二次元 言うて絵柄の好みって結構変わる
目を開けた俺が見たのは、雲一つない美しい空。
吸い込んだのは・・・汚染されていない美味しい空気。
起き上がるそこに広がっていたのは・・・中世風の世界だった。
やったぜ。来れたようだな、異世界。
俺の心に確信を持たせたのは・・・夢にまで見た二次元の女達だった。
旅の女騎士、教会のシスター・・・畑を耕す農民の様なモブまで!
全員の顔が見事に整っているではないか!
というより、ほぼワンパターンだ。髪と目と服が違うだけで、骨格などは同じ。描き分けなんて無い。いかにも二次元っぽい。
まあ、実に・・・俺好みだ。
あれこれ見て回るだけでも、数日は潰せそうだが・・・生憎俺には目的がある。
心無しか街行く皆が俺を見ている気がする・・・突然びっくりするようなイケメンが現れたのだ、それもそうだろう。
だが、ここでいつもの様に囲まれる訳にはいかない。他の者に構っている暇は無い。
この俺に相応しい女は決まっているからな・・・!
俺は中央都市へ一直線。この城で一番大きな城へと向かった。
そう、目指すはこの世界で一番の美人であろう・・・姫だけだ。
さっ、と身なりを整えながら・・・俺は城の番兵に問い掛ける。
「こんにちは、一つお尋ねしたいのだが・・・この城の姫様はどこにいらっしゃるんだ?」
「あんた、凄い顔だな・・・何の用か知らんが、姫様ならほら・・・丁度散歩からお帰りのようだぞ。」
兵が顎で指す方を振り返ると・・・いた。
馬車から降りるお淑やかな一人の女性が。
煌びやかな装飾品、美しい長髪・・・顔の造形こそ同じだが、その神々しさはひと目でわかる・・・彼女こそがこの城の姫だ。
俺はすぐに彼女の前に立った。
「な、何ですの貴方は・・・!?」
「怖がらなくていい、今日は一つお願いがあって来たんだ・・・。姫、俺と付き合え。結婚を前提として、な。」
跪き手を差し出す。少々大袈裟な気もするが、一国の姫に向こうから告白させるような辱めを与えるのもどうかと思う。こちらから告白するのが筋と言うやつだろう。俺はこれでもジェントルマンなんでな。
姫はしばらく困った様にぱたぱたしていた。そんな姿も愛くるしい・・・こんなイケメンに告白されるなど初めての経験なのだろうな。
だが彼女の出した結論は、予想もしないものだった。
「お気持ちは大変ありがたいのですが・・・申し訳ございません。私は、その・・・もっと端正な顔立ちの方が好みですの。」
「な、何だと・・・!?」
俺は言葉を失った。
つまり、俺以上の更なるイケメンを望むというのか!?
何たる我が儘、日本中の女性を敵に回す発言だ。
彼女はぺこりと頭を下げると、そそくさと城に入っていった。
恐れ入った・・・が、同時に少し感心もする。
これ程の美女揃いの世界・・・確かに俺を超えるイケメンがいてもおかしくは無い。
若干の敗北感はあるが・・・なあに、この世界にはまだ腐る程美女がいる。美女しかいないのだ!
むしろ姫を超える者がいるかもしれない、色々当たってみようじゃないか。
だがしかし・・・。
「すまぬが、断る。」
「丁重にお断り致します。」
「やだ。」
まさかの連戦連敗、並み居る女性に全て断られてしまった。
一体どういう事か!?
・・・そうだ、異世界転生の際に冴えない中年が物凄いイケメンになるという事もある。
その逆で俺の顔がまるっきり違うものに変わってしまったのかもしれない。
そうだ・・・そうに違いない。
俺は近くの川に自らの顔を写した。
そこには、長年寄り添ってきた自分の顔があった。
うむ、いつもと変わらない。
惚れ惚れするくらいのイケメンだ。
では一体何故・・・?
「ふうっ・・・よっこいせ。」
間抜けな声を上げながら、水を汲むのは・・・いつか見た農民のモブだ。
この際選り好みはしまい・・・というか普通に可愛いし・・・。
俺は彼女に声をかけた。
「・・・おい貴様!そんな事をしてないで、この俺と付き合わないか?」
「へ?あんたがオラと?」
うんざりするような訛りだが、まあ良い。
骨格は姫と同じだし・・・。
だが、突然彼女は汲んだ水をひっくり返しながら笑い始めた。
「あっはっは、バカ言っちゃいけねえだ!流石のオラでもあんたみてえなブサイクはお断りだ!」
「は?この俺がブサイクだと?」
耳を疑う言葉だ。
「そうだろ?鏡見た事ねえだか?小さい目に大きい鼻。口びるはやけに腫れ上がってるし・・・おまけにその重力に捕らわれたようなださい髪型!!あんたほどのブサイク見た事ねえだ。」
「・・・っ!!」
盲点だった・・・これまで女ばかり見てたから気付かなかったが、言われてみればそうかもしれない。
目に付く男達もまた、たしかに皆顔が整っている。というか、女と殆ど変わらない。胸が無くて筋肉質なだけだ。
挙句オッサンや老人に至るまで、ハゲたり髭面なだけで同じ顔をしている。
つまり、めっちゃイケメンなのだ。
この世界の女性達はそんな見渡す限りの美男美女の世界で育ったのだ・・・所詮俺が超イケメンといえど、それは三次元の話。二次元と比べれば俺など凡以下だ、ブサイク所かグロメンだ。
結局、三次元が二次元に勝てる訳無かったのだ。
安易に二次元になど、来るべきではなかった。
描き分けって大事