三次元 何だかんだお似合いでは
「見て見て、飯寒様よ!!カッコイイ!!
「何だか最近少し雰囲気変わったわよね!?」
「でもそんな所も素敵・・・ああ・・・。」
道行く女生徒達が俺を見て金切り声を上げる。
俺の名は『池面 飯寒』
見ての通りのイケメンだ。だが、それだけではない。
・・・俺があれからどれだけ打ちのめされたか、そしてどうやってこの日本に戻ったのかを話すのは・・・またの機会にしよう。
とにかく、俺はタダのイケメンはやめたんだ。
「ととっ、うわあっ!!」
間抜けな声を上げて、何も無い所で転ぶのは・・・『出部 太郎』見ての通りのデブだ。
・・・と、以前の俺なら軽蔑しただろう。
だが、今の俺は違う。
「大丈夫か、出部君・・・ほら、立てるか?」
彼がぶちまけた教科書類を拾い上げ、そっと手を差し出す。
「あ、ありがとう・・・。」
「ふっ、確かに君は少し鈍い所もあるが、それ以上に良い所が山ほどあるだろう。」
出部を立たせると・・・俺は彼の服に付いた汚れをかるく払い、歩き出した。
「キャー!飯寒様、どうしてそんなブタを!?」
「でもそんな飯寒様も素敵!!」
女生徒達が俺を囲む。
・・・悪いが、俺は君達の好意に答える事は出来ないんだ。
俺は彼女達を描き分け、目的の人物の元へ向かった。
異世界に渡り・・・俺は気付いた。
見てくれなど、人のほんの一部に過ぎないと。
本当に大切なのはその内側にある物だ。
確かに三次元は外見の美しさでは二次元に敵わないだろう。
だが内面の美しさなら・・・!
目的の人物・・・『今市 沙英奈』の前で、俺は跪いた。
「気付いたんだ・・・本当に素敵なのは、君のように誰にでも分け隔て無く接し、人の内側の美しさを見抜ける者だと。」
今なら分かる・・・本当の美しさというものが。
彼女は驚きながらも・・・だが、こう返した。
「ごめんなさい、私は他に心に決めた人がいるから・・・。」
なんと、拒絶したのだ。三次元においてなら究極完璧であろうこの俺を。
「何・・・馬鹿な事を言うな!今や俺より顔が良くて、性格も良い男なんている訳無いだろ!!俺に勝る男なんていないはずだ!!どうせ大した男じゃないだろ!!」
この言葉が良くなかった。何があっても人の好きな者を嘲ってはならない。
一気に彼女は・・・ヒートアップした。
「・・・ふざけんな!あんたなんてちょっと顔が良くて性格が良いだけじゃない!!」
叫びながら、彼女は懐から携帯を取り出し・・・その画面を俺に見せつける。
そこには金髪眼帯のイケメンキャラが写っていた。
「私が好きな伊達シュナイダー将軍様は世界一の美貌を持ちながら、貧民にも優しいのよ。あんたよりかっこよくて!性格も良いの!!」
ハリケーンのような彼女の勢いに、俺は気圧されるだけだった。
「見た目でも中身でも・・・三次元が二次元に勝てるわけねえだろ、ヴァーカ!!」
吐き捨てると、彼女は去っていった。
確かに、彼女の言葉には身に覚えがある。
俺が恋愛ゲームのヒロインを好きだったのは、何も見た目が可愛いからだけでは無い。
良い娘だもの。よく気が利いて、俺の事を全肯定してくれる。
・・・ああ、その通りだわ。中身でも・・・むしろ中身でこそ三次元は二次元にまるで敵わない。
がくり。俺は崩れ落ちた。
そんな俺の姿を・・・やや離れた所からモジモジしながら覗き見る者がいた。
「はぁはぁ・・・飯寒君・・・カッコイイ。」
出部 太郎は、頬を赤らめていた。
この後俺がどうなったかは・・・またの機会にしよう。
やホN1