第五話 『戦闘開始』
こんにちは紅月です!最近夜になるのも早くなってきましたねぇ〜
第五話です!よろしくどうぞ!
——高い高層ビルが立ち並ぶ、大きな街。様々な衣装に身を包んだ人物達がその街を歩いていた。
そしてビルの周りを飛び回る車輪の付いていないバイクや、車達。
そのバイクや車に混ざって、リオンも車輪のついていないスケートボードに乗っていた。
『スカイボード』と言われるものに両足を乗せ、両手をポケットに入れ、向かい風を受けながら空を走っていた。
リオンは同じく空を乗り物で駆けるプレイヤー達とぶつからぬよう、上手くスカイボードを操作して目的地を目指す。
この街はLSO内でも最大の都市と言われる『未来都市キャレット』、一番発展している場所なだけあり、様々な施設、いろんな商人達がこの街にやってくる。
高層ビルを拠点としているのは、LSO内でも名の知れたプレイヤー達ばかりで、大工を生業としているプレイヤー達と取り引きをしてビルを建ててもらったという噂がある。
まるで現実のような取り引きも、LSO内での楽しみの一つである。
リオンはスカイボードで空を滑りつつ、周りに立ち並ぶ高層ビルを横目で見ながらそう心の中で感じていた。
そして大きなビル群を抜け、十字路に出ると角を右に曲がった。
曲がってすぐリオンの目に映ったのは、雲の上まで続く大きな丸い、ヨーロッパ風の建物。
ここが本日リオンの目的地でもある『闘技場』。
本来の名は『バベル転生闘技場』。バベルという悪魔を闘技場が建てられた場所で討ち取った、という設定である。
だが何かと長い呼び名のため、しっかりフルネームで呼ぶ人は少なく、大抵の人達は闘技場と略して呼んでいる。
そんなことを考えている間に、リオンは目的である闘技場に到着した。
右手の人差し指を前に差し出し、下にフリックすると、どこからとまなくリオンの目の前に白色の文字が現れた。
現れた四つの文字の中から、上から二番目に出てきた「call skyboard」を二回タップした。
すると、リオンが両足を着かせていたスカイボードは白いチリのようなものを残し、瞬く間に何処かへと消えていった。
地面に急降下するものの、リオンは態勢をそのままで大きな物音も立てず静かに両足を地面に着地させた。
そして、目の前に表示されている画面の左上にあるばつ印をタップすると、表示されていた文字達は消えていった。
風の抵抗のせいでボサボサになった髪を少し整え、フードを深く被りリオンは大きな四角い入り口の中へと入っていった。
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闘技場の中に入ると、そこは外見と同じで内装もヨーロッパ風に作り込まれていた。
真ん中には剣と盾を構えた戦士のような人物の銅像が建てられており、その銅像の周りに沢山の椅子が配置されていた。
壁際にはいくつもエレベーターの入り口のようなものがあり、そこに入っていった人は瞬時に何処かへとと消えてゆく。
リオンはゆっくりと真ん中の銅像に歩きつつ、周りを見渡した。
「えーっと……」
リオンは小さく呟き、その場に立ち止まり、再び人差し指を差し出し下にフリックした。
そして上から三つ目に表示された「message」という文字をタップした。
すると上から順番にいろんなプレイヤーの名前が横向きに表示された。リオンは、上から二番目にある「レイ」と書いてある文字をタップした。
すると、スマホのアプリなどでもよく使用されるメッセージ画面が表示され、
『パスワードは「3649564」だ、遅れんなよ』
とだけ書かれていた。
リオンは心の中でその数字を何度も読み上げると、左上に表示されているばつ印をタップし、表示を消した。
そして再度周りを見渡し、人が使用していないエレベーターのような装置を探した。
「おっ、」
リオンが右を向くと、ちょうど人が消えたばかりの所を見つけた。
両手をポケットに入れつつも、足音を立て急ぎ足でエレベーターのような場所へ向かうリオン。
誰にも先に入られずにたどり着くことができたリオンは、一息つくと笑顔を見せた。
「えーっと……3649564」
頭の片隅に、しっかりと置いていた数字を、無人の部屋の中で発言するリオン。
すると、リオン以外誰も近くにいないはずのエレベーターの中から急に声が聞こえてきた。
『プライベートマッチ、リオン様ですね。了解しました、転送を開始します』
あからさまな機械の音声。少し高い女性のような音声が発言を終わると、リオンの体が急に白く光り始めた。
そしてリオンはゆっくりと目を閉じ、再び聞こえてくるであろう音声を待っていた。
『転送完了、「リオン対ヨル」のプライベートマッチ部屋です』
リオンは音声の声が耳に響きわたると、ゆっくり目を開き、右足から歩き始めた。
「相変わらず便利だなぁ、『テレポーター』ってのは」
深くかぶっていたフードを脱ぎ、笑顔でそう呟くリオン。砂の地面を黒いブーツでゆっくり歩いてゆく。
彼が自分の右手側を見ると、高い塀から観客席に座り、自分を見下ろす人物がいた。
リオンと同じ真っ黒の戦闘服を身にまとい、狐目に茶色の髪。彼は赤澤怜改めLSOのプレイヤー「レイ」である。
レイは右手を自分の口元に置き、リオンに聞こえる声量で「頑張れ」と叫んでいた。
リオンはそんな彼の存在に気づくと、歩きながら笑顔でレイに向かって親指を立てた。
小さく鼻で笑い、いつも通りで安心するレイ。そんな彼の後ろから可愛らしい声が聞こえてきた。
「レイ先輩、こんばんは!」
レイは一瞬驚きつつも、その声と呼び方からして誰かすぐに特定し、ゆっくりと振り向く。
「るっ……いや、こっちではリルだったか」
そこには可愛らしいポニーテールをした、青いスカートと白いコートをきた小柄な女の子がいた。
リルはニッコリと笑うと、ゆっくり階段を降り、レイの隣に座った。
「土平が誰かとPVPするって聞いて、私初心者だし幼なじみの好で、土平に頼んでここの番号教えてもらいました!」
レイはワクワクしながら、試合の観戦を見にきたリルを見て、保護者のような視線を送り微笑んでいた。
するとリオンは、自分の目の前にあるテレポーターに一人の男が送り込まれてことに気づいた。
レイとリルも、リオンが立ち止まったことで俊太郎が来たことに気がついたのだ。
「僕はこっちでは「ヨルナ」と言います。わかってると思いますけど、ちゃんと約束守ってくださいよ」
テレポーターから踏み出し、ゆっくりと闘技場の真ん中に歩いてゆく俊太郎改めヨルナ。
遠い所から、少々威圧をかけながら話すヨルナ。
だがそんな威圧も意に介せず、リオンは嘲笑うように上から目線で答えた。
「わかってるよ、とっとと始めようぜ」
赤髪をひらひらさせながら、全身青い戦闘服で真ん中まで歩いてくるヨルナ。
立ち止まるリオンの数歩手前で、彼は立ち止まった。
数秒間の沈黙が流れる。
リルとレイの二人も、いつ始まるのかと息を飲み、その時を待つ。
沈黙を破り、リオンは笑顔で口を開いた。
「いくぜ……決闘!!!」
「いや別にいらねぇよ! その掛け声は!」
これから始まると言う時に急にふざけるリオン、それに思わずつっこんでしまうレイであった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます!
基本的に数字も漢字で書いた方がいいと聞いたんですが、今回のようなのはどうすればいいのでしょう。
良ければ教えて貰えると助かります!
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