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十四話、ソラの逃亡劇(ミスれば死ぬ)

前回の後書きであの女とか言ってたけどそういえば作者女の子の友達いなかったわ

◆◇◆

 逃亡。不慣れな路地裏を気をつけながら走る。


 静かに、障害物を潜り、そして走る。その三つ同時に行うのは入り組んだ地形に慣れないソラは困難を極まる。



「っ……、っ、っ」



 息を殺しながら走り続ける。それは普段の走り込みが功を奏してかまだまともに進むことが出来ていた。


 しかし何故、そうまでして走る必要があるのか。それはソラの背後に今なお追ってきている……否、拡大している(・・・・・・)霧が原因だろう。



【死想灰燼】

 詳細:ひとたび吸えばあらゆる臓器を芯まで侵す灰の結界。


 効果:魔法に対する抵抗力、また状態異常に対する耐性を全て0にする。


 ――――警告:吸えば死にます。



「(何だアレ何だアレ何だアレ何だアレ!!)」



 見た目は霧だ。濃厚で一寸先も見えなくなるだけの霧だ。


 しかしその正体が余りにも凶暴すぎる。



「(街の様子は……ダメだ! 飲まれた奴は廃人みたいに涎垂らして寝てやがる)」



 チラリを路地から飛び出して周囲を見れば、起きている人間もいる者のどういうわけか霧の存在が認識できて(・・・・・・・・・・)ない(・・)


 だというのに飲み込まれた奴は即座に気絶し始める。



 圧倒的戦力差、いいや戦闘どころかそもそも顔を合わせることすら敵わない。


 まるで悪い夢でも見ているのではないかと錯覚しかけほどに絶望的状態。今なお追ってくる霧にひらすら背を向け走るしか出来ない。



「(まず状況整理だ。後ろの……よくわからん灰の霧は目算秒速60メートルぐらいか?

 つかアレ、発生源何処だよ……地形鑑定で分からんかな)」



【地形鑑定】発動シマス。



 その音と共にマップが表示される――――が、冗談じゃない。というのはソラが始めに抱いた感想だ。



「(灰の霧に呑まれてる部分が全部黒で塗り潰されてる!?

 つか範囲どうなってんだアレ……もう王都の半分は飲み込んでるぞ!?)」



 マップで灰の霧が出ている部分は不自然なほどに真っ黒で、何も見えない。

 超巨大なステルスと化して今もその範囲を拡大している。


 ――――どんなマップ兵器だ。



「(つかルノって誰だよ。なんで俺恨まれてんだ……恨まれるようなことなんてした記憶しかないぞ!?)」



・勇者(宗教の象徴)のリーダーを瀕死状態に追い込んだ。

・副騎士団長の精神崩壊するレベルで拷問。



「(だが幸い動きは遅い。走れば余裕で振り切れる……体力も普段の走り込みでまだまだ余裕がある。このまま行け、ば――――)」



 刹那に。ソラは全力で背後に飛んだ。



「……嘘だろ、おい」



 ソラは目の前に出来たクレーター(・・・・・)を見てゴクリ、と唾を飲んだ。


 行き先を見ればその術者……王宮で見た魔術師が虚ろな目をしてこちらを覗き込んでいた。



「一応言います。そこをどいてください」


 返答は巨大な火炎の柱を以って返された。発動の瞬間、前方に転がりソラは何とか火柱の餌食から逃れる。


 そしてその勢いのまま足払いを放って体勢を崩す――――が。



「自爆、術…式…」

「!?」



 ドォォォォォォンッッ!! ――――肉袋が巨大な爆撃となった。


 大爆音と共にソラは黒焦げになりながら、吹っ飛ぶ。


 そんな状態でも立ち位置を操作して『霧とは反対側へ飛ぶ』というように操作しているソラ。その在り方は最早狂気であるが結果的に助かった――――が。



「(騎士、冒険者、傭兵……クッソ、待ち伏せのオンパレードか!)」



 破損した鼓膜を治癒で修復しながら眼下を眺める。身体も治すが致命的な負傷を何度も連続で負っていたため、着地に失敗。



「(やべ、詰んだ……!)」



 そしてそんな足を挫いたソラを見逃す敵がいるわけもない。

 剣が、魔法が、足に絡む拘束が……その間僅か一秒で四方八方から攻撃が飛んでくる間合いになった。



 剣術で潰す? いいや、体勢的に不可能だ。というか抜刀すら厳しい。

 治癒魔法を使う? いいや、その瞬間に剣が飛んでくる。

 火魔法を使う? 出来るかもしれないけれど四面楚歌の局面だ。周囲を燃やす魔法とかあっても調べてる間に死ぬ。



 ――――詰んでいる。この状況、どう足掻いても間違いなく致命傷を負う。


 ならどうするか? ――――簡単だ。



「ッ、ま、けるかボケがあああああああ!!」



 ソラは目の前の剣撃を腕で受けた――――腕が切断される痛みに襲われるが無視して足払い。


 次いで飛んでくる魔法は転ばせた騎士を盾にして躱す。


 背から飛ぶ槍――――心臓を避ければ問題なし。

 飛んで来る矢――――火魔法で破壊。



「嗚呼、嗚呼! 最高だ、今、一分一秒成長し続けている気がする!!

 手足のニ三本は後で生やせば問題ない! 止まれば死ぬ、なら進めばいいだけだ! なあに、何も心配ない。致命傷を無視するなど誰でも出来ることだろう!!」



 第二、第三、第四と飛んでくる刺客を即死に至らない致命傷で受け続ける。


 気分が高揚してソラは発狂しだす。それはそうだろう、何故なら逆境とは――



「逆境とは、成長の肴でしかないものなァ!! あははははははは!

 素晴らしい、素晴らしいよルノ嬢!! ――――必ず殺す!!」



 狂ったように哄笑に身を躍らせ、血走った瞳をむき出しにし、ありとあらゆる致命傷を抱えた身体で前方へと疾走を開始する。


 腕、足、耳に指にとあらゆる部位の肉が抉れて、壊れて、破損していく――――だが、それだけだ。


 平凡な高校生なら誰でも出来る当たり前の対応。


 止まれば死ぬよ。進めば生きる可能性はあるよ。

 ――――なら進もう。


 平凡な高校生ソラ・ヤマナミはその思考を、平然と、当たり前のように繰り返す。



「(あと少し、あと少しだ!)」



 だが、必ずそういった思考に『ついていけない』と思う奴は一定数いるのだ。



「――ソラ、本当に変わらないんだな」



 そんな落伍者。その代表たる男は勇まし過ぎる背を見て、切なげに呟いた。

呼んでくださりありがとうございます。はは。


溜め書きが残り少ないので一日一話登校に切り替えます。ごめんよ、

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