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一次元 イケメンだって辛い?殺すぞ

昼過ぎの校舎にて・・・。


「ずっとずっと好きでした・・・付き合ってください!!」

目を煌めかせた女生徒が俺に告白してくる。

・・・はあ、またか。


「ふざけるな、誰がお前みたいなブスと付き合うかよ。」

ぷいっと顔を背けながら俺は言う。もう慣れた、お決まりのセリフだ。

だが女生徒は・・・いや、彼女だけじゃない、さっきから俺を囲む女達は幻滅するどころかより一層黄色い歓声を上げた。


「キャー、フラれちゃった!!」

「なんて酷い・・・でもそんな所も素敵!!」

「待って飯寒様ー!!」


あれよあれよとまた俺は進路を完全に囲まれてしまった。やれやれ、これではいつになったら教室に戻れるのだろうか。


俺の名前は『池面(いけつら) 飯寒(いさむ)

自慢じゃあないが・・・自分で言うのもなんだがとんでもなくモテる。一日に歩く歩数より告白される回数のが多いだろう。

何故なら俺はイケメンだからだ。何故俺がそんなにイケメンなのか語るのはまたの機会にするが・・・まあ、この地上に存在する男の中で最も整った顔をしているだろう。


だが俺は別に誰かと付き合ってはいない。

何故なら・・・



どすん!!

その時、俺を囲む女の一人が誰かにぶつかる。俺に夢中で注意散漫だったのだろう。


「あいたっ!」

マヌケな声を出しながら、小太りな坊主の少年が倒れる。

彼は持っていた教科書類をぶちまけてしまった。


「・・・ふん。」

全く、どんくさい奴だ。

こいつの名前は『出部(でぶ) 太郎』

見ての通り、俺とは対極にいる冴えない男だ。


「ちょっと、太郎君大丈夫!?」

彼に駆け寄るのは・・・短めな髪をした少女。

太郎と一緒になって教科書を拾う。


彼女は『今市(いまいち) 沙英奈(さえな)

男勝りな性格で、誰にでも分け隔てなく優しい事から結構人気があるとか。

まあ、俺に言わせればどこにでもいる普通のブスだが。

だがどういう訳かこいつは俺に夢中にならない。


「おい沙英奈、そんなデブ放っておいてこっちに来ないか?今なら一日位ならデートしてやってもいいぞ。」

「キャー!!飯寒様とデートなんて!!!」


すぐに周りの少女達は歓声を上げる。

俺から直々に誘われるのはとんでもない幸福だからな。当然だろう。


しかし沙英奈の反応は違った。


「誰があんたみたいなちょっと顔がいいだけの男と・・・行こ太郎君!」

ふん!と彼女は目を逸らして去って行く。

俺はその後ろ姿をじっと睨み付けた。


全く、ブスの癖に生意気な奴め・・・!




放課後・・・。

家に帰った俺は、日課に励んでいた。


・・・ゲームだ。小さな画面の中で美少女が動き回っている。


「おかえりなさい、飯寒君!!」

「今日はデートだね・・・楽しみ!!」


そう、これは恋愛シミュレーションゲーム。

ずっと女に囲まれ過ごしてきたある日、俺は気付いてしまったのだ。

三次元では二次元に敵わないと!!


一度二次元の女を目にしてしまったのが転機、もはや三次元の女は全てブスにしか見えなくなった。

だから俺は決めたんだ・・・付き合うなら二次元の女にするとな!!


とはいえ、二次元の世界にはどうひっくり返ったって行く事は出来ない。

俺はそういうのをきちんと理解できるタイプだ。

だからこそ・・・こうして液晶越しの恋愛で暗い青春を過ごしてきたんだ・・・。


そんなある日、俺はたまたま目にしたラノベでとんでもない事実を知る。

あったのだ・・・この淀み切った三次元の世界から、一つだけ二次元の世界へと赴く術が。


その名も、異世界転生・・・!

子供を助けてトラックに轢かれるだけ。実に簡単だ。

今や老若男女誰でも飛ぶ時代だ、この俺に出来ぬはずはない。



「飯寒君・・・大好きだよ、これからもずっと一緒に居てね。」


ヒロインの笑顔を残し、画面が暗くなっていく。

『ゲームクリアー』

デカデカとそう表示されたのを確認すると、俺はゲームの電源を切った。


よし、最愛の人との別れも済ませた。

いよいよ行く時が来たようだな・・・異世界へ!




「何するのお兄ちゃん・・・誰か助けて!!」


俺は見知らぬガキのランドセルを引っ張り、横断歩道に連れて行く。

信号が赤になると、目の前を沢山の車が横切り始める。

俺は目標の車が来るのを待った。


タクシー、バス・・・よし、来た!トラックだ!!さあこのガキを轢き殺せ!!

俺はガキを道路に放り投げた。

響くクラクション、泣きわめくガキ。

運転手がハンドルを大慌てで切る間に、俺はガキに全力でタックルをぶち込んだ。


キキイィィイ!!


俺の目の前は、真っ暗になった。


そら入れるものなら入りてえぜ

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