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第四十七話 前後不覚
前後不覚
リヴィア視点
黒い繭は、まるで脈動のように拡大縮小を繰り返していました。そしてじきにその脈動はおさまってゆき、中からは、白髪で、すっかりやせ細った少年が現れた。言うまでもなくカナデである。カナデは、目をつぶって眠っていました。しばらくするとカナデは目をパチリと開き、あたりを見渡し、そして、私をじっと見つめました。カナデの左目は白目が塗りつぶされてしまったかのように真っ黒でした。
カナデ視点
虚ろな意識は、背中の下の感覚をとらえた。僕は・・・奏、のはず。自分は本当に自分なのか、自我に自信が持てない。僕は周りを見渡して、人の姿を見つけました。お姉ちゃん?・・・良かった。・・・良かった?何が?なんで、お姉ちゃんを見て安堵しているんだ?・・・・・考え込んでいると、左目に傷を負ったお姉ちゃんの姿が映りました。僕は驚いて、お姉ちゃんの元に這っていくと、お姉ちゃんの体をペタペタと触っていきました。
「な、なに?カナデ。」
僕は、そうして、怪我がないことを確かめると、安心したのか、意識は遠のいてゆきました。




