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第十七話 慎始敬終
慎始敬終
声の方向を見ると、そこには、いかにもベテランといった、がっしりとしたおじさんがいました。
「こんにちは、ガウルさん。カナデ、この人はガウルさん、この街の冒険者から慕われているベテランの冒険者よ。」
「よせよ、恥ずかしい。それで、こいつは誰なんだ?リヴィアちゃんよ。」
「あっ、えっと、僕は、カナデと言います。外で倒れていたところをお姉ちゃんに助けられて・・・」
「親御さんは?」
「それが、思い出せないんです。」
「思い出せない?」
「はい、記憶がなくて・・・」
「そうか、そいつは大変だったな。何か思い出せるといいな。」
「はい、ありがとうございます。」
言いながら、罪悪感に襲われるが、本当のことを言う訳にもいかないし、お姉ちゃん以外の人には心を許してもいない。僕は当たり障りもなければ、中身もない、上っ面だけの空虚な会話いや、文章を続けておいた。相手もそれには気づいているだろう。それでも、なお、話しかけてくるのだから、慕われているわけだと思った。ただ、それだけではあるが。




