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冒険者ギルド......です!!

 私は、見てはいけないものを見たのかもしれない。ミーニャの変身した姿、変態筋肉ダルマの次くらいに衝撃的な光景がそこには広がっていた気がする。


 一瞬、来る場所を間違えたのかと思い、自分を疑った。

 上を見上げて看板を確認する。うん、『冒険者ギルド』。間違えてない。


 「いや、やっぱり。見間違えだよね......」


 私は再度、扉に手を掛ける。


 やはりそこには、先程と変わらない景色が広がっていた。木で作られた落ち着いた内装とは裏腹に、奇人、変人達がわらわらと......


 部屋の中で馬に乗ってる変な金髪さん。猫耳メイドの格好をしたおっさん。豚の格好をしたおっさんと、それをムチのようなもので叩く青髪のバニーガール。パシンッ!!パシンッ!! と音が鳴るたびに、おっさんの気持ち悪い声が......


 下手な怖い話よりも、背筋かゾッとする感覚が走る。


 だが、私は知っている。

 実は、このおっさん......


 「やあぁ、冒険者ギルドへようこそ『バシンッ』ぉん。ご用は何かな? お嬢『バシンッ』ぉぉちゃん。僕がギルドを案内しようか?『バシンッ』ぁぁん」


 豚の見た目なのに、こんな気持ち悪いのに、生物的に受け付けないのに、この人......ギルドマスターだ。大事な事なので二回言っておこう。このおっさんがこのギルドの管理者であり、この街最高の実力者でもある、ギルドマスターだ。


 奇人、変人しか居ないギルドの始まり(・・・)はこの人が原因だろう。


 「お客様ですか? ここに来るのは始めてです?」


 さっきまでギルドマスターを叩いてニヤニヤと怖い笑みを浮かべていた青髪のバニーガールが話しかけてきた。ムチを持って......


 ま、まぁ、私の見た目が子供だから、お客と間違えたんだろう。だけど私の目的は、冒険者登録をすること(登録したくなくなってきた)。私はその事を伝える。


 「冒険者登録に来たんです」


 そう言った私の言葉に、変態(ギルドマスター)がピクッと反応する。

 

 「可愛い子が来るのは大歓迎だけど......実力が無いと、冒険者にはなれないよ。僕だって、一般人を魔物に差し出すような真似(まね)はしたくないし。可愛い子ならむしろ触......そうだ!!」


 バニーガールとゴニョゴニョと内緒話ないしょばなししている変態(ギルドマスター)を見て、嫌な予感がするのは私だけだろうか?

 というかさっき何かをいいかけたよね!?


 話し終わった、変態(ギルドマスター)が「デュフフッフフフフ」と、気持ち悪い声を漏らしながら、こちらに向かってくる。

 そして......


 「君達、ちょっとこっちに来てくれないか?」


 クイッとギルドの奥の部屋を指差しながらそう言った。

 ......お巡りさんここで~す。ここに犯罪者(ギルドマスター)がいます。罪状は終身刑でいいので捕まえちゃって下ださ~い。


 だけど、ここで異変(・・)が起きた。


 「マナ様、行きましょう」


 プチッという何がか切れる音と共に、セツナがそんなことを言い出した。満面の笑みで......


 「セツナ......怖い」

 「程々にしておいて下さいねセツナさん」


 リッカとローエンも今から起こる事が分かると言ったような様子で見ている。

 いや、止めて!! 止めてあげて!!


 「デュフフ、ではこちらに」


 あっ、やっぱいいや、やっちゃえセツナ!!

 yesロリータ、noタッチ。幼女は()でるもの、影から守ってあげるのが本物の紳士だ。そんな迷言(めいげん)? を守らない変態には、天罰が下るのだ。


 そう言うことでギルドの奥の扉を開けると、そこは闘技場のようなものになっていた。

 流石、異世界と言うべきだろうか? この闘技場の大きさは分かりやすく言うと東◯ドーム一個分。ギルドの建物の大きさを軽く越えている。


 魔法なのか、誰かの能力なのか分からないけど、これは異世界ならではの謎現象だ。

 周りを見回しながら感心していると、変態が喋りだす。


 「君達には、テストを受けて貰うよ。冒険者になるための試練と言ってもいいかな? そして、相手は僕。このギルドマスターが監督しよう。デュフフ」

 「あなたに勝てばいいんですね? どんな勝ち方でも?」


 セツナ......言ってることが敵キャラの悪役だよ?

 あっ、そう言えば私達、この世界では敵キャラの悪役でした。


 みんないい人? だから忘れていた。でも、私にとっては味方だからそんな事はどうでもいいかな。


 「良いですよ。それに、全員でかかってきても良いですよ。僕、意外と強いからね」


 そして、何かを思い出したように、手を叩き変態は言葉を続ける。


 「そう言えば、冒険者登録するのは、四人でいいのかな?」


 その言葉に、私は振り返って確認する。セツナの方を向くと


 「セツナは、どっちでも良かったんですけど、あの人間と戦えるなら冒険者になります」

 「......私は、マナ様と一緒にやりたいです」


 姉妹から答えが貰えたけど、ローエンは首を横に振っていた。


 「私は、マナ様に(つか)える執事ですので、冒険者にはなれません」


 ローエンの言葉に、少し嬉しく思えて小さく微笑む。


 「ありがと、ローエン」


 ローエンも微笑み返してくれる。こんな関係があることが幸せだ。この出会いに、憎きミーニャとは違う神様に感謝しよう。


 「ありがとう神様。私、ラスボスになれて幸せです......たぶん」


 良いことも悪いこともあるけど、毎日が楽しい。こんな日常も悪くは無いかと感じるようになってきた。

 だが、奇人、変人、変態。お前らは駄目だ!!


 特に、目の前のギルドマスター!!


 「私達、三人が冒険者登録しますけど、良いですよね?」

 「あぁ、いいとも。むしろ大歓迎さ。それじゃあルールの確認だ。まず、相手を直接死に至らしめる攻撃、魔法は禁止。これは、僕の縛りみたいなものだけどね。次に、冒険者としての合否は、僕自身が決める。実力があれば合格だし、無ければ不合格だ。そして、最後に。武器の使用、魔法の使用、能力の使用は制限しない。本当の実力を測るために、全力を出して欲しいからね。ってことで説明終わり。じゃあよろしく」


 ギルドマスターは、そう言ってバニーガールに視線を向ける。


 「それでは、冒険者適性テストを開始します。ルールは先ほどギルドマスターが言った通りです。違犯した場合、私の能力(・・・・)で強制的に止めさせて頂きます。 それでは......始め!!」

 

 セツナが力を使って一瞬で終わるだろう。

 ギルドマスターには能力無い事が分かってるし、対抗も出来ないだろう。


 だが、そう予想していた私の期待は裏切られる形となった。

 始まった瞬間に発動されたセツナの能力。対称をギルドマスターとバニーガールにした時間の遅延。


 しかし!!


 「青髪のお嬢ちゃん。すごい能力だな」


 動けるはずの無い時間の中で、平然と喋りながら近付くギルドマスターの姿がそこにはあった。


 どういうこと!? ゲームの中でギルドマスターと戦った時は何も能力は無かったはず......


 ギルドマスターの様子にセツナもリッカも固まってしまっている。そして、そんな隙を逃す敵など居ない。

 一瞬で魔法の詠唱を終え、呪文を唱えた。


 「スペル・二雷炎(デュアルライトニング)


 ギルドマスターの手から魔方陣が浮き出し、そこから赤い雷が穿(うが)たれる。

 スピードを意識した魔法に姉妹が対応出来る訳もなく、体に命中し......てません。

 放たれた赤い雷は、姉妹の目の前で、まるで元から無かったかのように消えて無くなった。


 確実に決まった、という顔をしていたギルドマスターもポカンとアホな顔を浮かべている。


 なぜ、雷が消えたのか? 答えは簡単。私が姉妹に魔法が触れる前に、手で触ったから。

 私、ラスボスの能力。触ったもの(・・)を消すことが出来る能力。正確には、私が危ないと思ったものを触ると存在自体を消すことが出来る。勿論、魔法でも、武器でも、能力でさえも。


 ラスボスに相応(ふさわ)しい、絶対の能力だ。


 あっ、ステータスは元々MAXなので、魔法で出した雷より早く動くことなんて簡単だ。


 さて、種明かしもしたところで......スキル『王の威圧』発動。

 その瞬間。その場にあった空気が震える。まるで(ラスボス)から全力で逃げるように。そして、見えない何かが質量を持って対称に襲いかかる。


 そんな威圧の対称になっていたギルドマスターは、立っていられる訳もなく、頭から地面へと倒れ、動かなくなった。

 ......なぜか嬉しそうな表情をしていたのは気のせいだろう。気のせい......だろう。


 私の大切な妹達には、指一本触れさせない。


 『王の威圧』。ラスボスの能力の一つ。自分のレベル未満の対称を一時的だが強制的に行動不能に出来るというものだ。

 これを回避することが出来るのは、私と同じくレベルをカンストしている者だけとなる。

 はい。チートですが、何か?


 「そ、そこまで。このテストはあなた達の勝ちです。それと......マナさん。後で来て下さい」


 ちょっと睨まれながら言われてしまった。

 どうやら、警戒されてしまったらしい。ギルドマスターを倒したんだから当然か......この街の最強戦力だからね。


 それよりも、やってから気付いたけど、このパターンって一番めんどくさい流れなんじゃないかな?

 全力で逃げたいと思いつつも、仕方なく付いていく事にしたラスボスでした。

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