第九十三話 鬼喜壊快
鬼喜壊快
黒い男の剣をはじき、続けていますが、質量差もあり、こちらも追撃とはいかず、膠着状態が続いています。ときおり、お姉ちゃんの風魔法が当たっているので、僕の方が有利でしょうか?なんて考えながらも体はほぼ無意識のうちに剣をはじいています。
そうして斬り合いを続けていると何か違和感を覚えました。そして気づきました。黒い男の口が、弧を描いていたのです。ですが、それは、何か企んでいるというよりは・・
「楽しんでいる?」
僕のその言葉に相手はさらに口角を上げると、スピードを上げました。僕もそれに応戦し、いつのまにか僕の口角も上がっていました。いつのまにか、お姉ちゃんからの援護も止まっていました。
そして、そのときはおとずれました。僕の鍵が黒い男を斬り裂いたのです。そして、その男は地面に剣を突き立て体を支えていました。そして、理性の色が宿った目で僕を見ると。
「ははは、楽しかったぞ。」
「僕もです。なんでこんなことを?」
「・・・なんで、こんなことをしていたんだったっけな。確か、誰かを殺したかったんだ。」
「誰を?」
「誰なんだろうな。もう思い出せない・・・いや、そうだな、初めからわからなかったんだ。誰を殺したいかも、なぜ殺したいかも・・な。そう、だから、俺は思っちまったんだろうな。全て殺せば良いって。その結果が俺だよ。」
「・・・そう。」
「ああ、そうだ。まあ、そろそろ、か。じゃあな。」
彼はそう言うと、体の端から崩壊してゆきやがて風に溶けていった。僕はただ、それを見ていました。




