いちの巻
これは、社会人の姉が中学2年生の弟にいかに勉強をさせるか奮闘する物語である。
ある日、姉は母から頼まれた。
「弟の勉強を何とかして!」と。
いきなりそんな事を言われても勉強というものから離れて何年も経つ姉にとって、それは難題だった。
しかし、可愛い我が弟のため。一肌脱がない訳にもいかぬ。
と、頭を悩ませること数日。姉は早速思い付いたことを実行に移してみた。
思い付いた事と言っても、所詮は素人。単純な思い付きしかない。が、やるしかない。
まず、始めに本屋に行ってみた。中学生の参考書とやらを見るためだ。姉は中学生の時、塾に行くのが嫌で嫌で仕方なかった為、自分で勉強する道を選んだ。参考書や問題集を買っては解き、買っては解きの繰り返し。自分でも当時はよくそんな事をやったもんだと思う。今思えば、塾に行ってプロに教えてもらった方がかなりの近道だった。結構な遠回りをしたものの、当時はあまり勉強が苦ではなかった姉はひたすらに問題集を解いたものだ。
おっと、話が脱線した。これは弟の勉強をいかにするかの話である。
本屋に行った姉はまずは弟に国語を勉強させるため、漢字ドリルと読み解き問題集を買った。
勉強とは日々の積み重ねが大事。少しでもいいから毎日勉強する癖をつけることが大切。と、誰かが言っていた気がする。
本を読まない弟にいかに読解力と語彙力を付けさせるか。考えた末に問題集を先ずはやらせることにした。
しかし、全く漢字を覚える気のない弟。読み解き問題も解き方を教えてもその通りにせず、流し読み。面倒臭がっているのは、丸見えだった。
終いには、「こんな普段使わない漢字覚えたって意味ないやん」の一言。
弟よ。母に言われて姉に勉強を見てもらうことを了承したのだから、もうちょっとやる気を出してくれ。と、姉は嘆く。
ああ、これからどうしよう。
姉は頭を抱える。今日も可愛い弟に勉強をさせるためにはどうすればよいのかを常日頃から考えるようになった。親でもない単なる姉が弟の勉強についてこんなにも頭を悩ませる。そんな姉、きっと他にはいないぞ弟よ。
有り難みを知れ。と、思いながら姉は今日も可愛い弟のためを思って奮闘するのである。