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僕は形ないモノになり、君を守り続ける。

作者: 七瀬







僕は、いつも君の傍に居るよ。

そう、君の耳元で囁く。

でも、僕の声は君には届かないね。

そう、届くはずがないんだ!

だって! “僕はもう既に死んでるから。”






君と出逢ったのは、ちょうど3年前だったと思う。

桜が咲き始めた3月頃だった。

僕と君は、初めて出逢った。

あれは! “運命的な出逢い”だったんだよ。

僕と君は、通りすがりにぶつかってしまって僕が直ぐに君に

謝ると? 君は、僕の顔見てクスッと笑ってくれた。

僕も咄嗟に君につられてクスッと笑う。

そんな何気ない事だったけど、それが僕は嬉しかったんだ。

随分、感じた事のない人と繋がった瞬間だった。

僕は、心を閉ざしていたから。

人とあまり関わらないように生きてきた。





僕の家族と僕は上手くいかなかったんだ。

僕だけ落ちこぼれで、僕の3つ上の兄と僕はいつも比べられ

兄は優秀で、その弟は落ちこぼれとして父親は見ていた。

母親は、いつも父親の言う事を聞いていた。

間違っている事でも、父親が“正しい”と言えば?

皆、それに従うしかなかった。

兄も、父親には頭が上がらず僕だけいつも怒られる。

父親は僕を、躾と称して殴る蹴ると暴力を振るった。

親の愛情を感じた事のない僕は、友達もできなかった。

唯一、僕の味方だった祖父の爺ちゃんだけは僕の味方だった。



『ミカサ! お前は親父のようになるな! お前はお前の道を

行けばいいんだよ。』

『ありがとう、爺ちゃん!』





・・・これが最後の爺ちゃんとの会話だった、

あれから、10年以上の月日が流れた。

僕は、自然と彼女を受け入れていたのかもしれない。

不思議な事にね!

彼女も、僕と同じように想ってくれていたんだ。

人を好きになる事って、案外簡単な事だったのかもしれないね。

僕と君は、あれがきっかけで自然と仲良くなって。

気が付くと、ふたりで居る事が増えた。

そして! 僕は君に告白したんだ。



『瑛菜ちゃん! 僕と付き合ってほしんだけど? どうかな?』

『うん! いいよ。』

『ありがとう!』





僕と君は、この頃になると?

あまり話さなくても、お互いの気持ちが通じ合っていたんだ。

これは、自然の流れだったのかもしれないね。

付き合う前と付き合ってからの僕と君は何も変わらないし。

いつもの僕と君だった。

僕は、君と居ると? 凄く穏やかでいられるんだ。

本当の僕を君は、優しく包んでくれた。

だから、僕も君に心を許せたんだよ。





 *





・・・だけど。

急に、兄から連絡が入ったんだ。

父親が亡くなったってね。

僕は、もうあの家族と関わりたくなかったのだけど?

君が、【行って】というから僕はしぶしぶ行く事にした。

お通夜に出ると? 兄も母親も悲しそうにしている。

たくさんの父親の親戚や仕事の同僚の人達も来ていた。

僕は、静かに部屋の隅に一人で座っていると?

僕を見つけた、兄が僕の横に座る。



『おう! 久びりだな~ミカサ!』

『・・・・・・』

『なんだよ! 愛想悪いな~お前だって親父が亡くなって

嬉しいんだろう? 俺は親父が嫌いだったからな、親父が

死んでくれてせいせいしたわ~』

『・・・なに、それ?』

『母さんだって! 親父には苦しめられてたんだから、これで

少しは楽に暮らせるんじゃないか!』

『今更なんで、そんなこと言うだよ!』

『お前だって俺よりも辛かったはずだよな! なんで素直に

喜ばないんだよ!』

『もうやめなさい! 皆の前で! スミマセン、ウチの息子たちが、』

『母さんは、そうやっていつも親父をかばってたよな!』

『えぇ!?』

『・・・僕は、いつも一人で誰も味方がいなかった。』

『ミカサ、』

『僕にとって、こんな家族は必要ない!』

『・・・ミカサ、』





・・・僕はそれ以上、何も言わず実家を出た。

僕にとって、“偽の家族”だ。

居心地の悪い、サイテーの場所。

僕は、あれ以上あそこには居たくなかった。

早く、君の居る場所に戻りたかったんだ。

それが、いけなかったのかもしれない。

僕の心は君の元へ帰りたいと焦っていた。

僕は赤信号になった事も気づかず横断歩道を渡った。

遠くの方から一台の車が僕めがけて突っ込んでくる。

気が付けば、僕は君の隣に戻ってきていた。

でも? 何がかおかしい?

君は、僕の声も僕という存在にも気づいていないようだった。



『ねえねえ、どうしちゃったんだよ! 僕はここに居るよ。』

『・・・・・・』

『瑛菜ちゃん!』

『・・・・・・』





・・・次の日。

何故? 瑛菜ちゃんが僕に気づいていなかった理由が分かった。

“僕、死んだんだ”

あの時の、交差点で僕は亡くなっていた。

その連絡が、瑛菜ちゃんに入る。





それからも、僕はずっと君の横に居るよ。

どんな事があっても! 君の傍に僕は居る!

今度こそは、もう失いたくないんだ!

大切なモノは、僕が守る! 僕の大切な君。

ずっと、君の傍に居るからね。





最後までお読みいただきありがとうございます。

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