第一話 『始まりの日』
第一話です!!主人公、悠斗とその仲間達の物語の始まりです!
——美しいピンク色の花が散り始めた今日この頃、雲一つなき青き空の下。
今日も忌々しき音色が大きな木製の校舎に響いていた。
「あぁ〜……やっと終わったかぁ」
その力の抜けるような情けない声が聞こえるのは、第二校舎三階に存在する三年一組からだった。
眼鏡をかけたまさしく理系だと言わんばかりの痩せ細った男性が教卓に立っていた。
男性は右手で眼鏡を触りながら、左手で分厚い教科書に目を通していた。
「はいっ、では明日の授業までに今日説明した範囲の予習を済ませておくように」
「えぇーー……」
先生はわかめのような頭をふさふさ動かしながら、自分を見つめる生徒達を笑顔で見つめた。
生徒達もセオリー通りの反応で対応していた。
そして教卓から見て右側、その一番後ろの席に座る少年。彼は大きなあくびをしながら、窓の外を見つめていた。
羽ばたく鳥群を見つめて、空に浮かぶ大きな綿飴達の行く先をジッと眺めていた。
そんな青いブレザーに身を包んだ少年に、忍び寄る人物がいた。
その男は少年の机を大きな音を立てて手をつくと、細長い目を少年に向けて話し始めた。
「なに授業中ずっーと寝てんだよ、ばか悠斗」
綺麗な黒髪をさらさらと風になびかせる少年、彼の名は日川悠斗。
悠斗は真紅に燃ゆる瞳を、自分の机を叩いた男性に向けた。
既に壊れそうになっている茶色の机が、ひしひしと悲鳴を上げる。
「あんだと怜てめぇ、知ってっかお前。そーゆーのぶしょくっていいんだぞ!」
「なんだよぶしょくって……侮辱だろ」
悠斗は椅子から立ち上がり、自分と同じ目線の高さに存在する怜という少年へむけて指を刺した。
あまりの馬鹿加減に煽っていた自分も恥ずかしくなりつつ、一つため息をこぼして怜は悠斗の間違いに冷静に指摘する。
狐のような目つきをした茶髪の男性、なかなかいい体つきをした彼の名は赤澤怜。
「あっ、そうだったっけ」
指を刺していた手を引っ込め、左手を頭の後ろに回し多少笑顔になる悠斗。
目の前の美形の少年に少々呆れつつ、怜は目を閉じ両手をポケットに入れて呟く。
「お前はほんとに……黙ってればカッコいいのになぁ……」
「んあ? なんか言ったか?」
悠斗は目の前の少年が小さくこぼした言葉を聞き取れず、すぐさま問い始めるが。
怜はゆっくりと悠斗に背中を向け、足音を立てつつ古びたドアに向かって歩き始める。
「なんでもねーよ。とっとといくぞ、今日こそ新メンバー確保するんだろ」
歩き去る少年を追いかけ、悠斗も歩き始める。共に頂を目指す仲間を集めるために。
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第一校舎二階、窓から外を除けば緑の森が取り囲む古びた校舎。
昔はこの校舎に三年の教室があったらしいが、時が経つにつれ新しく立てられた校舎に三年の教室は移動になったらしい。
ちょうど本日、朝の全校集会で校長先生が話していた事を思いつつ、悠斗は目的の教室までたどり着いていた。
「一年四組。確かここだな」
ドアの前に立ち、後ろを歩いていた悠斗の方を振り向き問いかける怜。
悠斗が静かに「あぁ」と言わんばかりに一度頷くと、怜は閉じていたドアを思いっきり横に開けてある人物の名前を呼び始めた。
「えっーと……土平俊太郎君いるかー?」
瞬間一年四組にいた生徒達全員が怜の方へと視線を移動させた。
そして怜の言っていた事を瞬時に思い出し、自分達の周りに視線を動かした。
「怜先輩! こんにちわ!」
可愛らしい声をあげながら、黒板に書かれた文字を消していた女子生徒が、ドアにたたずむ怜の方へ近づいてきた。
「おっ、瑠璃ちゃんだよね。こんにちわ」
怜は狐のような目つきを柔かく優しく変えて、自分よりもかなりの身長差がある後輩に優しい笑顔を見せた。
瑠璃という女子生徒と、同じ目線の高さまで背を折り。最近の自分の近況や、世間話を話し始める二人。
怜はこの『麻乃高校』《あさのこうこう》の中でもかなりの有名人。スポーツ万能、成績優秀でどんな人ともコミュニケーションが取れる。そのため人脈が広い。
それに比べて成績中の下、運動能力中の下、コミュニケーション能力下の下の俺。三年になっても友達が怜しかいない俺とは大違いだ。
四組の生徒達に見えないように、ドアの後ろに隠れながらポケットに手を入れて悠斗は考えていた。
そんなことを考えているうちに、怜と瑠璃は世間話を終えて本題を話し始めていた。
「で、土平君今いないかな?」
「土平ならさっきまで教室にいたんですけど……どこか行ったみたいですね」
黒いポニーテールを犬のしっぽのように揺らし、瑠璃は再び教室を再確認し、怜の問いに答えた。
「そっかぁ……仕方ない、また来るよ。ありがとうな」
怜は貴重な昼休みを使ってくれた瑠璃に感謝を述べると、後ろを振り向きドアにもたれて立ち尽くす悠斗の肩を叩いた。
「どうやら今いねぇっぽいわ、また明日見に来るか」
「へーい」
悠斗はそっと壁から離れ、再び自分の前を歩き始める怜の後ろをついていこうとした。
すると、背後から幼くも強気な声が聞こえてきた。
「僕になんかようですか」
悠斗と怜はすぐさま声が聞こえてきた背後へ体を向けた。
そこには小さな体をした、赤髪の少年が青いハンカチで手を洗いながらたたずんでいた。
「君、もしかして……」
怜が右手を前に伸ばして、少年に向かって指を刺した。
「僕が土平俊太郎ですけど……」
土平はハンカチを自分の後ろポケットにしまい、自分よりも高い位置に目線を持つ怜の方へと視線を合わせた。
すると、第二校舎に来てからずっと大人しくしていた悠斗が、まるで女性のような土平の両肩をぎっちり掴み始めた。
「えっ、なっ、なんすか?」
土平は急に自分の肩を掴んできた目の前の男性に対して、驚きを隠せず頬に汗を流し動揺する。
「なぁ、お前。俺の仲間になんねーか?」
悠斗はいつも怜の前でだけ見せるような表情を見せた。
口を大きく開き綺麗な白い歯を見せ、目を瞑った。その笑顔は、高校生にしては幼すぎるほど、子供のように純粋な笑顔だった。
この時の俊太郎は思いもしていなかった。悠斗との出会いが自分の人生に残る最高の思い出の、始まりだということを。
ここまで読んでくださりありがとうございました!最近前々から気になっていたゲームをついに買えたんですけど、面白くて他のゲームに全然手がつけれなくなりました笑いやーゲームの魔力は恐ろしいなぁ