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テンプレイベント発生です!!

 シーナってこんなキャラだったっけと考えるが......正直、分からない。

 今まで勇者視点でプレイしてきた私にとって、シーナは敵であり、倒すべきシステムだったのだ。当然、シーナの性格を知るとかいう前に戦いを()いられる。


 そして私は、シーナの敵だったからこそ、その強さが分かっている。シーナが人に対して負けることは無いという事が分かっている。


 「あぁん!? テメェ今何つった!!」


 シーナに暴言を言われたチンピラ達は、お怒りモードだ。

 青筋を浮かべ、今にも飛び掛かって来そうな勢いだ。何人かはぞろぞろとこちらに向かって歩いてきている。


 そして、チンピラがシーナを舐めるように下から上まで見て、鼻の下を伸ばす。


 「いい身体してる、ねーちゃんじゃないかヘヘッ」

 「そっちが悪いんだからな~」

 「おい、やっちまおうぜ」


 すると、唐突にシーナが一番先頭を歩いているチンピラを指差して変なことを言った。


 「お前、右の壁に全力で突っ込め」


 シーナが冷徹な眼差しを向けながらそう命令(・・)を下した。


 「あ!?何言ってんだ、おまグヴェ!!」


 言葉とは裏腹に、勝手に右の壁に突っ込んで行くチンピラ。

 狂ったように壁に体を打ち付けているチンピラは、体から血が吹き出しても、骨が折れて歩けなくなっても、その命令(・・)を全力で実行した。


 「がっ!! やめ、やめろ!! ぐっ!! やめて......」


 やがて意識を失ったのか、動かなくなったチンピラを見て、他のチンピラ達は、現実に引き戻される。ボロボロになった仲間を見て、次は自分だという恐怖にガクガクと震えている。

 圧倒的な力の差と、意味の分からない仲間の行動は、チンピラ達を恐怖に陥れるのに充分だった。


 これがシーナの能力。絶対命令アブソリュートオーダー。シーナに指を指され命令(・・)を与えられたものは、絶対にその命令を守るように体が勝手に動くという能力だ。

 この能力は生物だけではなく、物にも命令を与える事が出来る。


 例えば、シーナが剣に「勇者の心臓を切り裂け」と命令すれば、剣が勝手に動き、勇者の心臓を切り裂くまで剣は絶対に止まらないという、最強の武器が出来上がる。

 もちろん、武器が壊れれば終わりだけど。いわゆるチート。


 しかし、この能力にも欠点がある。シーナのレベルを越えるものには命令が出来ないという事だ。と言っても、シーナのレベルは、200を有に越している。

 (ちな)みに、普通の冒険者がレベル50程度、強いの勇者でレベル150程度。

 ......はい。チートォォ!!


 そして、またシーナの指がゆっくりと動き一人のチンピラを捉える。

 そのチンピラは、まるで、生まれたての小鹿のようにガタガタと震え、ただただ、命令(・・)を待つだけとなった。

 シーナの三日月型に歪んだ口から、絶対の命令が告げられる。


 「お前は、今すぐ死むぐっむぐっ」


 シーナの口から命令が出される前に、私はシーナの口を押さえた。


 「シーナそれ以上は、メッ」


 口の前で指を交差させてバッテンを作り、少しふざけたように、シーナを注意する。

 すると、歪んでいた顔と口も、元に戻り、普通のシーナに変わった。

 

 「マナ様~。ごめんなさい~」


 そう言うと同時に、シーナは抱き付いてくる。私とシーナの背の差によって、必然的にシーナの大きくて柔らかい二つの凶器がムニッと私の顔に......あれ? どうしてだろうか、気持ちいい感触なのに目から涙が溢れてくるよ......

 

 現実世界でも私の胸は大きく無かった。だが、少しはあったんだ!! ......あったんだ!! 大事な事なので二回言いましたぁ!!

 そして、この世界では成長途中の幼女になってツルペタ......私に救いを、胸の成長の未来を下さい。


 と、神様に祈ろうとして、すぐに止めた。ミーニャとか言う変な神に祈りたくなかったというのが本音だ。それに、ミーニャが嘲笑っているような気がして、イライラするから。

 諦めて、私の未来を信じよう。この体ならまだ成長の兆《きざ》しがあるはず。


 そんな事をしている間に、チンピラ達は居なくなり、周りが静かになっていた。

 異世界のテンプレイベントが終わりを告げ、残されているのは、異世界への好奇心のみとなった。

 ゲームで夢見た世界が今ここにある。そう思うと、体がうずうずして止まらない。早く色んな欲求を満たしたくなってくる。


 一番気になるのは、やっぱり。


 「ケモミミっ子。早く見たいなぁ~。モフモフが私を呼んでいる気がする」


 猫の獣人さん居ないかな~。モフモフしたい。

 そんな、期待と、夢に胸を膨らませ、薄暗い路地から、光が差している方向へと足を運ぶ。


 一歩近付くごとに光は段々と大きくなっていき、その光の眩しさに目を細める。そして、光の先には賑やかな街が広がっていた。


 ざわざわと聞こえる人の声。人だけではなく、その中には耳が長い人だったり、肌が真っ黒な人だったりと、見るもの全てが新鮮で始めてだった。

 賑わっている商店街。可愛い服装に身を包んだ街娘。同じく可愛い服装に身を包んだゴリラ......見なかった。ワタシは、ナニもミナカッタ。


 行き交う人々は、目まぐるしく変わる。だけど誰もが個性的で、誰もが人間らしく生きていた。

 今ここで生き生きとしている人を見ると、何だが現実世界と比べてしまう。


 私達の生きていた現実世界は残酷で、誰も彼も救われない。だけど、誰もが平等な世界だった。


 戦争もなく、苦しむ子供達も居ない平和な世界。

 だけど、街を歩く人々は、どこか(うつ)ろげで、今日だけを生きているという感じだ。そんな現実が嫌で、私はゲームで現実逃避をしていた。


 やっぱり、ゲームの世界は最高だ!!

 今日、この場に立ってようやく分かった。希望が夢が詰まった世界(ゲーム)が面白く無いわけ無いと。ここは、神が創った理想郷だと。



◆◇◆◇◆◇



 とある世界のどこか。

 悪趣味なピエロの服装の美女は言った。


 「にゃは♥君達には~♪異世界転生のチャンスを上げよう☆そして~♪この世界で君達は勇者として新しく生まれ変わる♥見事ラスボスを倒した勇者には☆ミーニャちゃんから特別なプレゼントを上げよう♪♪」


 困惑している、四人の高校生。男が二人、女も二人のバランスのよい組み合わせ。だがその中の男一人は怪しく笑っていた。

 その一人が問い掛ける。


 「プレゼントって言うのは、何ですか?」


 その疑問に、面白いと口を歪めて答えるミーニャ。


 「ミーニャが可能な事なら☆何でも叶えてあげる♥例えば現実世界で~チート能力を使いたいとかね♪♪」

 「ははっ。面白いですね。是非ともラスボスを倒さないと」


 困惑する三人とは違い、どこか楽しげに笑う。


 「では♥君達には一つ能力を上げよう☆それで~♪ラスボスを倒すといいよ♥」


 愉快にその場でクルクルと回るミィーニャ。まだ状況に着いてこれていない三人と、何かを企んでいる一人。


 「それでは~♪【ブレイバーズストーリー】スタート☆」


 この時、四人の勇者が【ブレイバーズストーリー】の中に転生した。

 ラスボスを倒す事が出来るほどのチート能力を持って、転生した。


 そして、その場に残ったミィーニャは、やはり愉しそうに微笑む。


 「さぁ♥君の物語(さいご)をみせて☆」

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