第三話 『決闘成立』
こんばんは〜
先日半袖で過ごしていたところ、見事に風邪にやられました〜。んではでは第三話よろしくお願いします
——風が靡く、鉄柵に囲まれた屋上で三人は緑のコンクリートに座っていた。
誰も来ない静かな場所で温かな日差しに当てられながら、隅っこに小さくまとまっていた。
「ほう、チームとは何かか……」
口を開いたのは怜だった。先程の俊太郎の質問に対して、顎に手を置き首を傾げ、その質問の意図を考えていた。
怜が口を開いた直後、その隣に座る男が立ち上がった。
黒髪が風に吹かれ少しボサボサになりながらも、俊太郎の質問に対して自分なりの答えを出したのだ。
「いいか? LSOは基本的にオープンワールドでのボス討伐とか探索とかが主流なんだけど、年に一度プレイヤー同士のおっきな大会があるんだ! その大会に参加するにはチームってのを作らなきゃいけなくてさ」
悠斗は大きく両手を広げ、体中を目一杯使って目の前で座る俊太郎へと話した。
隣で座る怜は、珍しく分かりやすい説明をしている悠斗に対して関心を持ち、その調子で続けろと右手で拳を作り密かに応援する。
「んで俺らさ、今LSOでチーム作ろうと思ってんだけど今二人しかいなくて……そこでだ! とある情報筋から君が中々の腕前を持つプレイヤー、そして現在無所属と聞いて勧誘に来たというわけさ!」
言い切った。いつもならば途中で自分でも何を言っているのか分からなくなり結局最後まで話せなくなる悠斗。
だが今回は言い切って見せた。怜は古い付き合いの悠斗に成長を感じ、思わず笑顔で悠斗に称賛の拍手を送った。
当の本人も珍しく言い切った自分に満足感を覚えており、ドヤ顔で話を聞いていた俊太郎を見下ろした。
そして俊太郎は自分を見下ろす悠斗に対して、右手を前に出し、二人が思ってもいない返しを放った。
「あっ、それは知ってるっす。僕が聞きたいのはそうゆうことじゃなくて、何というかこう、チーム内での仲間同士の雰囲気とかそういう内面的なことですね」
「は?」
悠斗は先程までの自分が言っていたことがアホらしくなり、再び目の前の少年に飛びかかろうとする。
が、自分の左から感じる視線に気づきそっとその場に座り込んだ。
狐のような目で悠斗にこれ以上面倒をかけるなよと威圧していた怜は、冷静に俊太郎の質問に答えた。
「んー、それは仲間内で喧嘩みたいなことが起きたりしないかってことなのかな?」
俊太郎は怜の言葉に一度頷き、目線を緑のコンクリートに移した。
そして少しの間沈黙を続け、目を瞑り自分の数週間前に体験した出来事を二人に伝えた。
「僕には、チームを組んでいたネットの知り合いがいました。ボス討伐やPVPいろんなことを共にしてきました」
淡々と自分の過去を話し始める俊太郎。
彼の話の邪魔をしないよう、黙って大人しく二人は話を聞いていた。
風が吹き、髪があおられながらも俊太郎は話を続けてゆく。
「でもどんな事をしても活躍するのは僕ばかりで、それに不満を感じていたらしく、とうとうこの前ハッキリと言われました。『楽しくない』って。それからすかね、もう誰かと一緒に遊ぶのをやめようって思ったのは」
聞いているだけでも理不尽で、辛い過去を笑い話に変えようと話す俊太郎。
ずっと共に遊んできた人物にそんな事を言われれば普通にショックであろう、同じゲーマーとして彼の話を聞いていながら怜は心の中でそう思っていた。
「今はその友達は……」
怜は申し訳なさそうにか細い声でそう尋ねた。
すると俊太郎は、まるで気にしてないかのように笑顔を一度見せると顔を空に向けて怜の質問に答えた。
「LSOはもうやめると言ってました。フレンドも既に削除されてました」
怜は下を向き、静かに「そうか」と答えた。二人の間にはどこか気まずい空気が流れた。
辛い過去を話させてしまい、どこか申し訳なさそうにして次の話をうまく切り出せない怜。
俊太郎は話しているうちに、昔の知り合いとの楽しい思い出が脳裏によぎっていた。
楽しい思い出とは逆に、心の中は悲しい気持ちが込み上がってくる。大空を見上げる俊太郎の瞳から小さな涙がこぼれそうになる。
だが、そんな沈黙を打ち破る男がいた。
「別にお前悪くねぇだろ、自分が楽しむためにやってんだからいいじゃねぇか。何より、うちは最強のチームを目指してんだ。そんくらい強いんだったら尚更うちにきやがれ!」
悠斗は再び立ち上がり、空を見つめる俊太郎の方を見た。
黒髪の間から見えるギラギラと燃えるような瞳、揺るぎない信念と確かな目標がその瞳には映る。
俊太郎はその瞳に臆することもなく、自分も立ち上がりひとまわり高い所から自分を見つめる悠斗の方を見た。
「僕が入ったらあなた達までLSOをやめてしまうかもしれない、だから僕は絶対にチームには入りません」
俊太郎は先程までとは違い、強気に悠斗に対して返した。青い瞳で見つめ、どこか苛立ちを隠しながら。
彼の話を聞いて悠斗は自分が舐められていることに腹が立ち始めていた。俊太郎と違い、表情にイラつきを徐に表した。
だが一度自分に喝を入れ、心の中で落ち着きを取り戻した。そしてとある策を考えついたのだ。
悠斗は俊太郎の目の前に、自分の人差し指を伸ばした。
「そうか、お前腕に自信があるんだな。なら俺とPVPで勝負しようぜ。お前が勝ったら金輪際もう勧誘はやめる、けど俺が勝ったらチームに入ってもらうぞ」
悠斗の提案に対して、俊太郎は即座に返事を返した。普段ならば冷静に考えてから返事するものの、多少のイラつきのせいで冷静な判断ができなくなっていたのだ。
「いいですよ、僕が勝ったら二度と関わるのは控えてもらいますから」
「決定だな」
悠斗は不適な笑みを浮かべ、自分の指先にいる俊太郎の方を見つめた。
青い瞳に赤い髪、小柄な体型に整った顔筋。
悠斗の瞳は俊太郎を見つめていた。だが既に悠斗が見据えていたのは、この先に待つ自分と俊太郎との戦いだけだった。
ここまで読んでいただいてありがとうございます!
いや〜最後の締めの作り方がどうにも苦手なんですよね〜よければアドバイスなど頂ければ光栄です!