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六話、興味ない相手だと記憶し難いのは平凡な高校生の間では常識。

◆◇◆

 狼の死体(解体済み)を縄で纏めて背負う。その姿はかの二宮金次郎を思わせる。



「お、おい見ろよ」

「すげぇ……あれを倒したんか」



 ソラが歩くと街の人々が振り返る。



「戻りましたー」


「うい、おかえ……はああああああああああああ!?」


「なんですか」



 ギルドに戻ると受付嬢が発狂した。便秘だろうか。



「いや、え? あの……ソラさん、東の森って……倒して……ええ?」


「スーパードライさん、バグってますよ」



 背負っている魔物を床に降ろして状況を報告する。



「魔物みたら逃げるって約束ですが守れなくてすみませんでした。

 これ、なんか襲ってきたんで殺しました」


「殺したって…ええ……!? 国が騎士で討伐隊つくっても倒せなかった……はあ……!? ハッピーセット…?」


「君は何を言ってるんだ…?」



 受付嬢は困惑しながらソラを見る。左の袖がビリビリになってる制服にボロボロの剣だけの姿である。



「まさかちょっとしたウンコソードでこの魔物が……?」


「凄い、魔物倒したのにディスられた」



 ちょっとしたウンコソードを見られて咄嗟に隠す。



「すーはーすーはー、失礼しました。査定しますので少々お待ちください」


「あ、はい(すぐに精神を落ち着かせた。流石冒険者ギルドで受付をやってるだけある……!)」


◆◇◆

 ~ギルドの訓練場~



 所持金:金貨5枚(50万円の価値)

     大銀貨3枚(3万円の価値)

     銅貨9枚(900円の価値)



「日本円で53万900円……これぐらいあれば幾らか余裕もでるな」



 金に余裕が生まれた。ならばあとはどうするか、決まっている。



「この世界ではどうも知識や情報より暴力が重視される傾向にあるらしい。

 なら――――剣の練習しかないな」



 以前より軽く持てるようになった剣を確認する。



【名前】ちょっとしたウンコソード

【品質】E

【能力】攻撃-1 射程+1

【説明】ちょっとしたウンコ並みにカスな武器。これ使うぐらいなら素手の方がマシ。

【スキル】

 対格上属性 new!



「…………」



 ボロ剣改めちょっとしたウンコソードを振る。



「……うん、我ながら素人丸出しだ……」



 次いでスキルの確認を行う。



「……剣術スキルで、使える技の確認、か」



【剣術スキル】

 Lv3-【剣装備時攻撃力+100】

 Lv5-【剣装備時攻撃力+200】

 Lv8-【剣装備時攻撃力+900】

 Lv10-【剣の極理】



【剣の極理】

 この世に存在する全ての奥義が使用可能。Lv1~10までで覚えた能力はこの中に統合して言います



 とりあえず技を放つ。ブラックホールが誕生した。



「いやなんでだよ」



 ブラックホールを消した。


 ――――十分後。



「…………」



 目の前にクレーターだらけの訓練場が広がってるなんて、誰が想像できるでしょうか。



 顎に手を添えてソラは考える。



「(技は使える。きっとこの世界でトップクラスの剣技だ。

 だけどそこに繋げるまでの立ち回りや基礎の部分が致命的すぎるほどに雑

 ――――まんま素人が最強の聖剣手にした、という状態なのか)」



 ソラは現状の欠点を簡潔にまとめて思考を更なる成長への奇跡へ繋げる。



「(心技体で技だけが異様に突出している状態……成長するべき点がまだまだあるみたいだ)」



 とりあえず訓練場に置いてある木剣を手に取り、振るってみる。



「…………」



 振る、振る、素振りを行い続ける。その果てで。



「…………ッ! ダメだ!」



 自分の素人さが分かった。師もいない状態であるためどれほどの練度かもわかっていないが、ダメなことだけは理解した――――尚、剣を持って一日目の男とは思えないほどまともな剣筋だが、それにも気付いていない。



「軸がブレている、これの欠点は何処だ……? いや全部か」



 剣を振る、剣を振る、振るたびに欠点が露見する。

 確実に見付けた欠点を改善する。また振る、欠点が見つかる。直す、他が雑になる、直して、また振る。



「ッ、ッ! ッ!」



 剣を振ってはまた欠点が見つかる。

 一切の妥協を許さず、その欠点を排除する。それを繰り返し、繰り返し、繰り返しては繰り返す。



 一回ごとに剣の鋭さが増していく。通りすがりのちくわが目の前を通っただけで切断される。



「(――――嗚呼、悦しい。

  永遠に成長し続けたい、これからも、ずっと、ずっと……永劫に。

  まだだ、もっとだ、更に、まだ、まだ…まだまだまだ、次の成長があるはずだ。行ける、まだだ。この成長の先が見たい。もっと見たい……俺は、永遠に止まりたくない……止まれない)」




 最早、今この場にいるのは彼一人なっていた。



 【体力上昇Lv4】を会得しました。

 【集中力Lv1】を会得しました。



 集中力は天にも昇り、彼の視界には歩き続ける剣しか見えない。



 【体力上昇Lv5】を会得しました。

 【集中力Lv2】を会得しました。




 【集中力Lv3】を会得しました。



「おい……おい!」


「……ん? え? あ、ガーダーさん?」



 気が付けば深夜。お世話になった冒険者ガーダーの声でようやく目が覚める。



「なんかスゲー集中してたみたいだけどよ……そろそろ止めねえと、死ぬぞ」


「ガーダーさん……」



 ソラは自分の身体を見てみる。すると全身が妙に赤いことに気が付いた。


 鍛錬のし過ぎで筋肉が壊れ続けていたのだろう。間違いなく一週間は筋肉痛を引き摺るであろうことが目に見えていた。



「どうして……」



 仰向けに倒れて悔しそうに涙を流す。



「どうして……どうして……っ」



 ソラは涙が止めることが出来ずに、腕で必死に顔を隠した。



「どうして短パンニーソを履いた美少女じゃないんだ……!!」


「殴ればいいのか?」



 ソラは嘆いた。何故ここにいるのが美少女無いのかと、何故筋肉ムキムキのおっさんしかいないのだ、と。



「いやだって……こういうのって普通ヒロインが出てくるシーンだと思うんです……そういうロマン、期待したいじゃないですか……っ!」


「甘えんなカス殺すぞ」


「辛辣……」



 ため息を吐いてからソラは自分の身体を見る。全身で内出血が過剰なまでに繰り返されており、一部では肉が千切れて血が溢れそうになっている個所もある。



「じゃあ今日は止めますよ……休んでる間にまだ肉体が強靭なモノに変わると信じて。現状では休息が一番効率良い成長方法」


「最早病気だな……」



 パンパン、とズボンに付いた砂を払って剣を片手に訓練場を出ようとする。



「ああ、そうだ……受付嬢からの伝言だが明日討伐した魔物についての話があるそうだ」



「……え?」


◆◇◆

 翌日。左腕がビリビリになった制服を仕立て屋で直してもらってからギルドに向かった。



「昨日と今日で申し訳ありません……先日の魔物を調べた結果、国が特別警戒を強いている対象であるということが発覚して……したため、今回お呼びだてしました」


「(敬語に違和感があり過ぎて困る……)」



 スーパードライさんが似合わなさすぎる敬語で情報を告げる。敬語なのは目の前にいる人物に対する配慮だろう。



「それは構わないのですが……この方はどなたでしょうか?」


「は、はい……それは自己紹介をしてくれるはずですので……じゃ、私は失礼します……」



 そこには何やらキンキラ金の装飾を携えた白い軍服に身を包んだ男がいた。いや、正確にはソラも知っている人物だった。



「やあやあ汚い下民くん!

 嗚呼、嗚呼! 我こそは偉大なるガルド王国の栄えある第一騎士団の副!団!長! エミール・ミートソースであぁぁぁぁぁるッ! ちなみにブリーフ派だ」



 ミートソースと名乗る男は高らかに己の所属を名乗る。


 下民男は委縮しながらも何とか返答する。



「はぁ……自分はソラ・ヤマナミです」


「ふむ、如何にもトランクス履いてそうな下民ズラの男だな」


「!?」



 ミートソースの言動にソラは警戒を最大限に挙げた。



「(この男……俺がトランクス派だと一瞬で見抜いた……!?

  超高レベルの鑑定スキルを持っているのか……)」



 少なくともソラにはパンツの種類を見抜く能力は持っていない。


 つまりそれは、目の前の人物は鑑定Lv10の先を行く男であるということを意味している。



「くッ……コイツ、できる」


「ほう! チーミ―はッ! なかなかいい目をしているみたいだねぇ……」



 ソラの反応に気をよくしたミートボール……間違えた、ミートソースは上機嫌になりながら本題に入った。



「さて、では確認をするよ! 君が報告書にあるちょっとしたウンコみたいな剣で件の魔物を討伐した冒険者かね?」


「ちょっとしたウンコソードの件については微塵もご存じないのですが、狼型の魔物を討伐したのは自分で間違いありません」


「ふーむ」



 ミートソースは他所見をしながら腕を組み、片手を顎に添える。



「ふーむふむ、ふーむ」



 どうでもいいけどミートソースはオスガキの香りがする。


 ミートソースは人差し指の先端をソラへと向けて結論を下す。



「ふーむふーむ――――よし、その手柄、僕のものな」


「……はい?」



 理解できていないソラに対してミートソースはダンッ! と立ち上がって芝居がかった仕草で背を限界まで後ろへ曲げて、顔を天井に向けて掌をわざとらしく添えた。



「まあ? この! ガルド王国第一騎士団副!団!長!! の僕が戦えば余裕でこの程度の魔物倒せたんだよ。

 つまり君が僕の手柄を横ドーリということになるのだよぉぉぉぉ! ワカルカネッ?」


「いやぁ、ちょっとわかんないですねぇ……」



 一度苦笑いをしてからふと、ソラは動きを止める。ミートソースの発言に引っ掛かる点があったゆえだ。



「? ミートソースさん、あの魔物を余裕で倒せる実力があるのですか?」


「とーーーーぜんッ! だろぉぉぉ?

 だって! 僕はガルド王国第一騎士団副!団!! ちょぉぉおおおーーー!! ナノダカラネッ!」



 そこで更に何かが引っかかり、違和感をソラの胸中に生んだ。



「……なら何故、あの魔物を倒さなかったのですか?

 あの魔物、相当経験値がありましたので倒せたら良い成長に繋がる魔物でしたよ?」


「は、はは、はァーーー! そ・れ・は……僕に、成長なんか必要ないからなんだよォ~分かるだろゥ?? ひゅぅ!」



 ピキッ。何かが罅割れる音が聞こえた。


 同時、ソラの雰囲気が何らかの禍々しさを纏い始める。



「…………成長、なんか……?

 ………成長が、……必要………ない…?」



 瞳に虚無が宿る、虚無が写すのは目の前にいる〝理解不能なゴミ〟ただ一つ。



「とーーーーぜんッ、だあああああああああああ!!

 なにーせ? 僕-は? 存在そのものがああああああああ――――」



 ソラはミートソースの脳天に拳を叩き込み極めて技術的に脳震盪を起こした。






【成長ノ導】を発動しました。


【精神操作魔法Lv10】を会得しました。





 名前 :ソラ・ヤマナミ

 精霊装:成長ノ導

 位階 :最終位階

 命題 :成長


 【スキル】

 鑑定Lv10

 剣術Lv10

 火魔法Lv10

 思考加速Lv10

 治癒魔法Lv10

 精神操作魔法Lv10

 体力上昇Lv5

 精神上昇Lv5

 飢餓耐性Lv2

 疲労耐性Lv3

 集中力Lv3


 【能力値】

 レベル:32

 筋力 :1600(+1199)

 防御 :1600

 知力 :1600

 精神 :1600(+300)


 【称号】(実績)

 格上殺し(ジャイアントキリング)

いじめられっ子

 呪われた子供

 

 【集中力】

 使用時、筋力、知力、精神が上昇する。


 ソラ君は自称平凡な高校生なので基本、制服しか着ません。



 こんな糞ド畜生作品を読んでくださりありがとうございます。

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