第六話 無味乾燥
無味乾燥
目を覚ますとそこは、ベッドの上のようだった。そうか、また生き残っちゃったのか。・・・ところでここはどこだろう。ベッドの上から部屋を見渡していると、部屋のドアが開き、金髪の女の子が入ってきた。
「あっ!目が覚めた?どこか痛いところない?」
「はい・・大丈夫です。」
「そう、よかった。あっ、お腹すいてない?」
彼女がそう聞くのを待っていたかのように、お腹が鳴った。
「ふふっ、じゃあ少し待っててね。」
彼女はそう言うと、部屋を出た。あれは誰だ?夢ならば、知っている人のはずなんだけど、全く知らない人だし。考え込んでいると、彼女は、皿にパンと肉料理そして、スープを持ってやってきた。
「はい、どうぞ。」
僕が口をつけずにいると、
「別に、毒なんて入ってないわよ」
と言ってきたので、食べることにした。さすがに好意を無下にするのは、本意では無いし。食べ終わって、
「美味しかったです、ありがとうございました。」
と言った。嘘であるが。本当は、一年半前から、何を食べても、味を感じ無くなっていたからだ。結奈が死んでから、僕は人間として大切なものの殆どを失ってしまったようだ。多分僕はこのまま、命尽きるまで、無感情に、無意味に、無価値に、無生産に、無駄に、無様に、生きていくことだろう。