第一話 抑えきれぬ衝動
生まれ初めて挑戦するファンタジーモノです。
手探り状態ですが、少しでも楽しんで貰えたら幸いです。
「うぅ、の、喉が、喉が焼けつきそうだ……」
飲まず食わずで強行軍を続けること丸3日……。山在り谷在り洞窟在りと、迫り来る追手を撒きに撒いて、どうにかこうにかやっとの思いで街へと辿り着いたときには、既に周囲は真っ暗……。ソレに伴い、今度は筆舌に尽くしがたい飢え……というよりも喉の渇きに襲われることに。
そう、とにかく、喉が渇いて仕方がなかった……。
飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたい、飲みたいぃいいいいいいいいい……!
そのことばかりが頭の中をぐるぐると……。
でも、飲みたいって何を? 水か? それともジュース? はたまた、酒か? ……否、そうじゃない、そうじゃないだろ!? 俺が今最も欲しているのは――血、それも純真無垢な清らかな処女の血! 更に付け加えるのであれば美女の――それも若くて綺麗な、出来れば年齢15歳~21歳くらいまでの絶世の美少女の――略して美処女の血が飲みたいぃいいいいいいいいいいいいい‼
ったく、この緊急時だってにもかかわらず、何ともグルメなこって……。
とはいえ、そんなタイミングよく注文通りの美少女が右から左へ都合が付くわけもなく……と思いきや、
「――キャハハハ♪ もう、リスティったらぁ、冗談ばっかりぃ♪」
暗闇に浮かび上がる眩いばかりの灯りと客たちの談笑。それこそ西部劇なんかに出てきそうな如何にもな酒場らしき建物の中、もう一人は……言わずもがな、おそらく友人といったところか。二人連れ添って仲良く晩御飯を楽しむ美少女の姿……。
『くん、くん、くん……。ああっ、ま、間違いない、この匂いは、紛うことなく処女の匂い!』
ココだけ見るとまるっきり変態のソレだし、実際問題、処女の匂いなんてものも一度も嗅いだこともなければ、あったとしてもそんなもの覚えてるわけもないのだが……。この時の、極限まで研ぎ澄まされた俺の嗅覚が、コイツは処女だと雄弁と語りかけてくる。
と、それまで辛うじて何とか抑えていた衝動が一気に俺を支配していった。
――す、吸いたい、す、啜りたい、この女の血を飲み干したいぃいいいいいっ‼
そう思ったのを最後に俺の記憶はプッツリと途切れた。それこそ、どうやったのかもわからない、次に意識を取り戻したのは、その白く華奢な首筋に己が牙を突き立てていた。
――ザクッ
「――‼」
瞬間、甘い甘い甘美な、それこそ一度も口にしたことはないが、ロマネコンティならこんな味がするんじゃないかってくらい高貴で濃厚な味が口いっぱいに広がったと思えば、得も言われぬ芳醇な香りが鼻を抜けていく。
――ゴクッ……ゴクッ……う、美味え……ゴクッ……ゴクッ……美味えぇエエエッ……ゴクッ……ゴクッ……――
その味に我を忘れ、その味に酔いしれ、貪るように、全てを吸いつくさんとばかりに勢いよく血を啜っていく。
「――……プッハァアアアアアアッ! ふぅううう~~~、う、美味かったぁああああああああぁぁああああああああ……。いやぁ~、満腹満腹、心ゆくまで堪能させてもらったぜ♪」
五臓六腑に染み渡るとはこのことか、ってくらい堪能させてもらったぜ。
確かな満足感に加え、それと併せて、先程までの渇きが嘘のように消えていた。
更には、
――スキル・浄化の発現が確認されました――
唐突に頭の中に響いた声。
んあ? へぇ~、どうやら今回もスキル持ちだったようだな……。
ま、そんなモンは別にどうでもいいけどね……。
「ん~~~♪ それじゃあ、帰るとしますかねぇ……」
大きく伸びをすると、やや重くなった体を引きずるようにしながらも、その場から離れていく。――そう、残された少女の亡骸(?)には見向きもせずに……。
――と、やや遅れて、後方から悲鳴が上がる。どうやら惨状に誰かが気づいたようだが、今となってはもう手遅れ。
ふん、今頃気づいたところで後の祭りさ、俺に目をつけられたことをせいぜい悔やむんだな……。
「あ~~~~っ‼ き、キュリア、く、首筋、首筋っ! ホラ、赤くなってるよ! もしかして、吸われちゃったんじゃない⁉」
「え? ――あっ! さ、さっきから、何か痒いとは思ってたんだけど……。うぅ~、ね、ねぇ、やっぱり、目立つかなぁ?」
「うん、メッチャ赤くなってる……。てかさぁ~、それって何気に、キスマークみたいだよねぇ~♪」
「ハイ? ――……え、えぇええええええっ!? き、ききキスマークゥウウウウウウウッ!? う、嘘ぉ、ほ、ホントに? や、やだ、どうしようぉおおお!?」
「お~お~、酒場に来ても酒すら飲まず、恋人どころか男友達すらいないと思ってたキュリアにもやっと遅咲きながらも春がきたかぁ……。うんうん、あたしゃあ友人として、ホントに嬉しいよ♪ さ、飲も飲も、今夜は飲み明かしましょ♪ キュリアの愛しい彼氏にカンパァ~~~イ♡」
「も、もぉおおおお、他人事だと思って何勝手に盛り上がってるのよぉおおっ‼ ……うぅ、あ、明日からのお仕事、ど、どうしよう……。司祭様に見つかったらなんて言われるか……。うぅ~、き、ききキスマークみたいになってるなんて、ホント最悪~……。あ~~~、もぉ~~~‼ 蚊なんてこの世からいなくなればいいのにぃ~~‼」
そんな声をBGMに、俺は今宵の塒を求めて酒場を後にした。
――そう、俺の名は、立花水夏……。
今の俺は、紛うことなき一匹の『蚊』だっ‼
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ファンタジー系は初めて書くので少し不安ですが、
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それが作者のモチベにも繋がりますので……。
何卒、何卒ォおおおおおおおおっ‼