第二話 『振られる男』
昨日はお休みして申し訳ないです!三日に一度は必ず更新致しますのでよろしくお願いします!
——古びた校舎の中、赤髪の少年はなぜか走っていた。
廊下にいた生徒はもちろん、教室にいる生徒達も不思議な表情を浮かべつつも走り去る少年達に視線を向けていた。
「なんなんすか! ほんとやめてください!」
黒い髪をひらひらと舞わせる少年の前を走っていた赤髪の少年は声を荒げて叫んだ。
焦りを交えた叫び声。頬には汗が流れ、廊下に立つ生徒達を避けながら彼は第二校舎で逃げ回っていた。
土平俊太郎、悠斗と怜の目的の人物。
そんな俊太郎の後ろを追いかけるもう一人の男がいた。
「うるせぇ! やめてもらいたいならとっとと掴まれ、そして仲間になりやがれぇ!!!」
先程までの教室の前での態度とはうってかわり、脅迫とも取れる発言をしながら悠斗は俊太郎を追いかけていた。
高圧的な態度を取りながらも、運動能力が平均以下の悠斗は既にバテ気味である。
鬼の形相をしながら追いかけるも、頬には自分よりも二つも年下の俊太郎よりも多くの汗が流れ、側から見ても体力が切れてきていることがわかる。
俊太郎は廊下を走り切り、階段を二段飛ばしで急いで降りる。
悠斗も逃すまいと、廊下を滑りつつ体を階段の方へ動かし階段を二段飛ばしで駆け下りてゆく。
「そんなこと言われても無理っすよ! もう僕は『LSO』ではソロプレイヤーとして生きていくって決めたんすから!」
踊り場に着地し俊太郎は悠斗に対して叫ぶ。そして再び階段を二段飛ばしで降りてゆく。
必ず逃すものかと心で一度叫び、悠斗も踊り場に着地。逃げ回る俊太郎を追いかけるため階段を全て飛ばし降りようとした。
「だーかーらぁっ、それはなんでだっ——」
悠斗が俊太郎に叫び、飛ぼうとした瞬間。大きなゲンコツが彼の頭に落ちた。
「つっ——!!」
ゲンコツを受けた箇所を両手で押さえ、その場にかがむ悠斗。体中が痺れ、涙目になりながらそっと自分の背後に視線を動かした。
「ばかやろう、ちょっと落ち着け」
そこにいたのは、細い目から強い目力を放つ怜が自分を見下ろしていた。
「はい……」
悠斗はゲンコツの痛みに耐えながら、悔しそうな表情を浮かべ、渋々ながらも怜の言うことを聞いた。
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——気持ち良い風が吹く、ここは怜と悠斗の学校でいちばんのお気に入りポイントである屋上だ。
緑のコンクリートと、安全のために設置された鉄柵。その他には屋上に入るためのドアがあるのみ。
空一面には何もなく、ただただ澄み渡る青が続くのみ。そして、街を一望できるほどの景色。この学校、いやこの街一の絶景ポイントである。
だがこの屋上、普段は立ち入り禁止になっているため誰も入ることができないのだ。
怜と悠斗はとある特別なコネでここの立ち入りを許可されていた。
そして、もう一人。
「とりあえず……さっきはこのバカが迷惑かけた。わりぃな」
屋上の隅に座る影が三つ。
目を瞑り、腰を折りあぐらをかいた状態で頭を下げる赤澤怜。
両手を前に出し目の前で頭を下げる人物に申し訳なさそうな顔をする俊太郎。
頭を怜に抑えられ、無理やり頭を下げられて不満そうな顔をする悠斗。
つい先程までの事を詫び、そしてきっちりともう一度話し合うために彼らはここに来ていたのだ。
「え、えっと大丈夫なんで顔あげてください。断った瞬間襲いかかってきた時はヒヤッとしましたけど」
俊太郎は頭を下げる怜に対して、顔を上げるように要求する。
そしてつい先程、教室の前での出来事を思い出していた。
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つい先程まで、いたのかすらも忘れるほどまでに静かに黙っていた悠斗が急に俊太郎の両肩をガッチリと掴んだ。
仲間になれ、と笑顔でそう言った。
俊太郎は不思議そうな表情を徐に表し、瞬間頭を回転させた。
いったい何の仲間なのだろう、部活の勧誘か何かなのかだろうか。
俊太郎が思考していた間に、悠斗はすでに次の言葉を発していた。
「君、『LSO』してるんだろ?」
「無理です」
考えるよりも言葉が先に出ていた。俊太郎は自分で驚きつつもきっぱりと悠斗の誘いを断った。
瞬間周りには沈黙が走った。
話の内容は聞いていなかったが、振られるところだけを聞いて廊下で密かに笑う一年の生徒達。
悠斗と一緒に行動していた怜は、思わず二人から視線を逸らし笑うのを堪えていた。
そして振られた本人はというと、長い前髪で目が隠れ表情が読めないでいた。
だが、俊太郎の両肩を掴んでいた両手を話した。顔からは笑顔が消え、開いた口を閉じずに静かに立ちすくんでいた。
五秒間、悠斗は動くことはしなかった。
「っ、まずい」
怜は急に静かになった悠斗に何かを感じ取った。さしてすぐさま逸らしていた視線を元に戻した。
悠斗の前で気まずそうに立っていた俊太郎に、怜は急いで叫び始めた。
「にげろ!!」
怜が叫んだ瞬間、俊太郎の目の前に立っていた悠斗は大きくジャンプし俊太郎に飛びついていた。
その顔はつい先程までの少年のような笑顔とは違い、悪魔のような形相だった。
「仲間になれやぁぁぁぁぁあ!!!」
その悠斗の表情に恐怖を感じた俊太郎は、甲高い声で叫びながら、一年の校舎を全力疾走で逃げ出したのだ。
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「お前は本当にいい加減にしとけよな、思い通りに行かないとすぐ暴れる癖なんとかしろよ」
暖かい日差しに当てられながら、悠斗に何度も念を押す怜。
呆れと怒りを交えた表情で見つめられる悠斗は、彼の正論に逆らうことができず素直に謝ることしかできなかった。
体を縮めて隣にいる怜に謝罪をする悠斗を見て、どこか面白さを感じていた俊太郎は笑顔を浮かべた。
そして怜は、隣にいる悠斗から目の前に座る俊太郎へと視線を移した。
「一応、チームに入ってくれない理由を教えてくれないかな?」
チーム。これは悠斗と怜にとっては悲願を達成する上で欠かせないことで、彼らはLSO内で自分達のチームになる人物を探していたのだ。
「そう、ですね……まず……チームってなんでしょうか」
俊太郎はどこか気まずそうな気持ちを表情に出しつつ、苦笑いをして怜の質問に答えた。
実は昨日祖母の実家に里帰りしてました。電車の中で書こうかなーとか思ってたんですけど、どうにも人が多くて手をつけれませんでした……予定では明後日次回更新です!