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(たぶん)二十四話(だったと思う)、ソラは怠惰を忌み嫌う。

前回のあらすじ


 ソラ・ヤマナミに追い詰められた少女ルノは、死を覚悟したが謎のイケメンの登場によって阻止された。


 そしてルノの唇を奪った男の正体は……!? そしてソラ・ヤマナミを倒すことは出来るのか!!


「ふぇ、ぁ……♡」



 目にハートが浮かんで、膝を付いて涎を口からだらしなく垂れてしまっているルノの様子はどこか雌猫を思わせた。


 その様子を見て男は気まずそうに、ソラはちょっと見ちゃいけないモノを見た気がすると察して目を逸らした。



「身体に染みついたものはずっと残ってるものなんだね。

 僕の唾液を飲んだらそれだけで発情するのもいつも通り.

…………?」



 男はその様子を見てはて? と首を傾げる。見ればルノの息はとてもあがっており、男の足に身体をこすり合わせてにゃんにゃんいっていた。


「……なんか、、しばらくシテなかったからか、これ、輪をかけて酷いことになってるような…………




 ……………………まあ、いいか」


「よくっ♡ にゃいっ…! ふ、にゃぁ……♡」



 身体が完全に制御下にいないのか、手を離そうとしているが離せないのか完全に雌としての本能に従ってた、身体が。



「…………そして知るといい、これが怠惰の」

「いやいや……♡ えっちする……♡ ルノはまだしゅきしゅきがとまってにゃいの……♡」



「…………」

「…………」

「にゃぁ……♡」



 冷静な男二人、初所期のメス一匹。

 微妙に気まずい空気が流れた。



「…………」

「…………場所、移していい?」


「…………うん、まあ……いいよ」


◆◇◆


「……!?」



 ――気が付いた時には――絞首台の下にいた。



「ここ、は、なんだ……? いきなりギャグ路線からシリアス路線に切り替えだと!? …………俺は着いていけんぞ……!」



 首に拘束具が嵌められ、周囲にいる人々が口々にソラへと身に覚えのない罵詈雑言を投げつけて――――ギロチンがソラの首へと堕とされた。



「!?」



 全力で力任せに拘束具をぶち抜こうとする――――出来ない、余りの硬さにどうにも出来なくなってしまう



「――――」



 首が切断される刹那に、ソラは自覚した。



「(これは……幻術だ)」



 自覚し、した上でギロチンの刃を受け……思考が死ぬ刹那に身体ごと再生させる。



「……これが、怠惰の権能、か?」


「…………ふ、ギャグ時空味も少しばかり抜けてきたかな」


「ごめん今のでかなり戻った」


「じゃあ忘れてくれ」


「おk」



 遠くで戦闘に介入してきた男が立っていた。なんだか恐ろしく憐れなモノを見るような目を向けてきた。



「ハッ、面白い」



 腕の感覚が戻っていく、気が付けばソラの手には折れた剣が戻ってきており



「――――消し潰してやる」



 一閃。そうして世界が斬滅された。


 観衆もギロチンも処刑人も、すべてすべて死滅する。


 ――――気が付けばソラは元の世界に戻っていた。


 発情中のルノも男も残っていた。



「君は、憐れな奴「はぁ……♡」だな」



 でりしゅ~でりしゅ~♡(発情中の雌猫一匹)


 シンプルな作りの鉄剣を手に、男もまたソラと対峙した。



「憐れ?「でりしゅ~♡」可哀想? じゃ「でりしゅ~♡」あ死んでくれよ、そしたら俺は大喜びだ」



 瞬歩で接近し、そのまま逆手の斬りあげを放たんとするソラへ、男はただ悲しそうに剣で受け止めた。




「すま「しゅきしゅき♡」ないけれど、ソレは出来「しゅき~♡」ないよ。僕はもう死んでるからね」



 ソラの狂気的な攻撃欲の乗った斬撃を男は流して、すれ違い様にソラの腹部を斬りつける。


 流れるような剣だった。舞のような剣に見惚れ、気が付けば死んでいる。


 この男と戦った男はそんなことを思うのではないだろうか。


 ――――3本ほどの剣が一切に飛んでくる。達人の刺突並みの精度を有した剣はソラの背中へと突き刺さり肺と腎臓を潰しだす。



「(ルノ、この状態でも念動使えるのか……)」

「でりしゅ~♡」(すりすり)


「――――で?」



 だからなに? という副音声を乗せながらソラは返しの刃で一閃を放とうとする――――だが。



「な、に……?」


「弱い「っ……♡」よ、君は。あとルノ、〝弱い〟に反応しないでね」



 ソラの攻撃は腕を切断(・・・・)され、実行すら敵わなくなった。



「っ……」



 武器が無くては戦闘にはならないと足払いを放って背後に逃げようとするもしかし。



「っ!?」



 ふくらはぎに一瞬で刺突が10個所(・・・・)放たれた。



「っ、らァ!!」



 しかしと言ってそこで止まれば死ぬことは間違いない、ソラは負傷した足を火魔法で爆発させた(・・・・・)。それの衝撃で身体の半分が火傷を負ったが何とか距離を取ることに成功。



「(剣の感触がおかしい。何かおかしいぞ……

 一度目は北〇の拳に出てくるト〇兄さんのような柔の攻撃。

 二度目はラ〇ウみたいな剛の属性が乗ってた。

 しかも三度目に至ってはまるで北斗宗家の祠にあった女神像に触れたシ〇チのような奇抜さがあった――――全部の剣が、全部違う誰かのような……)」



 ――――僕はもう死んでいる。

 ――――幻術。

 ――――変幻自在の剣技。


 その上で分析し、答えへと半ば直感で辿り着く。



「なるほど…「でりしゅのにおい……しゅき」…憑依、か」


「……本当に末恐ろしい子だ。今の一瞬で言「すんすん……♡」い当てるとはね」



 諦めたように目を伏せて、男は話し出した。話を平然とするのは余裕があるという意味であり――――全力で戦うソラに対する強者の自負なのだろう。



「怠惰の権能、それはルノの傍で死んだ人間を対象に発動されるものだ。

 死んだ人間の魂「んっ……♡ しょっ……♡」は天ではなくこの場所に辿り着く。そういう力だよ、君の場合は僕が引きずり込んだ、というのもあるがね。あとルノ、ズボン脱がそうとしないで」



 説明しだす男に、ソラは訝しむ。この局面でそれを伝える、という意味がいまいち繋がっていない、と感じたゆえだ。



「その上で相談なんだが……怠惰の権能に取り込まれて、ルノから手を引いてくれないかな?」


「……あ?」



 この場に留まり、ルノを殺すな、というお願い(・・・)


 それを聞いてソラは嘲笑いながら挑発気味に問い返す。



「いやあ、驚いたな。人をギロチンで殺そうとしたのは、一体どこの誰だったかねぇ?」



 即ち――――殺そうとした癖に随分と虫が良い提案だな。


 過激な人間ならばその提案すら煽りと認識し殺し合いが発生したことだろう、だが。



「――――それは君さ」



 男は確信と共に答えた。



「……?」


「君なんだよ、ソラくん。

 この場所の特性でね、ここに来た人は……その人にとって心が休まる(・・・・・)世界を映し出す」



 心の休まる場所、それがこの怠惰の権能であるといっていた。



「さっきの光景、見ていたよ。

 ギロチンの絞首台は君の力でも外せなかった、ギロチンは君が首に防御魔法を掛けても落ちてきた――――ソラくん自身ではどうしようもない死」



 即ち、それこそがソラの安心できる光景であった、と噓偽りなく男は告げた。



「本来の怠惰の権能はもっと攻撃的なモノらしいけれど、ルノの性根に合わせた結果……取り込んだ人間を無尽蔵に幸せで満たす、という能力発展した。そういうことらしい。

 怠惰の権能内部にいる人は全員、自分の望んだ安息。自分の望んだ世界で満たされ続けている。

 身体も残ってないから食事も特に心配はない、満たされたら勝手に成仏していくから永遠、なんて地獄もない」



 それをこの局面で謳い上げる、ということは。



「僕はそんなご都合主義(・・・・・)で満たす、この世界を」



 それこそが、この男の目的なのだと、告げていた。


 そんな誰もが幸せであれる世界の実現を謳い、その上で。



「この世界から〝人が傷付く〟という概念を殺してしまいたいのだよ、僕は」



 男は己の宿す闇を滲みだすかのように発露した。


 底からドロドロの何かが煮詰まって這い上がってくるような重くて苦しい憎悪。



「へえ、善意(笑)とか偽善でやってるんじゃねえんだ」


「善意? 偽善? 冗談じゃない、僕は極めて自分しか見ていない。

 その上で、だ――――君の有様は、心底不快なのさ。

 傷付き続ける修羅道(マゾヒスト)は、怠惰に染まってしまえばいい」



 ただの鉄剣、だがその鉄剣はレイピアにも大剣にも鞭にさえ変わる怪物染みたモノであり、その切っ先は。



「そのためには――」



 余りにも強大な、余りにも鮮烈なる。



「まず、君を殺すよ――――果てで、君の魂を怠惰に侵す」


「やってみろこのヘタレチ■ポがァ!!」



 ――――死の音色を奏でていた。


ご都合主義。酒も女も自由なままに満たされる世界……


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