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三話、平凡な高校生はいつだって成長の気持ちだけが友達さ!

毎日20時更新予定

◆◇◆

「今日の訓練は以上になります!! ああ、と……出来ればー、そのー、他の方にも参加を促していただけると助かります。ああっ、別に吾輩は無理にでもとか言ってるわけじゃなくてな?」



 4日目の訓練が終わり(俺は初日と同じ内容)、【体力上昇Lv3】【精神上昇Lv4】【飢餓耐性Lv2】【疲労耐性Lv3】を手に入れる。



「――――イヤミさん」



 水を飲みながら声のする方へ目を向ける。


 そこには剣を片手にイヤミへ声を掛けるサカイがいた。その表情は何処か不敵な様相を秘めており、妙な不安を覚えた。



「むー? 何かな、サカイ殿」


「俺と試合しませんか?」


「…………ほお?」



 イヤミは髭を指でつまんで撫でて、サカイを舐めまわすように見る。イヤミ×サカイという単語が脳裏に浮かぶ。



「ちっちっち、いやぁ~吾輩の勝ちであることは分かり切っているので止めた方が良いよぉ?」


「イヤミさん、実は俺、剣術スキル、というのを先ほど手に入れたんですよ」


「!?」



 イヤミが驚いたのか表情に明らかな焦りが浮かぬ。



「…………」



 俺は自分のスキル欄をチラリと見た。


【剣術Lv10】

【体力上昇Lv3】

【精神上昇Lv4】

【飢餓耐性Lv2】

【疲労耐性Lv3】



 【剣術Lv10】



「(大丈夫、大丈夫……ずるじゃない、ずるじゃない……。四日で手に入るスキルだし割と二ヶ月ぐらいでレベル10になるはず……あと多分、サカイも剣術以外のスキルも持ってるはずだから……)」



「おおお!? 流石ですなッ! 勇者様はぁぁっぁあああ! このエミール・ミートソース、驚きましたっはッ。

 彼の剣聖はその一生をかけてようやくレベル八に到達したというのに……」


「ぐはぁッ!!」「どうしたソラ」



 吐血して胸を抑える。まさか流れ弾が飛んでくるとは思わなかった……。



「(……僕は屑です……っ……。この力は可能な限り人助けに使うので罪悪感(痛み)よ去ってくれ……)」



 胸の痛みに対して全力で謝罪をしてことの様子を俯瞰する。



「イヤミさん、自慢していましたよね。

 自分は剣術スキルを僅か二ヶ月で手に入れたって…………俺、四日目で手に入れたんですよ」



 ニカっ、自慢げに笑むサカイ。とても嬉しそうだった。



「ほえ? 確か団長は剣術サボりまくって二年でようやく剣術スキルレベルいアギャアアアアああアアアアア!!」



 斬られてあぴゃーと飛ぶエミール。斬ったのは何とイヤミだった。


 真剣に付いた血をこれ見よがしにサカイへ見せてニタニタとイヤミは笑う。



「そこまで言うなら仕方ありませんなぁ……では吾輩が御相手しましょう……」


「っ」


「ペロリ……さて、ビビって下がれクソガキ……」



 剣に付いた血をぺろりと舐めて臭さにゲロ吐いたところで試合をすることが決まった。



 ~試合ダイジェスト~


 イヤミ「うおー」→転ぶ→サカイ WIN!


◆◇◆

 翌日の昼間。サカイはクラスメイトに囲まれて楽しそうに話をしていた。



「サカイ君、騎士団長に勝ったって本当!?」


「はは、ま、余裕だったよ!」



 訓練に参加しているクラスメイトは全体の約8分の一、他のクラスメイトは地球に戻れない、現実が受け止められない、部屋のPCにエロ画像を大量保存している、などの理由により精神が参っていた。



 その時にクラスのまとめ役、サカイが騎士団長に勝利したという知らせを聞いたのだ。


 勇者である自分にも何か凄いことができるんじゃないか、と思い始めていた。



「すげえ!! すげえすげえ!」


「おいおい、やめてくれよ。俺は……まあ……次元が違過ぎたってだけさ」



 尚、その言葉で何名か落ち込んだ。



「短パンニーソをハチミツで煮込んで舐めまわしたい」



 サカイは窓から外の様子をチラリと見る。そこには全力でダッシュを繰り返すソラの姿があった。



「ふっ…………だっさ」



 尚、サカイがこの四日間で訓練に参加していた時間は40分である。

◆◇◆

 城の外周を走る。ただ、無心に。



「ふっ、ふっ、ふっ……」



 走り続けて一時間、肺が軋みを上げても尚続けると一気に目の前が開ける感覚が現れる。



「っ、し」



 ペースをアップする。太腿が痛みを訴えるも今は邪魔なので無視する。後で愚痴は聞いてやるから、と自分の太腿に言っている辺り疲れが出始めているらしい。



【疲労耐性Lv3】が【疲労耐性Lv4】になりました。



「!(一気に楽になった……!)」



 レベルが1から2に上がる際はほんの少しの変化しかなかったのに対して、目に見えて分かるほどの変化に驚く。



 更に進む。走る、走る。何度見たかもわからない景色を置き去りにして。すると隣には友人の姿があった。



「よっ、調子どう」


「まあまあ、かな。神崎はどう」


「小菅な」



 走る足を止めない。友人も着いてくる。



「僕の方はぼちぼちかなー、スキルの数が三つになってレベル2になったとこ。聞いた話によるとこの成長スピードはかなり速いらしいね」


「そか」



 走って走って走り続ける。今は何よりも基礎体力がほしい。限界を越えても尚先に進みたい。



「毎日毎日、よくこんな走って飽きないな?」


「そりゃ、成長は数字で明確に現れるならやる気は一段と上がるさ。

 それにこの世界じゃ知力より筋力の方が重要そうだしさ」



 友人の問いに応えるもそれでは納得できなかったのか更に問いを投げてくる。



「いやいやそれにしたって疲れるし精神的にきついだろ?」


「まあそうだが……」



 努力とは苦しいもの。その必然的にぶつかる現実にどう向き合っているのか、友人はそれを聞きたがっている様だった。


 だが、しかし。



「それでも人は成長し続けるべきだろう」

「…………」



 俺はそれに対して現実的な答えを返す。



「努力は苦しいがそれを続けるのが人だ。

 精神的には勿論辛いが、それは止まる理由になれないよ」


「…………そか」



 そう返すと友人は俺から距離を取って何処かに行ってしまった。



「(? 何か機嫌でも悪かったのかな)」


「――――おい、ヤマナミくん」


「ん?」



 声を掛けられナイフを片手に振り返す。それはその声の人物は俺にとって刺殺したくて堪らない陽キャ君だったからだ。



「なんだ? サカイくん」

「…………まずは止まれよ」



 ……止まれ? 走るのを、止めろと、コイツは、言ったのか? 今、コレは。



 内側で赫怒がより一層高まった瞬間、それを察知したため精神を問答無用で鎮める。


【精神上昇Lv4】が【精神上昇Lv5】になりました。



「(………………チッ)」



 俺は足を止める。何か用事があるらしい、その用事を聞く必要性があるかどうかを判断したら即座に再会しようと誓う。



「なんだ」


「あのさ、お前――――邪魔なんだけど?」



 サカイはニヤニヤとしながら宣言する。俺は城の方を見る、窓が少ないため目撃者はいない。



「邪魔?」


「ああ」



 普段は見せないような邪悪な顔を浮かべる。



「そか。で、他に要件は?」


「…………は?」



 サカイが固まる。



「それを伝えたかっただけ(・・)ならもう要件は済んだと判断しても問題ないだろう? それを確認したいんだよ――――で、他に要件は?」


「…………」



 サカイは右の拳を雑に振るい、俺の頬を殴り付ける。



「…………」



 足の裏で蹴り飛ばされる、俺は尻餅をつく。腹部にじんじんと痛みが広がる、ステータスとやらの差らしい。



「…………」


「…………」



 俺は無言で立ち上がり、ズボンに付いた砂を叩き落とす。



「――――で、他に要件は?」



 サカイがギリ、と音が出るほどに強く歯を食いしばる。



「どうしたんだ。何を怒る。俺は極めて理性的にサカイ君と会話しようと努めているのだが……どうかしたかな?」


「…………そういうとこなんだけど、気付かないの? 他の奴のために言ってるんだよ? 俺」



 サカイが余裕そうな表情を作る。それを見てただ呆れて。



「すまん、分からん。だけど特に説明もせずに分かれと子供のように駄々を捏ねられては困るよ、もう高校生なんだからもう少し努力しようね? ボク(・・)


「!!」



 胸倉を掴まれる。顔面偏差値が無駄に高いサカイに捕まれると、どうにもこっちが悪役に見えて仕方ない。



「吹っ掛けてきたのはお前だ。

 説明不足なのもお前だ。

 お前がキレてる相手も(・・・・・・・・・・)お前だ(・・・)



 無意識にそこの冷えるような声が出た。それを聞いて戸惑ったのかサカイはビクリと震えて手を離した。



「……じゃあな」



 もう面倒で、けれどもどうにか別れの言葉を口にして踵を返そうとする。刹那に。



「……お前が努力とかだっせえことやってんのな!」


「…………は?」



 …………?


  ??????????? ――――は…………?



「お前、四日も頑張ってまだスキル一つもないんだろ?

 俺さ、少しの訓練でスキル手に入れたんだよ。分かるかな? お前がどんだけ無駄な努力して成長しても天才には勝てないんだわw」


「…………」



 ……いつもなら『俺たち今、その話してないよ?』とでも返していた。

 それでも子供のような返しをするなら溜息だけ吐いて走る予定だった――――いつもなら。



「お前、今。なんていった?」


「あ?」



 けれどこいつは今、成長を、軽んじたのか? 成長を、そのための燃焼を、無価値、と?



「お前、成長を、軽んじたのか?」


「…………!」



 にやけた? 今、口元を歪めた……のか……? ダメだ、上手く視覚が上手く機能しない、よく見えない。赤く、朱く、視界が染まる。鉄の味が口に広がる。



「ああ。俺は最初からそんなもの必要ないんだよ、すまないね。

 別に軽んじてはないけどさ。そういうのって凡人がやるものであって勇者は――――」


「やめろ」



 やめろ、やめろやめろ。その先はやめてくれ。

 痛い、苦しい、喉が、焼ける。唇の端を牙で潰して痛みで衝動を抑える、



「やめろ……頼む、やめてくれ。怒りが、抑えられなくなる」


「っ!?」



 一瞬、ほんの一瞬だけ取り戻せた視覚はサカイの戸惑う顔を捉える。ああ、これでよかった。怯えている、これならきっと逃げてくれ、r



 ――――サカイは俺を蹴飛ばした。その後、馬乗りになって胸倉を掴み、激昂と共に殴り始めた。



「ッうるっせえ!! お前が、陰キャが、指図するな! いつも、いつもお前はそうだ! 一人の癖に、輪に入ろうとしない癖に、クラス会も誰もラ〇ン知らなくて呼ばれなかった癖に!! 俺は凄い、凄いんだよ。なのにどうしてお前はいつもいつも、俺の上に……ッ! あの時だって(・・・・・・)――――かひゅ」



 瞬間、サカイの鳩尾に拳が捻じ込まれた。



「――っ――ぁ…ィ゛……っ…」



 息が出来ないのか掠れた息遣いが響く。



「サカイ、陰キャがどうだの才能がどうだのと、関係のない話をいつまでしている。それだけなら別に無視できたが……お前は成長という尊い概念を天才にとっては無価値である、などとほざいた」


「っ、……っ……」



 瞬間、内側で何かの変化を感じた。サカイが俺を見上げて恐怖し、涙を流してる。



「さっきも言ったはずだぞ。お前がキレてる相手もまたお前だ。

 俺はレベル一で精霊装もないという評価を受けている。訓練でもそれは目に見えて明らかだろう。

 対してお前はレベル一だというのに能力値が既に騎士レベル。精霊装も高性能なもので、先日に至っては騎士団長すら下した。

 客観的に見てもお前が怒る理由などどこにもないんだよ――――お前の内面を除けばな」



 サカイの見下し、その上で正確な評価を下す。


 客観的に見ればサカイは俺などに興味を持つはずがない。どこにでもいる一モブとして扱われてしかるべき存在だ。


 だというのに。



「学校生活でもそうだろう。


 俺は友達が数人程度、クラスメイトからは遠巻きにされている。成績も……体育の成績もお前には及ばない。


 お前は友人も彼女も親もいて、クラスメイトからは頼られて成績も優秀」



 ――――コイツはこんなにも、俺にコンプレックスを抱いてる。

 膝を曲げ、頭を掴んでそう呟く。



「お前は何を羨ましがってる? サカイ」


「~~~~!」



 サカイは顔を真っ赤にさせ声にならない声を上げ――――殴ろうとする。


 俺は距離を取ってサカイへ告げる。



「なあおい、気付けよ優等生。お前が見てんのは平凡な高校生だ。


 ――――だから、自分のことすら掴めていないその様は心底不快なんだよ。


 それが分からないなら。目が覚めるまで、相手してやる」

◆◇◆

 その日、王城ではとある報告が行われていた。



「何? サカイ殿と……ええと、あの無能がトラブルを?」


「……はい、どうやら仲が元から険悪だったらしく……それが爆発したのかと」



 執務室のような場所で報告を聞く国王。手には『ムチムチ学園、女子の花園に男は俺だけ!? 2』と書かれた本が握られていた。



「……はあ、で? 被害状況は」


「ええと、はい、その……前歯のうち三本が欠損、臼歯は2本。右脚の骨に三か所ほどヒビ。左脚にも二カ所。


 加え左脚は関節部が270度にネジ折られて骨が露出、両肩の骨も破壊されており他にも肋骨、腎臓、頭蓋骨、あらゆる個所に壊滅的な破壊跡が刻まれており……


 治癒士によると身体は本人の努力したいで動くかもしれないが、精神がグチャグチャに壊されており、時間を置いても良くて精神病者、悪くて廃人である……と」


「…………えっと……………なんて?」



 国王は思ったよりも強烈な報告に困惑して、思わず眉間を指で揉む。



「す、すまぬ……余は今、連続殺人鬼への拷問の報告を聞いていたのだったな……どうも疲れが溜まってるらしい」


「国王陛下……仕事、一枚も進んでないのに疲れが溜まるのですね」



 国王はこほんと咳ばらいをしてから手に持っている書物を机に置き、その上に書類を乗せた。



「ふむ、だがそれだけの攻撃をするとはサカイ殿はあの無能を相当嫌ってるらしいな……だが、被害者が精霊装を持たぬ無能でよかった……教会からの圧力も少なく済みそうだ」


「い、いえ! その」


「なんだ! まだ何かあるのか」



 慌てふためく兵士に苛立ちながらも聞き替えす。この後兵士の言葉が彼を更なる困惑に叩き落すとも知らずに…………



「あの……その、今の被害状況は全てサカイ様の方(・・・・・・)……です」







「…………は?」

この辺から本性がで始める。




 この犬畜生作品を読んでくださりありがとうございます!

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