九話、騎士団長イヤミと平凡な高校生
誤字修正報告をしてくれた方(御二方)へ。ありがとうございます、こんな小説を文字一個に至るまで読んでくれてると妄想すると感動で涙が…ごめんなさい、涙は盛りました、けれど励みになります! 本当にありがとうございます!
◆◇◆
教会にある敷地の一部、子供たちが使わないスペースを借りてソラは剣を振る。
「こう、で……こう!」
ガーダーから教わった基礎の練習を身体に染み込ませようと構えを繰り返す。その動きをイメージする。
「(日本では装〇悪〇村〇をプレイして剣術に対しては少しは知ったか出来るけど、こっちの世界だと対人より対魔物の剣技が発展してるのか見たこと無い構えが多いな)」
訓練を行いながらほくそ笑む。
「(ああ……! 異世界でも、どんな世界でも人類の努力と成長をし続けるんだな……! 嗚呼、ああッ)」
ふー、とソラは息を吐いて爽やかな心地で前屈みになる。テントが設計された。
「あ、おにーさんいた!」
「おっと最悪のタイミングで幼女来たわどうしよコレ」
幼女の純粋な視線がソラへと刺さる。
「リリカねえが大変、大変なの! あへえええ」
「リリカさんが? 分かった、今行こ……っ、!?」
だがそこで気付く。
――――俺の下半身、勃〇してね……?
「(っ、ま、マズイ……この状態で動けば、この幼女に俺のエクスタシーが、見られてしまう……そしてそれはこの子の成長に何か良くない影響を落とすかもしれない……!)」
そこで理解する。今、誰よりも大変で、誰よりもピンチになっているのは。
「(俺は、今……追い詰められている!?
ど、どうにか、対策を、そうだ! 時間を稼いでその内に俺の半身を……)」
「ねえ、お兄さん!」
「ぐっ……!」
――――どうすればいい!? どうすれば、この状況を打破できる……!?
「……!」
その時! ソラの脳裏に頼れる先輩の言葉が蘇った!
『困った時はまず斬る! ビビらせたいなら切っ先向ける! それだけ覚えれば上等よ!』
「困った時は……斬る……?」
ソラは自分の股間に存在するテントへ視線を向けた。
そしてソラは――――柔らかな笑みを浮かべる。先ほどまでの焦りはもう何処にもなかった。
「(なんだ、簡単な問題じゃないか。
下半身の俺が立っている状態、それをこの子に見られなければいいだけの話なんだ。収めるだの縮めるだのと……何を必死になってたんだろう。
――――困った時は斬る、それだけの問題じゃないか)」
ソラは前かがみのまま腰に帯刀させていたちょっとしたウンコソードを鞘ごと外して――――その刀身を見た。
「ねえ、君」
「なに? お兄さん」
「治癒魔法って、生殖機能も治せるのかな」
幼女は首を傾げる。その純粋さを守れたことをソラは嬉しく思った。
「せー、しょく?」
「ふふ……なんでもないよ。数秒だけ向こうを向いてくれると助かるな」
「え? うん……」
◆◇◆
教会の表口へ向かうとそこには騎士団長のイヤミとかいう男に腕を掴まれたリリカの姿があった。
「……やめてください」
「ふふふーのふー。どうしたんだい? マイエンジェル、吾輩の腕の中という名の鳥かごに眠れ」
「おええ、セリフが生理的嫌悪を絶え間なく生産させるよぅ……よよよ、幼女です(糞雑自己紹介する幼女)」
「なんか見覚えあるオッサンいて草」
リリカがゲボを撒き散らしそうなレベルで顔面蒼白になる。しかしそれにイヤミは気付いていなかった。
「どうしたんだい? 体調が悪そうだーが……マイフェイバリィィィットらぶルームに招待でもすれば治るだろうか」
「この糞ハゲが消滅すればねえねの体調は治ると思うのですー」
幼女が無垢に答える。ここにソラというお兄さんがいるため子供たちはイキっていた。
「あ? 失礼な餓鬼だなぁ、私の髪はうっすらと残っているというのに、ハゲ、と言ったか?」
イヤミは額に血管を浮かべる。沸点が低いようだ。
「風前の灯火」
「俺のチン毛より浅はか」
「存在が恥なのら!」
「ほう……」
騎士団長イヤミは教会の壁の前まで移動した。
「ふふふ、ふはは」
体育座りした。
「別にそこまで言わなくてもいいじゃん……」
「あ、泣いた」
「泥投げとく?」
「うんち!」
軽いいじめの現場を前に騎士団長イヤミはザッ、と立ち上がる。
「ふっ、だがいいのかね? リリカよ、お前が私の物にならないならこの教会に支援金が入ることは無いのだぞ?」
「……」
「(ふむふむ、中々最低な手段だな)」
リリカが芋虫を噛み潰したような顔をする。そう、リリカは現在、脅されていた。
「泣きっ面に糞つけるぞ」
「ちょっとしたウンコを超越したウンコ!」
「嫌われることには理由があることに気付いた方が良いのら!」
子供からのブーイングを受けて再びダメージを受けるイヤミ。
「くっ、頭の悪い餓鬼どもが……!
いいかねリリカ。こ・れ・は♥ 君のためなんだよ、本当はこんなことしたくないんだけどぉぉぉおおおお、ねッ! 君が吾輩のものにならないからいけないんだ……すまない、吾輩のものになれば貴族の生活が漏れなく待っているというのぉおおおおおおおおにいいいいいいいいいいいッッ!! ポゥッ!」
それだけ言い放つとイヤミはその場から去っていった。嵐のようなハゲだった。
「護衛を頼んだ理由はあれかな?」
「……はい。あの人はギルドにも顔が効くらしく、依頼を出しても後でギルドからキャンセルの連絡を受けました」
「私個人に依頼をした理由は騎士団総出で倒せなかった狼型の魔物を討伐したという実績を目にしたからでしょうか?」
「はい……もう、それしか頼る手がなかったんです」
護衛を頼んだ理由、というより原因は騎士団長イヤミであったらしく、
「で、リリカさんはこの冒険者に何をしてほしいのですか?
因果関係を明確にしていただきたく思います」
「そ、それ、は……」
「……?」
依頼内容の明確化を求めるがリリカは言い淀むばかりで答えはしない。ソラはそれを不思議に思い首を傾げる。
「――――それは私から説明しましょう」
「あ、スーパードライさん」
「孤児院でバイト中。さてそこの冒険者、事情を説明するのでついてこい」
「あ、はい」
ソラは謎の幼女スーパードライに言われるがまま着いていく。そして教会の一室で告げられる。
「あの子は、きっと明確な目的を持っていないだろう」
「……は?」
通された一室で説明された内容はその一言に纏められるものとだった。
「自分が行かなければ子供たちに良いものを食べさせることすら出来ない。
自分が苦しめば子供たちが食べ物を食べれる。
どちらかを選び、どちらかを捨てるという状況です。その結果がむしゃらに行動してお前の元へ着いたのだろう。
あの子は迷子なのだよ、一本のマッチ棒を良きところに見間違う程度には、な」
がむしゃらに行動した。その言葉が意味するものはソラ自身が予見していたものだった。
リリカ・アルバ、彼女の有様は子供と言って差し支えない。行き当たりばったり、計画性の欠如、問題の明確化からの逃避。
「だが向こうは貴族だ。下手に手を出せば取り返しのつかないことになるあ、だからこの依頼は断」
「……子供の成長を、阻害した?」
だが、その上で尚――――いつも通りだった。
最初、彼自身がリリカ・アルバを子供だと予見し、子供の精神構造を学べる、と考えた。だがその思考は遥か彼方へ飛んでいた。哀れ。
「……ん??????」
「子供の未来を、その成長の軌跡を? 己の性欲一つで?「あの、ソラ君?」
それでよくもまあ自分に振り向いてもらえるなどと思えたのものだなぁ……「あ、あのー」
――――ははっ」
「かひゅっ」(息の漏れる音)
渇いた笑い声、それを聞いたスーパードライは直感で分からされた。
――――コイツ、たぶんアホだ、と。
「(方針変更だ。子供の思考回路とかより先に他者の心を侵す屑を消す――――人の心を壊す奴に幸福などきていいわけがない、今すぐにでも殺す。成長ノ導、使えそうな力を寄越せ)」
【成長ノ導】を発動しますか?
【身体変化Lv10】を会得できます。
→【身体変化Lv10】による【アバター作成】を推奨。
→【アバター作成】→【オプション設定】専用スキル:【透明化】を推奨
→侵入→発見→殺れ。
【透明化Lv10とかいうスキルは無い。きっとない
あとちょっとした企みがあるとかそういうのでもない】
ソラは歪み切った笑みを浮かべながらその提案を承諾した。
「ではスーパードライさん。俺はこの辺で失礼します――――やることが出来ました」
部屋を出る。その後のことだった。
【報告】【精霊装:成長ノ導】が 自我の獲得に成功しました。
【個体名:シルベ】
【自我の獲得に成功しました。成長に対する精神的快楽を所望します】
「(おお……! 素晴らしい、凄まじいよ。最高だ……)」
【ッ………………きゅん】
念話を使用する能力、それを成長の意思によって成した。それだけでソラは絶頂しかけた。
「それで? 精神的快楽、というのは何をすればいいのかな?」
【っ、…………♡】
「…………?」
【報酬を受け取りました】
「??????」
ソラはいまいち掴み所のないパートナーを得た。
ソラ)他者のことを傷付けておいてよくもまあ自分に振り向いてもらえるなどと思えたのものだなぁ……
よくそんなこと言えたな。本当に素晴らしい感性してるよ。