くノ一美喜
「お待たせしました」
「美喜ちゃんです」
美喜が二人に頭を下げた。
「おお」
一文字は美喜の美しさに声を上げ
一目で気に入った
「美喜ちゃん座って」
順子が言うと
美喜は上原の脇に座り
一文字は憮然とした
「美喜ですよろしくお願いします」
「一文字です」
上原は美喜に背筋を伸ばして言った。
「う、上原です」
「よろしくお願いします」
「あのう、幸田美喜さんに似ていますね」
「はい、良く言われます」
「私、ファンだったんです。でも突然引退して」
「あら、上原さん女性ファッション誌を読まれたんですか?」
「ああ、別れた妻が良く見ていましたから」
「そうですか、離婚なさっているんですか」
「あはは、娘を連れて出て行ってしまいました」
「さびしいですね」
美喜は目を曇らせて言った
「はい、仕事ばかりして家に帰らなかったからね」
上原は妻につながる美喜を見て当時のことを思い出していた
「そんなに仕事忙しいんですか?」
「はい、10年前に父親が亡くなって
急に後を継いだものですから」
「素敵です一生懸命働く男性の姿」
「そうなんですよ、上原さんは建築業、
私は学校同じ生い立ちなんです」
二人の会話を聞いて一文字が話をした。
「一文字さんは学校を経営しているんですか?」
美喜は顔を伸ばして一文字に聞いた
「はい、一葉学園を」
「本当ですか?名門じゃないですか。すごい」
一文字は美喜に褒められて悪い気がしなかった
「上原さんは建築業を?」
「はい、上原建設という会社を」
「あの、渋谷にある上原建設ですか?」
「はい、そうです」
「すごーい」
美喜は六本木のキャバクラには
建設業の客が多く良く知っていたので、
上原と建設の話題で話が弾んだ
「あはは、美喜さん良く知っていますね。
実は建築デザイナーの竹内健に
今度の仕事を頼みたいんだが
気難しい人で会ってもらえないんだよ」
「竹内健さん?」
「はい」
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竹内健は60歳過ぎのキャバクラゴールドでの美喜の客で
美喜に会いに来るときは必ずプレゼントを持ってくるほど
美喜を気に入っていた
「美喜ちゃん、結婚してくれ」
「だめよ、私はこんな女なんだから」
「君の過去なんて関係ない、離婚して一人で寂しんだ」
「あきらめて、もっと素敵な女性が見つかるわ」
「じゃあ、君が望む事なら何でもしてあげる」
「ありがとう。それでだけで充分よ、竹内さん」
美喜は竹内にキスをした
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「ちょっと失礼します」
美喜が席を立って戻るとすぐに
美喜のスマートフォンが鳴った
「はい、美喜です」
そう言うと美喜はスマートフォンを上原に渡すと
上原が怪訝そうな顔をして受け取った。
「はい、上原です」
すると上原は急に敬語になりしばらく話すと電話を切った
「美喜ちゃんありがとう、竹内先生が今度会ってくれるそうです。
ありがとう」
上原は美喜の手を握った。
「いいえ」
「うまく行ったら何でもお礼いたします」
「本当?」
「もちろんです」
「なに、お願いしようかな」
美喜は上目使いに上原を見ると
その色気に上原はドキドキした
「じゃあ、食事に連れて行って」
「も、もちろんです、食事は今夜でもいかがですか?」
「ではぜひ」
美喜は頭を下げると
その会話を隣で聞いていた一文字は
どちらの立場が上か分からない上原に腹を立てて
鋭く睨みつけた
「上原さん次行きましょう」
一文字が立ち上がり
上原は名残惜しそうに
美喜に見送られながらクラブ華を出た
そして、一文字と上原はしばらく歩いて
クラブ蝶に入った
「上原さん、ここのママは黒崎憲治の愛人だったんです」
「あの大阪の黒崎憲次ですか?」
「はい、黒崎憲次無きあとママの男は誰になるか
話題になっています」
「話題になるほどですか?」
「はい、彼女の受け継いだ資産がすごいらしいですよ」
「そうか、逆玉ですね」
そこへ絵里子がやってきて丁寧に挨拶をした。
「いらっしゃいませ一文字様」
絵里子は静かに頭を下げ上原の顔を見ると
上原は絵里子の妖艶で美しさに震えがきた
「上原です」
「はじめまして、絵里子です」
その白くて細い指先で上原に名刺を渡すと
まるで少年のように顔を赤くした
絵里子が一文字の脇に座って体を寄せた。
「一文字社長、ご指名は?」
「美也子とあとは誰でも」
「はい」
絵里子は美也子と直子を呼んだ
立ち上がった絵里子は
直子とすれ違いざまに
「がんばって、直ちゃん」
と言った
亮は美咲と新橋のホテルのバーで
お酒を飲んでいると
美喜から亮に電話が入った
「亮ごめん、逃げられちゃった」
「どうしたんですか?」
「上原さんと話をしていたら、
突然一文字が帰ると言い出して」
「一文字は嫉妬深いからですよ」
「そうか、ごめんなさい」
「大丈夫、今直子さんが接触しています」
「本当にだめだわ、私って」
「美喜さんそのまま、そこにいてください」
亮は次の展開が読めていて美喜をそこに止めた
「はい、それは大丈夫よ。なんかあちこち
から指名が入っているわ」
「あはは、それは良かった」
「もしもし、亮ちゃん」
電話の向こうから順子の声がした
「はい、ママお久しぶりです」
「美喜ちゃん、うちで雇いたいんだけど凄い人気よ」
「それは無理だと思います」
「おねがい、美喜ちゃん説得して」
「はい、頼んでみます」
「お願いよ」
「はい」
亮は電話を切ってため息をつくと
美咲が亮に抱かれるのを期待していた
「まだ、帰らないの?」
「はい、みんなががんばっているのに
帰れませんよ」
「そうね、まるで刑事だわ」
「あはは、警察官に言われるとうれしいです」
「それで、株の方はどうしたの?」
「一文字が買ったDUN製薬の株が10%、
関連企業に買わせた株が
10%うちの株式発行数が6000万株だから
一文字が持っているのが600万株」
「ずいぶんお金をかけたわね」
「はい、今の株価が6600円だから390億円ですね」
「それでやつは」
「株を買い戻せと言うのか?
経営に参画したいのか?乗っ取りですね」
「買い戻すとなると?」
「いくらでしょう。相当ぼったくってくるでしょう」
「亮の会社そんなに価値があるの?」
美咲はおどろいていた
「うちの販売している糖尿薬は
画期的であちこちの国から
オファーが入っているんです」
「はいすごい」
「世界にいる2億3000万人の
糖尿病患者の需要があるとしたら」
「そんなに凄いの?」
「はい、糖尿病治療のプログラムですから」
「どんな感じ?」
「まず、重度の糖尿病患者さんにはブレスレッドの
浸透型インスリンですい臓を休めさせ、
そこで漢方成分の薬を投薬してすい臓を健康にさせる
B薬と、糖の吸収を抑え体に必要な分の糖だけを
吸収するC薬のセットです」
「凄いわね」
「はい、このプログラムは1年あたり
一人30万円を使いますから」
「1000万人で3兆円?」
「あはは、そこまでは日本国内では無理だと思いますが、
今回ドイツの製薬会社と契約してフランスと
アメリカと中国との契約もします
当然うちの株価も大台に乗ります。
「一株4000円の儲け凄いわね、亮」
「はい、一文字はそれに目をつけたんでしょう」
「それは、情報が漏れていたという事?」
「はい、そうですね」
「一文字は山口と組んでこの手で儲けていたんだ」
「それと秘書や社員からの情報です」
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美也子が一文字と話をしていると一文字が聞いた
「そう言えば最近山口先生来なかったかな?」
「昨日見えましたよ」
「えっ?」
「あら、山口先生がどうしたんですか?」
「いや、なんでもない」
一文字は山口が昨夜クラブ蝶に来た事が分かって
腕を組んで独り言を言った
「そうか。居なくなったのはここの後か」
一文字は何人もの男が居る山口の自宅から拉致されるとは
思ってもいなかった
直子は上原と親しげに話をしていても
一文字は美也子の話術にのめり込み
嫉妬の目を二人に向ける事がなかった
「クラブ華にモデルの幸田美喜に似たホステスさんが
いたんですよ」
「あら、そうなの」
「はい」
「美喜さんのファンだったんですか?」
「はい、妻が毎月買ってくるBBが楽しみでした」
「うふふ、本物の幸田美喜に会いたいですか?」




