとは?」
「親友と言うか、か・ぞ・く」
美喜は先ほど直子に言われた言葉を思い出して
上原に言った
「わあ、美人二人姉妹ですね」
「ありがとうございます」
そこへ後ろのドアが開くと
直子が入ってきた
「お待たせしました」
「ありがとうございます。美喜さんを」
「あら、私はお邪魔かしら?」
「と、とんでもない」
上原は立ち上がって手を横に振った
「どうやら、上原さんを捕まえたみたいです」
亮は美咲に話をした
「さすがね、警察より凄いわ」
「これで、安心です。美咲さん帰りましょう」
「いいの?帰っても」
「後を付ける訳には」
「気になるんでしょう、私は帰るけど行けばいいのに」
美咲は笑っていた
「すみません、じゃあ行きます。その前に」
亮はビルの陰に美咲をつれて行って
ハードなキスをした
「本当は今日この後・・・・」
「いいのよ亮、これで十分。好きよ」
美咲は手を振って亮を送った
亮は直子にメールを打ち三人のホテルの飲んでいる
バーに行く事にした
上原は機嫌よく美喜と話をしていた
「私はそろそろ」
直子が美喜の顔を見ながら話をすると
上原が止めるそぶりを見せた。
「まだ、いいじゃないですか?」
「実は私ここでデートなんです」
「それは失礼いたしました」
上原は頭を下げた
「私、化粧室へ」
美喜はそう言って二人は立ち上がった
二人はバーを出たところの
化粧室で鏡の前に立った。
「美喜ちゃん大丈夫?」
「はい、大丈夫。この先はプロの私に任せて」
「プロ?がんばって」
「はい」
美喜は媚薬を飲んで、
媚薬入りのスーパー口紅を塗った
「ねえ、この口紅市販したら売れるだろうね」
「あはは」
トイレを出ると
そこに亮が立っていた
「やあ、お疲れ様です。美喜さん」
「亮!!」
美喜は亮に抱きついた
美喜は亮の胸に顔をうずめて
「ごめんなさい、失敗しちゃって」
「大丈夫です。一文字の性格が良くわかりました。
上原さんも一文字の性格に何か
疑問を持ったに違いありません」
「そう、それならいいけど」
「はい、上原さんと二人で話をして一文字との関係と、
どうしてジュディを理事長から
降ろしたか探ってください」
「はい、了解」
美喜は敬礼をした
「あっ、美喜さん気を付けて」
「ううん、ここから先はくノ一の美喜の
テクニックで狂わせてやるから」
「はい、お任せします」
美喜は元気を取り戻して戻って行った
残った直子と亮は顔を見合わせた。
「僕たちはちょっと様子をうかがいましょう」
「はい、彼女なら必ずうまくやるわ。家族だもの」
「家族?」
「うふふ」
亮は不思議そうな顔をして直子の目を見た。
亮と直子の席から少し離れた美喜の席は
上原が笑いながら楽しそうに
お酒を飲む姿が見えた
「亮、久しぶりねこうして二人で飲むの」
「そうですね、みんなに苦労かけています」
「そんな事ないわ、みんな楽しんでいるわ、
昨日は特にスパイ映画に出ていたみたいで」
「あはは、僕はひどい目にあいましたよ。
あちこち痛い」
「そうまだ痛い?」
直子はうなずく亮の左頬をなでた
「そう言えば真理さんは?」
「とりあえず福岡の実家に帰りました。心の傷が癒えたら
戻って来るでしょう」
「そうですか。ありがとう気を使ってもらって」
亮は包み込むような優しい目で直子を見た
「ううん」
直子は首を横に振った
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「やっぱり、クラブ順子にいた美喜さんだったんですね」
「はい、でも内緒ですよ。元モデルの幸田美喜が
落ちぶれてホステスになった事がわかって
同情でお客さんが来ると悲しいから」
美喜はキャバ嬢になった事を心から恥じていた
「分かりました、秘密にします」
「上原さん素敵な人ですね」
美喜が瞳を輝かせて言った
「えっ、そうですか?」
上原は照れていた
「やはり仕事がうまく行っているせいかしら、
生き生きしています」
「あはは、ありがとうございます。
でも来月から学校の美容理事長になるんですよ」
「えっ、経験があるんですか?学校経営の」
「いいえ、父親が死んで後を継ぐまで日本工業大学の
研究室で建築工学の研究をしていました」
「じゃあ、まるっきり専門外ですね」
「はい、美容の事はまるっきりわかりません」
「それで、どうして理事長に?」
「ああ、今日一緒にいた一文字さんに頼まれましてね
あの一葉学園と統合する為のつなぎのためですよ」
「そうなんですか」
「でも、ヤマトは業績不振ではないんでしょう」
「はい、ジュディさんは立派に経営していましたよ」
「なんか、ジュディさんがかわいそう、頑張って来たのに」
上原はその言葉で一瞬顔を曇った
「でもこれからの少子化の時代で学校の統合は進めないと
生き残れませんからね」
「でも、上原さんにはメリットがあるんでしょう」
「はい、統合したら代々木の新校舎の受注を」
「そう、それなら儲かりますね」
悲しそうな顔をした美喜の顔を見て上原は
静かに話をした。
「僕は悪い事をしました?」
「いいえ、ビジネスですから」
美喜は笑顔で答えた
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「ねえ、亮。あっちでは心理戦をやっているようよ」
「はい、彼女は凄いですよ」
「何が?」




