第百六十話 精神乖離
精神乖離
きょうはやさしいおねえちゃんとおでかけ。おねえちゃんはいつもぼくにやさしくはなしかけてくれるからだいすき。きょうもおねえちゃんとのかいものをたのしんでいると、どーんって、おおきなおとがひびいた。おねえちゃんはそれをきいていそぎだした。するとこんどはちかくからおとがきこえた。つぎには、がくんとくるまいすがうごかなくなった。それから、おねえちゃんがぼくののるくるまいすにたいあたりしてきたようで、ぼくのからだは、じめんになげだされた。そのちょくごおおきなおとがきこえてきた。ちだらけになったおねえちゃんがぼくのほうへはってきてぼくのほほにてをあててきた。そのては、ぼくのほほからすべりおちた。ぼくのほほになにかがつたった。
これはなに?なんで?ぼくは?おねえちゃんは?だれのせい?ぼくのせい。ぼくのせい。ぼくの・・・。
おんなのこがかけよってきた。ゆなちゃんだったよね。
「・・・リヴィア姉は大丈夫だから、絶対・・・救っ・・てあげ・・てね。」
ゆなちゃんはぼくとはなしているとちゅうにからだがすけてゆき、はなしおえるとそのすがたはかんぜんにきえてしまい、ゆなちゃんのいたあたりからかぎがらっかしてきた。
それにより響き渡った金属音は僕の心を呼び起こした。
「・・・お姉・・・ちゃん?結奈?」
え?え?まって、きみは・・・いや、ぼくはだれ?わからない、ぼくはなんにもわからないよ。
・・・僕は僕だよ。いつまでも逃げていたら大切なものを失ってしまうよね。大切なものはいつも僕の手をすり抜けていったけど、今度はもう失わない。
・・・ぼくはきみ?
・・・そう、僕は奏。遅すぎたけど、ちゃんと起きたよ。・・・だから、次は僕が2人を起こす番だね。
・・・そっか。なら、がんばってね。かなで。
彼はそういうといなくなった。・・・だけど、いなくなったわけじゃなくてただ眠っているだけみたいだね。・・・まあ、意識を失った時にはよろしく。
 




